菊トライアルを終えて
まずは神戸新聞杯の回顧から入りたい。
穴として唯一期待していたマイネルラフレシアは、トニービン×Nureyevのナスペリオン斬れのジャングルポケットに、バブルウイングス牝系だからNureyev≒Sadler's Wells3×5の持続斬れで、トニービン系らしく東京のアイビーS、東スポ杯、プリンシパルSで好走してきた。京都のドスローだった前走・白百合Sは参考外で、タフな芝と急坂外回りの阪神2400で差しに回っても・・・と考えていたが「瞬発力がない」という部分に考えがいきすぎたのか、先行して失速。残念だった。
サトノダイヤモンドは、「大跳びではあるが、不器用ではない≒コーナリングがそれほど苦にならない」という特徴はHaloらしいと言える。ただ、走りを見ると「字面を叩きつけるような走り」と池江師が表現したように、Danzig×Alydarの母父父Lure、米血過多な3代母父Logicalのパワーの影響も感じさせる。パドックを見ても、やはり春よりも緩さが抜けて硬派な部分が出てきたな、と思った。Danzig×Alydarというのは、同じく地面を叩きつけるような走りをしていたジェンティルドンナの母父Bertolini(この馬の場合は、残りのCourtly Deeの影響も大である)と同じで、近いものを感じる。
Burghclereを増幅していないから、2400で極端な持続戦になったときは一抹の不安が残ると考えていたが、そうはならなかった。ただ、このことについて、ここにきて思うのは、キタサンブラックのようにBurghclereを増幅させなくても、Burghclereのスタミナが伝わることはないのか、ということである。確かにキタサンブラックはBurghclere的な粘着力を伝える種牡馬で、全きょうだいでも伝える資質は違う。ディープインパクトは主にサンデーサイレンス系屈指の柔らかさと瞬発力を伝えるからこそ、牡馬で中距離GIを勝ち切るにはBurghclereを増幅させる必要があるのだろうが、例外があってもいい。望田先生は、その例外になる可能性があるとしてサトノダイヤモンドを見てきたのだろうけれど。
しかしこんなことを書いておきながら言うのもあれだが、菊花賞はBurghclereのスタミナを問われるようなレースになる可能性は低い。むしろ「器用さ」という面ではディーマジェスティより優位であり、「3000m適性」ではなく、「菊花賞適性」においてはこちらの方が上だろう。
勝ち馬に肉薄したミッキーロケットは、大元はディーマジェスティやTreveやフリオーソらと同じMargarethen牝系だが、母マネーキャントバイミーラヴが、Riverman→Miswaki→Caerleon→Pivotalとナスキロを重ね続けられている。Caerleonまでならナスキロラトロでもある。ミッキーロケット自身は、ラストタイクーン≒Caerleon3×3(Northern Dancer+ナスキラトロ+Tom Fool的な血など)でもあるし、Nureyev4×4でもある。春は非力で坂を登れないというイメージだったが、パワーが発現してくるのは時間の問題といえる配合だった。それでも阪神<京都だと思うから、菊花賞では要注目だろう。馬体減は気になる。
このほかにも、Mill Reef≒Riverman5×5やNijinsky6×4などの父母相似配合で、Northern Dancerが濃いキンカメにNorthern Dancer4×4の母という点でも通説からは外れる。しかし、母はナッソーS2着という実績があり、名牝系。またしても「父母相似配合は父母の能力が高い方が成功しやすい」という望田先生の説をを立証するかたちとなった。
3着レッドエルディストは、マイニングとNever bendを通じるLa Troiennneのクロスでピッチ走法だが、仏血らしく体質は柔らかめの持続差し。久しぶりに「四位の外差し」でのGI勝ちはこの馬で見られるかもしれない。競馬の形が限られているので菊で勝ち切ることはないだろうけれど。4着カフジプリンスもRobertoやSeeking the Goldの影響で掻き込んだ走りをするが持続型で、これはレッドエルディストにもいえるが、こういうタイプは下り坂→平坦の京都はプラスとはいえないだろう。
サトノダイヤモンドやミッキーロケットが顕著だったように、「パワー」という要素は時とともに発現してくるものだから、5着エアスピネルは春以上に距離が持たなくなっていることだろう。ダービーは上がり競馬が功を奏しての4着だった。ただ、3歳時に無理に距離縮めないことは良いことだ。菊花賞も鞍上が鞍上だし、何といっても内2000のGIができたのだから。
3着には神戸で3着争いをした2頭やゼーヴィントも加わることがありそうだが、連対の話となると、2強以外で逆転の目があるのはミッキーロケットだけないか。京都適性は高いし、BustinoとRound Tableを通じてRose RedとAloeという名牝を持つのも興味深い。Margarethen牝系の皐月賞馬にMargarethen牝系のミッキーロケットが先着する・・・なんてことも考えてしまう。
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オールカマー
ゴールドアクターは宝塚を見送り、一から仕上げなおしたことが功を奏したようで、58キロで勝ち切った日経賞のような強さだった。一方マリアライトは、もともと休み明けが得意な馬ではないし、「今年宝塚記念を勝つほど成長した≒持ち前のパワーが発現した」ということでもあるので、これまで以上に硬さが出てきたような気もした。サトノノブレスは、アクターと2キロ差、厩舎の同級生、ラブリーデイ的成長曲線を感じていたから勝ち切れば有馬でもと考えていたが厳しいか。贔屓しているワンアンドオンリーについては個別で書く機会を設けたい。
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【参考】
『日本サラブレッド配合史―日本百名馬と世界の名血の探究』(笠雄二郎著)
望田潤氏のブログ 血は水よりも濃し 望田潤の競馬blog
栗山求氏の連載『血統SQUARE』http://www.miesque.com/motomu/works.html
『覚えておきたい 日本の牝系100』(平出貴昭著)