4歳上500万下

血統好きが大学生のころ書いていたブログ(今でもたまに更新)

なぜダービーは涙が出るのか

どうして競馬は私の胸をこんなにも熱くさせるのだろう。

ダービーを生観戦すると、レース前から泣いてしまいます。本馬場入場で「グレート・エクウス・マーチ」が流れ出した瞬間からうるうると。国歌独唱で厳粛な気持ちになり、いわゆる「あおりVTR」でもういちど涙が出てきます。そしてファンファーレ、勝者をたたえる「HEROS ~英雄~」

家路も、帰ってからも、翌日も、次の日も。ダービーデイを思い出して、泣いてしまう。余韻が消えない。テレビで初めて見たエイシンフラッシュのダービーから16年もたつのに、いまだにこんなにも感情をかき乱されるのはダービーだけだ。

学生時代と違って、1年に1、2回しか競馬場には行かなくなったけれど、ダービーは、ダービーだけは、生で観るに限る。すばらしい興行、すばらしいスポーツです。

 

東京優駿(第93回日本ダービー)──マクフィの妙

これがあるから、こういう感情になれるから、競馬はやめられない。競馬を見続けて良かった──といえる素晴らしいオークスでした。あのレース後の感情のまま文章を綴りたかったですが、どうしても仕事やら何やらで結局ダービー前夜です。

 

指定席が当たったもので、府中にいきます。これで生で観るダービーは、ワンアンドオンリー、ドゥラメンテ、マカヒキ、ドウデュース、タスティエーラ、ダノンデサイル、クロワデュノールに続いて7回目です。

 

ということで、今年もこれを貼っておきましょう。

derby6-1.hatenablog.com

 

ダービーだからこそ買いたい馬、東京だからこそ買いたい馬を絞って書き殴ります。内枠から──。

 

④アルトラムス

イスラボニータのぐにゃぐにゃ柔体質とチーターのような俊敏なフットワーク、筋収縮性を受け継いだ。誰がどう見ても直線長コース向きのストライド。荒れ馬場の中山2000のHペースよりは、パンパン良馬場、東京2400のSペースの方が脚がたまって好走確率は上がるのではないか。

 

⑩ジャスティンビスタ

未勝利戦を勝った時から、これはショウヘイだと。京都新聞杯を勝ってダービーへ、秋の神戸新聞杯でもキレッキレというイメージ。サートゥルナ―リア×ディープインパクトで、スピードに乗った時のあの美しいフットワーク。京都2歳Sを制しているものの、小回り競馬だと大幅にパフォーマンスダウンするタイプだろう。消耗が激しい皐月賞を使えなかったのはむしろ好感。

 

⑬パントルナイーフ

母と息子でこんなにも走りが違うのか、というのが最初の感想。母アールブリュットは母父Silver Hawk全開のグラスワンダー的パワー掻き込み走法だったが、パントルナイーフはキズナ似のストライド走法。パラレルヴィジョンやメートルダールなどを送り出した母母イグジビットワンはミラノ大賞典(芝10F)3着などがあるSilver Hawk×Sadller’s Wellsという字面の中距離馬で、パントル自身の字面はキズナ×マクフィ×イグジビットワン。母父にマイラーのマクフィが入るバランスが絶妙。マクフィは個人的にめちゃくちゃ期待していた種牡馬で、Sgareef Dancerやダンシングブレーヴ、Green DesertなどNorthern Dancer×ナスキロ血脈が豊富。ここがキズナのStorm Catと脈絡して、アールブリュットの力馬感を緩和しているのだろう。マクフィなだけあって速い時計は「?」だが、32.9で上がった東スポ杯を見れば問題ナシか。同レースでライヒスアドラーを物差しとすれば力は足りるはず。

 

⑮フォルテアンジェロ

この馬もフィエールマン×Dark Engelという長距離馬×短距離馬のバランスが絶妙。本質的に2400mは長いだろうが、3歳春ならDark Engelのパワーが成長を早めて完成度という点でプラスに。ただ枠が若干外。Dark Engelパワーでピッチ気味に走るのために器用で、中山2000mのほうが相対的にプラスだっとも考えられる。

 

この4頭でも、牝系を見た時に最もダービーで◎を打つに相応しいのはパントルナイーフ(イグジビットワン)でしょうか。でもいくら東京向きに見えても、キズナ×マクフィ×イグジビットワン(Silver Hawk×Sadller's Wells)という字面は東京ではないよなあとも...。

 

皆さん良いダービーを──。

 

 

 

弥生賞ディープインパクト記念2025──共同通信杯以上のメンバー

新書大賞に三宅香帆さんの『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』が選ばれましたが、私は「なぜ働いているとブログが書けなくなるのか」状態です...

 

さて弥生賞ディープインパクト記念はクラシックロードに向けてかなりメンバーがそろった気がしますので、備忘録的に雑感を記しておきます。

 

ホープフルSの時から注目していたのが、クラウディアイとアスクシュタインです。クラウディアイはとにかく体質がシーザリオ的、サートゥルナーリア(サトア)的。サトア×ディープインパクトサンデーサイレンスSir Gaylordをクロスするのでサトアとディープ的な柔らか体質が発現するのは当然なのですが、特に牝ではフェアリーSクイーンSで3着のエストゥペンダ、牡だとクラウディアイが特にサトア的体質を受け継いでいるなと感じますね。ただ、この柔らか体質のためにパンとしてこないとコーナリングで置かれかねず、中山よりはダービーでの穴候補として待機しています。

 

サトアといえば、ヴィンセンシオ(母シーリア=キンカメ×シーザリオ)もその血を受け継いでいます。ただ体質こそシーザリオ似ですが、父がフォーエバーヤングを輩出するほど、母母Monevassia(Kingmamboの全姉妹)経由の硬肉の伝えるリアルスティールです。ヴィンセンシオ自身はMonevassio=Kingmambo3×3の全きょうだいクロスを持ち、クラウディアイのように柔方向に触れておらず、柔硬のバランスが絶妙に発現しているように見えます。前脚の捌きもシーザリオやサトアやリオンディーズのように伸ばし切らず、ピッチ気味に走ります。これは母父トウカイテイオーの柔らかさを受け継ぎながらも、リアルスティールの硬肉で肩が立ち、ピッチ走法で走るレーベンスティールと似ています。コースを問わず安定したパフォーマスを発揮できるタイプではないでしょうか。速い上がりにも対応できそうで、ダービーでもと思わせますが、現時点では葉牡丹賞のメンバーレベルが評価しきれません。

 

アスクシュタインはハナを奪えるスピードがありますが、短距離馬のそれというより、ダート的なパワーで突進しているというイメージですよね。母がベラミロード×Woodmanで500kgの巨漢ですから、JDDやJDC(ジャパンダートクラシック)あたりで好走しても驚けません。ホープフルではスタート一息で差しに回りながらも、末を伸ばして素質の片鱗を見せました。東京よりは中山でしょうから、先行して折り合えればといったところです。

 

実はナグルファルも、アスクシュタインと似たイメージで解釈しています。母父ベラミロードの巨漢でサトノエピックの半弟。先行力があるけれど、結構掛かります。ただ追ってから味がある。とはいえ、ダービーで求められるような、スパッとしたカミソリの斬れ味は感じません。もしかすると、同じエピファネイア産駒のダノンデサイルのような解釈でいいのかもしれません。デサイルもダービーは勝ちましたが、本質的にカミソリ斬れではありません。ダービーを勝つなら、ノリがやったように”掛かるのを恐れずに出して行った時”でしょうか。それができなければ、皐月もダービーも善戦止まりな気がします。

 

ジュタはそれなりにピッチで走りますが、内から抜けてきた若駒Sの加速感を見ると、父ドゥラメンテのように直線の長いコースでドーン、ドーンと重厚な末脚で伸びてくるタイプに見えます。母父がStreet Cryで、トニービンエアグルーヴドゥラメンテの斬れの根源であるHornbeamを継続クロスしていますからね(Street Cry、トニービン、キンカメが内包)。ホープフルS弥生賞という内回りで結果を残しつつも、最大パフォーが発揮できるダービーへ、という点では同厩のシンエンペラーと被ります。ダービーで内枠を引いたら確実に印を回さなければと思わせる馬です。

 

弥生賞ディープインパクト記念といえば、タイトルホルダーやアスクビクターモア、タスティエーラやサトノフラッグなど、近年は菊花賞とのつながりが顕著です。そういった点で注目してい馬もいます。

 

レイデオロ×アユサンベストシーンはマイルを使われていますが、レース運びや末脚のスピードの乗り方を見ると、やはりレイデオロ産駒的というか、ウインドインハーヘア3×3的というべきか、ステイヤー然としています。前半緩く流れて向正面からのロンスパ戦になれば、ハマる可能性があるのではないでしょうか。ウインドインハーヘアのクロスは小柄に出る傾向があるのですが、450kgを超えているのもいいですね。

 

そして、触れないわけにいかないのがブラックジェダイトです。キタサンブラック産駒で、母はMonsun×Cadeaux Genereuxで英国スタミナ血脈の根源Donatelloの6×7。これはシュガーハート→キタサンブラックと受け継がれたPretty Polly血脈(ウインドインハーヘアノーザンテースト、シュガーハートの母系にあるWordenなど)としっかりと脈絡します。さらにHyperion的な粘着力を伝えるLyphardを継続クロスしている点もポイントが高い。これらは、まさにキタサンブラックのあの驚異的な心肺機能の因子(その子イクイノックスにも継続クロスされている)ですから、極端にいえばブラックジェダイト凱旋門賞を3連覇しても驚かない! それくらいのスタミナと底力を誇る配合です。「線が細くて多く使えない」ということですから、菊路線に乗れればという気持ちで見守っていきます。

 

マイネルゼウスダノンバラード×オルフェーヴルで内回り&道悪といった字面なのですが、未勝利の走りを見るとフランス血脈である母母マンビラの重厚な斬れが発現しているようで、末は確かです。といっても速い上がりは苦しいはずで、となると新潟や外差し馬場となった福島がペストパフォーマンス発揮の舞台となるのでしょうが、完全に前が止まる今年の京成杯のような流れになれば下手したら権利は確保できるかも?

 

最後にミュージアムマイルに触れるとすれば、リオンディーズ×ハーツクライで、血統表の残りの1/4がフレンチデピュティ×サンタフェトレイル(ノーザンテースト)というマイラーですから、エピファネイア×ハーツクライ×ケイティーズファストのエフフォーリア的な輪郭。体質は柔らかく、胴長だけどそれなりにピッチで走る中距離馬といったところです。内2000mの黄菊賞の4角もスムーズな捲りでしたし、ヴィンセンシオと同じく皐月でもダービーでも好走しそうなイメージがあります。

東京優駿(第91回日本ダービー)──ダノンキングリーを探せ

 
「ダービーはダノンキングリーでいい」

 

これが私のダービーの格言だ。

 

青葉賞馬は勝てない」「2000mベストの馬がいい」「共同通信杯こそ最重要ステップ」──。

ダービーを考察する上でさまざまな格言が語られている。

 

ディープ産駒が3歳春にある程度完成してクラシックレースを勝つには、母方の近い世代にマイラーやスプリンターの血を引き早期に頑強になる必要がある、というのはもう10年以上にわたって書いてます

 

望田潤先生はこんなふうに書くが、これはディープを「中長距離馬」と置き換えても通ずる。そんな中で私が経験的に最もしっくりとくる表現が、冒頭の“ダービーは〜”である。このダノンキングリーが意味するのは、「毎日王冠ベスト、マイルも2000も守備範囲」ということだ。もちろん2000ベストの馬もいいが、18ベストの馬で通用する。

 

「ダノンキングリーは安田記念を勝ったではないか。マイラーだ」──。こんな声も聞こえてきそうだが、あの安田はスローで1800質なレースだった。真のマイラーは半マイル46秒くらいのペースを先行して押し切ってしまうタイキシャトルのような馬だ。

 

いまでも、ときどき思い出す。ロジャーバローズの激走に驚愕しながらも、無敗の三冠を確信していたサートゥルナーリアがヴェロックスに差された瞬間、「ダービーはダノンキングリーでいいのだ」と後悔したことを──。

 

同血2頭とブリックスアンドモルタル

 

さて、今年のダービーだ。

 

ジャスティンミラノ。見るからに毎日王冠タイプではないか。「将来的にはマイラー」「菊花賞は無理」。だからこそダービー向きなのだ。

 

キズナ×デインヒルに母スプリンター。シックスペンスと配合の骨格は似ている。だがシックスペンスがマイラー的なパワー加速に見えるのに対して、ジャスティンミラノは中距離馬らしい、しなやかな加速だ。これは母母Special Dancerが内包するShareef Dancer、そしてMill Reefの影響だろう。

 

今年の東京優駿の血統的な注目点は主に2点ある。1点目は繁殖牝馬の質が向上し、黄金世代といわれるキズナの5頭出し。ただそれ以上に注目したいのは、レガレイラアーバンシックという2頭の有力馬だ。数ある競馬サイトから当ブログに行き着いた諸賢にとっては釈迦に説法だろうが、この2頭は同血である。(スワーヴリチャード×ハービンジャー×ダンスインザダーク×ウインドインハーヘア

 

良血っぷりや配合の良し悪しはさておき、ダービーにおける懸念点は成長力だ。母がハービンジャー×ウインドインハーヘアというバリッバリの中長距離馬で、3歳春に頂点に立てる筋力が付き切るのかどうか。

 

レガレイラホープフルSこそケタ外れの末脚で中山の急坂を駆け上がってみせたが、それは2歳冬時点での話。年明けから5月までの成長力が鍵となるダービーの舞台において、他馬の逆転を許してはいないか。

 

アーバンシックは牡馬ということもあり、レガレイラに比べて骨格がガッシリとしていて、まだ緩さを持て余している印象だ。その分、レースぶりも粗削りで、ダービーで2着だった父スワーヴリチャードのような器用な立ち回りができるのだろうか。日本のダービーは大味な競馬では勝てまい。

 

ブリックスアンドモルタルの産駒からは、独特の体質の柔らかさを感じる。とてもではないが、Storm Bird3×3らしい硬さは見てとれない。母父がディープインパクトともなれば、なおのことだろう。

 

ブリックスアンドモルタル×ディープインパクトゴンバデカーブースは、フォーティナイナーの影響か、肩が立ち、前脚が伸び切らないピッチ寄りの走法(母アッフィラートもそうだった)だが、体質は中距離馬だ。やや胴長体型でもある。マイルのサウジアラビアロイヤルカップを制しながらホープフルSに出走(取消)したのも頷ける。

 

約半年ぶりのレース、しかもマイルの、それなりのペースで4着に好走した前走NHKマイルCは評価できる。ゴール時点でも脚色は衰えておらず、距離延長での走りに期待だ。望田先生がいう馬群を嫌う気性が、器用な競馬が要求されるダービーでは気がかりとなるが、真ん中~外枠に入れば食指が動く。

第168回天皇賞(秋)──競走馬の完成形 イクイノックスとディープインパクト

競走馬の完成形を見た。現地にいたが、1.55.5という数字を確認したときの衝撃は忘れないだろう。レース内容の「濃さ」はレース直後に理解したものの、時計を見た瞬間は「怖い」という感情が先に湧き上がった。サラブレッドがこんな時計で走っていいのだろうか、脚元や心肺に過度な負担がかかっていないだろうか─。

 

数十分後、57.7-57.5というラップを知り、「怖さ」の正体を解釈できた。ジャックドールがつくった57.7のペースをガイアフォースが離れず追走し、そう離れない3番手を追走した馬が57.5で上がる。やや玄人向けの表現になるが、シルポートが56.5で逃げてトーセンジョーダンが当時のレコードを叩き出した2011年の天皇賞秋で、3番手を追走したエイシンフラッシュがそのまま押し切ってしまうイメージだ。

 

この記事が当ブログで圧倒的に読まれているようなので、以下はよりわかりやすく編集した(2025年3月8日)

 

強さの根源──ウインドインハーヘアの底力

 

いわゆる「欧州スタミナ血統」とは、つまるところ、英国の”スタミナ血脈だ。その正体を突き詰めれば、Pretty Pollyという名牝と種牡馬Hyperionにたどりつく。この名馬の解説は識者やほかの記事に譲るとして、イクイノックスを語る上では、ディープインパクトブラックタイドの母ウインドインハーヘアに触れざるを得ない。

 

ウインドインハーヘアの牝系は2022年に逝去した英国のエリザベス2世が所有したピカピカのロイヤルブラッドだ。特にウインドインハーヘアの母Bureghclereは、父系がPretty Pollyの血を引く種牡馬Donatello系で、母母HighlightはHyperion3×2だ。ウインドハーヘアハーヘアはほかにもスタミナや底力を伝える血(Court Martial〜Lyphardなど)を併せ持っているが、もっとも根源的な因子はPretty Polly〜DonatelloとHyperionだろう。

ウインドインハーヘア

 

キタサンブラックの血統的本質

 

さて、そんなハーヘアの息子、ブラックタイドを父に持つキタサンブラックへと話を移す。キタサンブラックの母はシュガーハート、その父は短距離王者サクラバクシンオーだ。菊花賞の戦前、「母父がスプリンターだから距離が持たない」と言われたが、そんな意見はきわめて表層的で、血統的な本質をとらえていない。

 

サクラバクシンオーの母父は大種牡馬ノーザンテーストで、ノーザンテーストはPretty PollyとHyperionを併せ持つ牝馬Lady Angera3×2という異質なクロスを持つ。ノーザンテースト産駒は、その脅威的な成長力から「3度成長する」と言われたが、その因子は紛れもなくLady Angera3×2だ。シュガーハートはさらに、母オトメゴコロがPretty Pollyを保有する種牡馬Worden、そしてLyphardを内包する。これらがハーヘアと脈絡して、キタサンブラックの底力と粘着力=抜かせない力を発現させたのだ。私から見れば、キタサンブラックウインドインハーヘアなのである。

キタサンブラック

 

Hyperion、Pretty Polly、Lyphardを3代継続

 

そして、この稿の主題であるキタサンブラックの子、イクイノックスに話を移す。

イクイノックスの母母ブランシェリーはトニービン×NureyevでHyperionの塊だ。そしてブランシェリーの3代母父Le FabuleuxがPretty Pollyを内包している。さらにイクイノックスの母シュガーハートは、父キングヘイローを通じてLyphardを持っている。つまり、イクイノックスは、ブラックタイドキタサンブラック→イクイノックスと、3代続けてHyperionとPretty Polly、そしてLyphardを継続クロスしているのだ!

イクイノックス

 

(ここからは読み飛ばしてもらい、下記の紫部分に飛んでもらって構わない)

 

なぜディープとイクイは斬れるのか

 

だが、イクイノックスはこうした英国スタミナ血脈が豊富でありながら、筋肉はディープインパクトのように品があり、柔らかい。1年目の天皇賞(秋)では、ディープのように斬れに斬れ、パンサラッサを差し切った。

 

ディープインパクトが柔らかい筋肉を持ち、あれだけ斬れたのは、サンデーサイレンスが持つHaloと母父Alzaoが持つSir Ivorのニアリークロスによるものだ(HaloとSir Ivorは同血ではないが、血統構成が非常に似ている)。

 

さて、イクイノックスの母父はキングヘイローだ。キングヘイローはHaloとSir Ivorを併せ持つ。さらに2頭と似た血統構成のDroneも内包し、Drone≒Halo≒Sir Ivor3・2×3という異常な(?)ニアリークロスを持つ。これらがブラックタイドのHalo≒Sir Ivorと脈絡し、ディープのような体質を受け継いだのだろう。そして、これら全ての血統的因子が絶妙に発現した結果、私たちは“ディープのように切れて、キタサンブラックのように持続する”名馬を目撃しているのだ。

 

ディープインパクト天皇賞(春)の「4角先頭ひと捲り」で評価をより高めたのはなぜか。それはディープの本質が「斬れ」「瞬発力」ではなく、ウインドインハーヘア譲りの心肺機能(スタミナ)にあることを明らかにしたからだ。そしてイクイノックスの本質もまた、22年天皇賞(秋)の「32.7」ではなく、23年の「57.7-57.5」─その源泉はウインドインハーヘア、つまりPretty PollyとHyperionなのだ。

 

Hyperion的な心肺機能

 

Hyperion的な心肺機能」という例でわかりやすいのは、若い頃に追い込みで善戦を繰り返したハーツクライジャスタウェイが、先行してから見せたひょう変ぶりだ(ハーツくらいの有馬、ドバイシーマやジャスタウェイ秋天ドバイターフ)。しかし、ハーツクライジャスタウェイは追い込んでいた時にタイトルを取れなかった。

 

一方で、ディープインパクトやイクイノックスは、追い込みでもG1を勝ち切ってしまった。それが最強たるゆえんだ。加えて、両馬は内回りで行われる有馬記念でのコーナリングも美しかった。米国の伝説的名馬Secretariatも、直線とコーナーでは走法が変わったといわれている。思い返せば、オルフェーヴルもそんな馬だった。俗な表現になるが、いま「最強馬論争」に名を挙げるならこの3頭なのだろう。

 

(編集ここまで)

 

──以下は馬券的側面からの雑感です

 

週中はジャスティンパレスのNureyev的ナタ斬れに期待していた。明らかにコーナリングが苦手だが、阪神内回りの菊花賞も好走、有馬記念は外差しバイアスながら最内追走ながら地力を見せ、宝塚でも崩れなかった。となれば、コーナー加速が求められない府中なら、末脚の破壊力は増す─という見立てだった。だが、直前になってガイアフォース複勝に変更した。8Rの本栖湖特別で2400m=2.22.8という好時計が出て、マイルの一線級で差のない競馬をしてきた同馬に魅力を感じたからだ。

 

と同時に、脳裏に浮かんだのは3歳のアーモンドアイが2.20.6という驚異的なレコードで制した18年のジャパンカップだ。

 

本来、ハイペースならジャスティンパレスのナタ斬れが炸裂するはずだが、2000mであまりにも時計が速すぎると(2000m以上を使われ続けたことも相まって)スピードの絶対値や追走力で劣るのではないか─。18年のジャパンカップでは、安田記念にも出走し2000mベストに思えるスワーヴリチャードが、より長い距離に適性を持つシュヴァルグランに先着した。究極のスピード決着になったため、本来は持続力やスタミナが求められるはずの2400mのハイペースでも、スピードがスタミナに優ったのだ。

 

今回の天皇賞もこの発想で、スタミナ(ジャスティンパレス)よりもスピード(ガイアフォース)を上位にとった。ただスローペースの上がり勝負になれば(≒時計勝負にならなければ)クロノジェネシスやフィエールマンが追い込んできたように、長めの距離に適性を持つジャスティンパレスの差し込みもあり得ると考えていた。

 

結果的にジャスティンパレスがこの時計に対応してナタの斬れ味を発揮し、ガイアフォースはジャックドールのHペースに付き合う形となり5着に敗れた。ジャスティンパレスは斬れの質はジャングルポケットと同質(Nurevey)で東京2400mも楽しみだが、相手はイクイノックスとリバティアイランドだ。一方、ガイアフォースはよく走ったと思うだけに、ドウデュースあたりの後方の位置取りで流れに乗った世界線を見たかった。