4歳上500万下

私にとっての「競馬」とは、「血統表のどの因子が発現しているかを見抜き、競走馬の個性を解釈する営み」です

「この馬のリズム」の「リズム」とは何か──ギャラボーグとドリームコアから考える

秋華賞はモンローウォークが5連勝で勝利し、最後の一冠を手にしました。

レースは1000m通過が57.8、走破時計が1.56.1という高速決着。2着ギャラボーグ、3着ドリームコアと入りましたが、競走馬の個性を分析するうえで興味深い結果です。

 

望田潤さんはレース後、自身のブログ内のコメント欄に以下のように書き込みました。

1561は速いな
ギャラボーグのマイルのスピードだったか

1600通過が1.32.1やから、時計が速すぎてマイラー質でないと追走できないレースだったすかね

そう考えるとルメさん(筆者注:中距離質のドリームコア騎乗)はさすがや
マイラーのバトルに付き合ってない

nas-quillo.hatenablog.com

 

マイラー質のギャラボーグはハイラップに付き合って(コーナ通過順位は3-2-2-2)──つまり、前傾ラップで走ったからこそ、好走できたのではないか。

中距離質のドリームコアはハイラップ付き合わず──つまり、後傾ラップで走った(ルメールが走らせた)からこそ、好走できたのではないか。

 

スローペース=逃げ・先行有利、ハイペース=差し・追い込み有利というのは間違いではないですが、本質とまではいえません。

 

例えば2020年、アーモンドアイが連覇を果たした天皇賞・秋は、ダノンプレミアムが1000m60.5のゆったりとしたペースで逃げました。結果はというと、2着にフィエールマン、3着にクロノジェネシスと、より長い距離に適性がある馬が上がり32秒台の末脚で追い込んできました。ただ、もしスローペースだからといって前付けしていたら、この2頭がアーモンドアイを追い詰めることはできたでしょうか。また、マイル〜2000の追走力が問われる早い流れだったら、追い詰めることはできたでしょうか。いずれも「NO」でしょう。中長距離馬のペースを守って走ったからこそ、アーモンドアイに肉薄できたのです。

 

騎手や調教師がよく言う「この馬のペース」「この馬のリズム」って、まさに秋華賞のドリームコア、秋天のフィエールマン、クロノジェネシスのようなことを言うのだと思います。

 

補足で、マイラーのギャラボーグのスピードが活きたという点で思い出すのが、2018年のジャパンカップです。秋華賞はマイラー(ギャラボーグ)のスピードが中距離馬(ドリームコア)のスタミナに勝った──という見方もできるわけですが、あのJCは2000のスピード(3着スワーヴリチャード)が2400のスタミナ(シュヴァルグラン)に勝ったのです。

と同時に、脳裏に浮かんだのは3歳のアーモンドアイが2.20.6という驚異的なレコードで制した18年のジャパンカップだ。 (中略)18年のジャパンカップでは、安田記念にも出走し2000mベストに思えるスワーヴリチャードが、より長い距離に適性を持つシュヴァルグランに先着した。究極のスピード決着になったため、本来は持続力やスタミナが求められるはずの2400mのハイペースでも、スピードがスタミナに優ったのだ。

derby6-1.hatenablog.com

 

サラブレッドの配合とは2000mを基軸にした揺り戻し──(望田潤さん)

なぜダービーは涙が出るのか

どうして競馬は私の胸をこんなにも熱くさせるのだろう。

ダービーを生観戦すると、レース前から泣いてしまいます。本馬場入場で「グレート・エクウス・マーチ」が流れ出した瞬間からうるうると。国歌独唱で厳粛な気持ちになり、いわゆる「あおりVTR」でもういちど涙が出てきます。そしてファンファーレ、勝者をたたえる「HEROS ~英雄~」

家路も、帰ってからも、翌日も、次の日も。ダービーデイを思い出して、泣いてしまう。余韻が消えない。テレビで初めて見たエイシンフラッシュのダービーから16年もたつのに、いまだにこんなにも感情をかき乱されるのはダービーだけだ。

学生時代と違って、1年に1、2回しか競馬場には行かなくなったけれど、ダービーは、ダービーだけは、生で観るに限る。すばらしい興行、すばらしいスポーツです。

 

東京優駿(第93回日本ダービー)──マクフィの妙

これがあるから、こういう感情になれるから、競馬はやめられない。競馬を見続けて良かった──といえる素晴らしいオークスでした。あのレース後の感情のまま文章を綴りたかったですが、どうしても仕事やら何やらで結局ダービー前夜です。

 

指定席が当たったもので、府中にいきます。これで生で観るダービーは、ワンアンドオンリー、ドゥラメンテ、マカヒキ、ドウデュース、タスティエーラ、ダノンデサイル、クロワデュノールに続いて7回目です。

 

ということで、今年もこれを貼っておきましょう。

derby6-1.hatenablog.com

 

ダービーだからこそ買いたい馬、東京だからこそ買いたい馬を絞って書き殴ります。内枠から──。

 

④アルトラムス

イスラボニータのぐにゃぐにゃ柔体質とチーターのような俊敏なフットワーク、筋収縮性を受け継いだ。誰がどう見ても直線長コース向きのストライド。荒れ馬場の中山2000のHペースよりは、パンパン良馬場、東京2400のSペースの方が脚がたまって好走確率は上がるのではないか。

 

⑩ジャスティンビスタ

未勝利戦を勝った時から、これはショウヘイだと。京都新聞杯を勝ってダービーへ、秋の神戸新聞杯でもキレッキレというイメージ。サートゥルナ―リア×ディープインパクトで、スピードに乗った時のあの美しいフットワーク。京都2歳Sを制しているものの、小回り競馬だと大幅にパフォーマンスダウンするタイプだろう。消耗が激しい皐月賞を使えなかったのはむしろ好感。

 

⑬パントルナイーフ

母と息子でこんなにも走りが違うのか、というのが最初の感想。母アールブリュットは母父Silver Hawk全開のグラスワンダー的パワー掻き込み走法だったが、パントルナイーフはキズナ似のストライド走法。パラレルヴィジョンやメートルダールなどを送り出した母母イグジビットワンはミラノ大賞典(芝10F)3着などがあるSilver Hawk×Sadller’s Wellsという字面の中距離馬で、パントル自身の字面はキズナ×マクフィ×イグジビットワン。母父にマイラーのマクフィが入るバランスが絶妙。マクフィは個人的にめちゃくちゃ期待していた種牡馬で、Sgareef Dancerやダンシングブレーヴ、Green DesertなどNorthern Dancer×ナスキロ血脈が豊富。ここがキズナのStorm Catと脈絡して、アールブリュットの力馬感を緩和しているのだろう。マクフィなだけあって速い時計は「?」だが、32.9で上がった東スポ杯を見れば問題ナシか。同レースでライヒスアドラーを物差しとすれば力は足りるはず。

 

⑮フォルテアンジェロ

この馬もフィエールマン×Dark Engelという長距離馬×短距離馬のバランスが絶妙。本質的に2400mは長いだろうが、3歳春ならDark Engelのパワーが成長を早めて完成度という点でプラスに。ただ枠が若干外。Dark Engelパワーでピッチ気味に走るのために器用で、中山2000mのほうが相対的にプラスだっとも考えられる。

 

この4頭でも、牝系を見た時に最もダービーで◎を打つに相応しいのはパントルナイーフ(イグジビットワン)でしょうか。でもいくら東京向きに見えても、キズナ×マクフィ×イグジビットワン(Silver Hawk×Sadller's Wells)という字面は東京ではないよなあとも...。

 

皆さん良いダービーを──。

 

 

 

弥生賞ディープインパクト記念2025──共同通信杯以上のメンバー

新書大賞に三宅香帆さんの『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』が選ばれましたが、私は「なぜ働いているとブログが書けなくなるのか」状態です...

 

さて弥生賞ディープインパクト記念はクラシックロードに向けてかなりメンバーがそろった気がしますので、備忘録的に雑感を記しておきます。

 

ホープフルSの時から注目していたのが、クラウディアイとアスクシュタインです。クラウディアイはとにかく体質がシーザリオ的、サートゥルナーリア(サトア)的。サトア×ディープインパクトでサンデーサイレンスやSir Gaylordをクロスするのでサトアとディープ的な柔らか体質が発現するのは当然なのですが、特に牝ではフェアリーSとクイーンSで3着のエストゥペンダ、牡だとクラウディアイが特にサトア的体質を受け継いでいるなと感じますね。ただ、この柔らか体質のためにパンとしてこないとコーナリングで置かれかねず、中山よりはダービーでの穴候補として待機しています。

 

サトアといえば、ヴィンセンシオ(母シーリア=キンカメ×シーザリオ)もその血を受け継いでいます。ただ体質こそシーザリオ似ですが、父がフォーエバーヤングを輩出するほど、母母Monevassia(Kingmamboの全姉妹)経由の硬肉の伝えるリアルスティールです。ヴィンセンシオ自身はMonevassio=Kingmambo3×3の全きょうだいクロスを持ち、クラウディアイのように柔方向に触れておらず、柔硬のバランスが絶妙に発現しているように見えます。前脚の捌きもシーザリオやサトアやリオンディーズのように伸ばし切らず、ピッチ気味に走ります。これは母父トウカイテイオーの柔らかさを受け継ぎながらも、リアルスティールの硬肉で肩が立ち、ピッチ走法で走るレーベンスティールと似ています。コースを問わず安定したパフォーマスを発揮できるタイプではないでしょうか。速い上がりにも対応できそうで、ダービーでもと思わせますが、現時点では葉牡丹賞のメンバーレベルが評価しきれません。

 

アスクシュタインはハナを奪えるスピードがありますが、短距離馬のそれというより、ダート的なパワーで突進しているというイメージですよね。母がベラミロード×Woodmanで500kgの巨漢ですから、JDDやJDC(ジャパンダートクラシック)あたりで好走しても驚けません。ホープフルではスタート一息で差しに回りながらも、末を伸ばして素質の片鱗を見せました。東京よりは中山でしょうから、先行して折り合えればといったところです。

 

実はナグルファルも、アスクシュタインと似たイメージで解釈しています。母父ベラミロードの巨漢でサトノエピックの半弟。先行力があるけれど、結構掛かります。ただ追ってから味がある。とはいえ、ダービーで求められるような、スパッとしたカミソリの斬れ味は感じません。もしかすると、同じエピファネイア産駒のダノンデサイルのような解釈でいいのかもしれません。デサイルもダービーは勝ちましたが、本質的にカミソリ斬れではありません。ダービーを勝つなら、ノリがやったように”掛かるのを恐れずに出して行った時”でしょうか。それができなければ、皐月もダービーも善戦止まりな気がします。

 

ジュタはそれなりにピッチで走りますが、内から抜けてきた若駒Sの加速感を見ると、父ドゥラメンテのように直線の長いコースでドーン、ドーンと重厚な末脚で伸びてくるタイプに見えます。母父がStreet Cryで、トニービン→エアグルーヴ→ドゥラメンテの斬れの根源であるHornbeamを継続クロスしていますからね(Street Cry、トニービン、キンカメが内包)。ホープフルSや弥生賞という内回りで結果を残しつつも、最大パフォーが発揮できるダービーへ、という点では同厩のシンエンペラーと被ります。ダービーで内枠を引いたら確実に印を回さなければと思わせる馬です。

 

弥生賞ディープインパクト記念といえば、タイトルホルダーやアスクビクターモア、タスティエーラやサトノフラッグなど、近年は菊花賞とのつながりが顕著です。そういった点で注目してい馬もいます。

 

レイデオロ×アユサンのベストシーンはマイルを使われていますが、レース運びや末脚のスピードの乗り方を見ると、やはりレイデオロ産駒的というか、ウインドインハーヘア3×3的というべきか、ステイヤー然としています。前半緩く流れて向正面からのロンスパ戦になれば、ハマる可能性があるのではないでしょうか。ウインドインハーヘアのクロスは小柄に出る傾向があるのですが、450kgを超えているのもいいですね。

 

そして、触れないわけにいかないのがブラックジェダイトです。キタサンブラック産駒で、母はMonsun×Cadeaux Genereuxで英国スタミナ血脈の根源Donatelloの6×7。これはシュガーハート→キタサンブラックと受け継がれたPretty Polly血脈(ウインドインハーヘアやノーザンテースト、シュガーハートの母系にあるWordenなど)としっかりと脈絡します。さらにHyperion的な粘着力を伝えるLyphardを継続クロスしている点もポイントが高い。これらは、まさにキタサンブラックのあの驚異的な心肺機能の因子(その子イクイノックスにも継続クロスされている)ですから、極端にいえばブラックジェダイトが凱旋門賞を3連覇しても驚かない! それくらいのスタミナと底力を誇る配合です。「線が細くて多く使えない」ということですから、菊路線に乗れればという気持ちで見守っていきます。

 

マイネルゼウスはダノンバラード×オルフェーヴルで内回り&道悪といった字面なのですが、未勝利の走りを見るとフランス血脈である母母マンビラの重厚な斬れが発現しているようで、末は確かです。といっても速い上がりは苦しいはずで、となると新潟や外差し馬場となった福島がペストパフォーマンス発揮の舞台となるのでしょうが、完全に前が止まる今年の京成杯のような流れになれば下手したら権利は確保できるかも?

 

最後にミュージアムマイルに触れるとすれば、リオンディーズ×ハーツクライで、血統表の残りの1/4がフレンチデピュティ×サンタフェトレイル(ノーザンテースト)というマイラーですから、エピファネイア×ハーツクライ×ケイティーズファストのエフフォーリア的な輪郭。体質は柔らかく、胴長だけどそれなりにピッチで走る中距離馬といったところです。内2000mの黄菊賞の4角もスムーズな捲りでしたし、ヴィンセンシオと同じく皐月でもダービーでも好走しそうなイメージがあります。

東京優駿(第91回日本ダービー)──ダノンキングリーを探せ

 
「ダービーはダノンキングリーでいい」

 

これが私のダービーの格言だ。

 

「青葉賞馬は勝てない」「2000mベストの馬がいい」「共同通信杯こそ最重要ステップ」──。

ダービーを考察する上でさまざまな格言が語られている。

 

ディープ産駒が3歳春にある程度完成してクラシックレースを勝つには、母方の近い世代にマイラーやスプリンターの血を引き早期に頑強になる必要がある、というのはもう10年以上にわたって書いてます

 

望田潤先生はこんなふうに書くが、これはディープを「中長距離馬」と置き換えても通ずる。そんな中で私が経験的に最もしっくりとくる表現が、冒頭の“ダービーは〜”である。このダノンキングリーが意味するのは、「毎日王冠ベスト、マイルも2000も守備範囲」ということだ。もちろん2000ベストの馬もいいが、18ベストの馬で通用する。

 

「ダノンキングリーは安田記念を勝ったではないか。マイラーだ」──。こんな声も聞こえてきそうだが、あの安田はスローで1800質なレースだった。真のマイラーは半マイル46秒くらいのペースを先行して押し切ってしまうタイキシャトルのような馬だ。

 

いまでも、ときどき思い出す。ロジャーバローズの激走に驚愕しながらも、無敗の三冠を確信していたサートゥルナーリアがヴェロックスに差された瞬間、「ダービーはダノンキングリーでいいのだ」と後悔したことを──。

 

同血2頭とブリックスアンドモルタル

 

さて、今年のダービーだ。

 

ジャスティンミラノ。見るからに毎日王冠タイプではないか。「将来的にはマイラー」「菊花賞は無理」。だからこそダービー向きなのだ。

 

キズナ×デインヒルに母スプリンター。シックスペンスと配合の骨格は似ている。だがシックスペンスがマイラー的なパワー加速に見えるのに対して、ジャスティンミラノは中距離馬らしい、しなやかな加速だ。これは母母Special Dancerが内包するShareef Dancer、そしてMill Reefの影響だろう。

 

今年の東京優駿の血統的な注目点は主に2点ある。1点目は繁殖牝馬の質が向上し、黄金世代といわれるキズナの5頭出し。ただそれ以上に注目したいのは、レガレイラ=アーバンシックという2頭の有力馬だ。数ある競馬サイトから当ブログに行き着いた諸賢にとっては釈迦に説法だろうが、この2頭は同血である。(スワーヴリチャード×ハービンジャー×ダンスインザダーク×ウインドインハーヘア)

 

良血っぷりや配合の良し悪しはさておき、ダービーにおける懸念点は成長力だ。母がハービンジャー×ウインドインハーヘアというバリッバリの中長距離馬で、3歳春に頂点に立てる筋力が付き切るのかどうか。

 

レガレイラはホープフルSこそケタ外れの末脚で中山の急坂を駆け上がってみせたが、それは2歳冬時点での話。年明けから5月までの成長力が鍵となるダービーの舞台において、他馬の逆転を許してはいないか。

 

アーバンシックは牡馬ということもあり、レガレイラに比べて骨格がガッシリとしていて、まだ緩さを持て余している印象だ。その分、レースぶりも粗削りで、ダービーで2着だった父スワーヴリチャードのような器用な立ち回りができるのだろうか。日本のダービーは大味な競馬では勝てまい。

 

ブリックスアンドモルタルの産駒からは、独特の体質の柔らかさを感じる。とてもではないが、Storm Bird3×3らしい硬さは見てとれない。母父がディープインパクトともなれば、なおのことだろう。

 

ブリックスアンドモルタル×ディープインパクトのゴンバデカーブースは、フォーティナイナーの影響か、肩が立ち、前脚が伸び切らないピッチ寄りの走法(母アッフィラートもそうだった)だが、体質は中距離馬だ。やや胴長体型でもある。マイルのサウジアラビアロイヤルカップを制しながらホープフルSに出走(取消)したのも頷ける。

 

約半年ぶりのレース、しかもマイルの、それなりのペースで4着に好走した前走NHKマイルCは評価できる。ゴール時点でも脚色は衰えておらず、距離延長での走りに期待だ。望田先生がいう馬群を嫌う気性が、器用な競馬が要求されるダービーでは気がかりとなるが、真ん中~外枠に入れば食指が動く。