4歳上500万下

血統好きが大学生のころ書いていたブログ(今でもたまに更新)

弥生賞ディープインパクト記念2025──共同通信杯以上のメンバー

新書大賞に三宅香帆さんの『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』が選ばれましたが、私は「なぜ働いているとブログが書けなくなるのか」状態です...

 

さて弥生賞ディープインパクト記念はクラシックロードに向けてかなりメンバーがそろった気がしますので、備忘録的に雑感を記しておきます。

 

ホープフルSの時から注目していたのが、クラウディアイとアスクシュタインです。クラウディアイはとにかく体質がシーザリオ的、サートゥルナーリア(サトア)的。サトア×ディープインパクトサンデーサイレンスSir Gaylordをクロスするのでサトアとディープ的な柔らか体質が発現するのは当然なのですが、特に牝ではフェアリーSクイーンSで3着のエストゥペンダ、牡だとクラウディアイが特にサトア的体質を受け継いでいるなと感じますね。ただ、この柔らか体質のためにパンとしてこないとコーナリングで置かれかねず、中山よりはダービーでの穴候補として待機しています。

 

サトアといえば、ヴィンセンシオ(母シーリア=キンカメ×シーザリオ)もその血を受け継いでいます。ただ体質こそシーザリオ似ですが、父がフォーエバーヤングを輩出するほど、母母Monevassia(Kingmamboの全姉妹)経由の硬肉の伝えるリアルスティールです。ヴィンセンシオ自身はMonevassio=Kingmambo3×3の全きょうだいクロスを持ち、クラウディアイのように柔方向に触れておらず、柔硬のバランスが絶妙に発現しているように見えます。前脚の捌きもシーザリオやサトアやリオンディーズのように伸ばし切らず、ピッチ気味に走ります。これは母父トウカイテイオーの柔らかさを受け継ぎながらも、リアルスティールの硬肉で肩が立ち、ピッチ走法で走るレーベンスティールと似ています。コースを問わず安定したパフォーマスを発揮できるタイプではないでしょうか。速い上がりにも対応できそうで、ダービーでもと思わせますが、現時点では葉牡丹賞のメンバーレベルが評価しきれません。

 

アスクシュタインはハナを奪えるスピードがありますが、短距離馬のそれというより、ダート的なパワーで突進しているというイメージですよね。母がベラミロード×Woodmanで500kgの巨漢ですから、JDDやJDC(ジャパンダートクラシック)あたりで好走しても驚けません。ホープフルではスタート一息で差しに回りながらも、末を伸ばして素質の片鱗を見せました。東京よりは中山でしょうから、先行して折り合えればといったところです。

 

実はナグルファルも、アスクシュタインと似たイメージで解釈しています。母父ベラミロードの巨漢でサトノエピックの半弟。先行力があるけれど、結構掛かります。ただ追ってから味がある。とはいえ、ダービーで求められるような、スパッとしたカミソリの斬れ味は感じません。もしかすると、同じエピファネイア産駒のダノンデサイルのような解釈でいいのかもしれません。デサイルもダービーは勝ちましたが、本質的にカミソリ斬れではありません。ダービーを勝つなら、ノリがやったように”掛かるのを恐れずに出して行った時”でしょうか。それができなければ、皐月もダービーも善戦止まりな気がします。

 

ジュタはそれなりにピッチで走りますが、内から抜けてきた若駒Sの加速感を見ると、父ドゥラメンテのように直線の長いコースでドーン、ドーンと重厚な末脚で伸びてくるタイプに見えます。母父がStreet Cryで、トニービンエアグルーヴドゥラメンテの斬れの根源であるHornbeamを継続クロスしていますからね(Street Cry、トニービン、キンカメが内包)。ホープフルS弥生賞という内回りで結果を残しつつも、最大パフォーが発揮できるダービーへ、という点では同厩のシンエンペラーと被ります。ダービーで内枠を引いたら確実に印を回さなければと思わせる馬です。

 

弥生賞ディープインパクト記念といえば、タイトルホルダーやアスクビクターモア、タスティエーラやサトノフラッグなど、近年は菊花賞とのつながりが顕著です。そういった点で注目してい馬もいます。

 

レイデオロ×アユサンベストシーンはマイルを使われていますが、レース運びや末脚のスピードの乗り方を見ると、やはりレイデオロ産駒的というか、ウインドインハーヘア3×3的というべきか、ステイヤー然としています。前半緩く流れて向正面からのロンスパ戦になれば、ハマる可能性があるのではないでしょうか。ウインドインハーヘアのクロスは小柄に出る傾向があるのですが、450kgを超えているのもいいですね。

 

そして、触れないわけにいかないのがブラックジェダイトです。キタサンブラック産駒で、母はMonsun×Cadeaux Genereuxで英国スタミナ血脈の根源Donatelloの6×7。これはシュガーハート→キタサンブラックと受け継がれたPretty Polly血脈(ウインドインハーヘアノーザンテースト、シュガーハートの母系にあるWordenなど)としっかりと脈絡します。さらにHyperion的な粘着力を伝えるLyphardを継続クロスしている点もポイントが高い。これらは、まさにキタサンブラックのあの驚異的な心肺機能の因子(その子イクイノックスにも継続クロスされている)ですから、極端にいえばブラックジェダイト凱旋門賞を3連覇しても驚かない! それくらいのスタミナと底力を誇る配合です。「線が細くて多く使えない」ということですから、菊路線に乗れればという気持ちで見守っていきます。

 

マイネルゼウスダノンバラード×オルフェーヴルで内回り&道悪といった字面なのですが、未勝利の走りを見るとフランス血脈である母母マンビラの重厚な斬れが発現しているようで、末は確かです。といっても速い上がりは苦しいはずで、となると新潟や外差し馬場となった福島がペストパフォーマンス発揮の舞台となるのでしょうが、完全に前が止まる今年の京成杯のような流れになれば下手したら権利は確保できるかも?

 

最後にミュージアムマイルに触れるとすれば、リオンディーズ×ハーツクライで、血統表の残りの1/4がフレンチデピュティ×サンタフェトレイル(ノーザンテースト)というマイラーですから、エピファネイア×ハーツクライ×ケイティーズファストのエフフォーリア的な輪郭。体質は柔らかく、胴長だけどそれなりにピッチで走る中距離馬といったところです。内2000mの黄菊賞の4角もスムーズな捲りでしたし、ヴィンセンシオと同じく皐月でもダービーでも好走しそうなイメージがあります。

東京優駿(第91回日本ダービー)──ダノンキングリーを探せ

「ダービーはダノンキングリーでいい」

青葉賞馬は勝てない」「2000mベストの馬がいい」「共同通信杯こそ最重要」──。

ダービーを考察する上でさまざまな格言が語られている。

 

ディープ産駒が3歳春にある程度完成してクラシックレースを勝つには、母方の近い世代にマイラーやスプリンターの血を引き早期に頑強になる必要がある、というのはもう10年以上にわたって書いてます

 

望田潤先生はこんなふうに書くが、これはディープを「中長距離馬」と置き換えても通ずる。そんな中で筆者が経験的に最もしっくりくる表現が、冒頭のダノンキングリー……である。このダノンキングリーが意味するのは、「筋骨隆々のマイラー」ではなく、「毎日王冠ベスト、マイルも2000も守備範囲」ということだ(サリオス)。

 

いまでも、ときどき思い出す。ロジャーバローズの激走に驚愕しながらも、無敗の三冠を確信したサートゥルナーリアがヴェロックスに差された瞬間、「ダービーはダノンキングリーでいいのだ」と後悔したことを。サートゥルナーリアの二冠は望みながらも、馬券はダノンキングリーからでよかったではないか。

 

同血2頭とブリックスアンドモルタル

さて、今年のダービーだ。

 

ジャスティンミラノ。見るからに毎日王冠タイプではないか。「将来的にはマイラー」「菊花賞は無理」。だからこそダービー向きなのだ。

 

キズナ×デインヒルに母スプリンター。シックスペンスと配合の骨格は似ている。だがシックスペンスがマイラー的なパワー加速に見えるのに対して、ジャスティンミラノは中距離馬らしい、しなやかな加速だ。これは母母Special Dancerが内包するShareef Dancer、そしてMill Reefの影響だろう。

 

今年の東京優駿の血統的な注目点は主に2点ある。1点目は繁殖牝馬の質が向上し、黄金世代といわれるキズナの5頭出し。ただそれ以上に注目したいのは、レガレイラアーバンシックという2頭の有力馬だ。数ある競馬サイトから当ブログに行き着いた諸賢にとっては釈迦に説法だろうが、この2頭は同血である。(スワーヴリチャード×ハービンジャー×ダンスインザダーク×ウインドインハーヘア

 

良血っぷりや配合の良し悪しはさておき、ダービーにおける懸念点は成長力だ。母がハービンジャー×ウインドインハーヘアというバリッバリの中長距離馬で、3歳春に頂点に立てる筋力が付き切るのかどうか。

 

レガレイラホープフルSこそケタ外れの末脚で中山の急坂を駆け上がってみせたが、それは2歳冬時点での話。年明けから5月までの成長力が鍵となるダービーの舞台において、他馬の逆転を許してはいないか。

 

アーバンシックは牡馬ということもあり、レガレイラに比べて骨格がガッシリとしていて、まだ緩さを持て余している印象だ。その分、レースぶりも粗削りで、ダービーで2着だった父スワーヴリチャードのような競馬ができるのか。日本のダービーは大味な競馬では勝てまい。

 

ブリックスアンドモルタルの産駒からは、独特の体質の柔らかさを感じる。とてもではないが、Storm Bird3×3らしい硬さは見てとれない。母父がディープインパクトともなれば、なおのことだろう。

 

ブリックスアンドモルタル×ディープインパクトゴンバデカーブースは、フォーティナイナーの影響か、肩が立ち、前脚が伸び切らないピッチ寄りの走法(母アッフィラートもそうだった)だが、体質は中距離馬だ。やや胴長体型でもある。マイルのサウジアラビアロイヤルカップを制しながらホープフルSに出走(取消)したのも頷ける。

 

約半年ぶりのレース、しかもマイルの、それなりのペースで4着に好走した前走NHKマイルCは評価できる。ゴール時点でも脚色は衰えておらず、距離延長での走りに期待だ。望田先生がいう馬群を嫌う気性が器用な競馬が要求されるダービーでは気がかりとなるが、真ん中~外枠に入れば食指が動く。

第168回天皇賞(秋)──競走馬の完成形 イクイノックスとディープインパクト

競走馬の完成形を見た。現地にいたが、1.55.5という数字を確認したときの衝撃は忘れないだろう。レース内容の「濃さ」はレース直後に理解したものの、時計を見た瞬間は「怖い」という感情が先に湧き上がった。

 

数十分後、57.7-57.5というラップを知り、「怖さ」の正体を解釈できた。ジャックドールがつくった57.7のペースをガイアフォースが離れず追走し、そう離れない3番手を追走した馬が57.5で上がる。やや玄人向けの表現になるが、シルポートが56.5で逃げたあの天皇賞秋で、3番手を追走したエイシンフラッシュがそのまま押し切ってしまうイメージだ。

 

この記事が当ブログで圧倒的に読まれているようなので、以下はよりわかりやすく編集した(2025年3月8日)

 

強さの根源──ウインドインハーヘアの底力

 

いわゆる「欧州スタミナ血統」とは、つまるところ、英国の”スタミナ血脈だ。その正体を突き詰めれば、Pretty Pollyという名牝と種牡馬Hyperionにたどりつく。この名馬の解説は識者やほかの記事に譲るとして、イクイノックスを語る上では、ディープインパクトブラックタイドの母ウインドインハーヘアに触れざるを得ない。

 

ウインドインハーヘアの牝系は2022年に逝去した英国のエリザベス2世が所有したピカピカのロイヤルブラッドだ。特にウインドインハーヘアの母Bureghclereは、父系がPretty Pollyの血を引く種牡馬Donatelloを引き、母母HighlightがHyperion3×2だ。ウインドハーヘアハーヘアはほかにもスタミナや底力を伝える血(Court Martial〜Lyphardなど)を併せ持っているが、もっとも根源的な因子はPretty Polly〜DonatelloとHyperionだろう。

ウインドインハーヘア

 

キタサンブラックの血統的本質

さて、そんなハーヘアの息子、ブラックタイドを父に持つキタサンブラックへと話を移す。キタサンブラックの母シュガーハート。その父は短距離王者サクラバクシンオーだ。母父がスプリンターだから距離が持たないと言われたが、そんな意見はきわめて表層的で、血統的な本質をとらえていない。

 

サクラバクシンオーの母父は大種牡馬ノーザンテーストで、Pretty PollyとHyperionを併せ持つ牝馬Lady Angera3×2という異質なクロスを持つ。ノーザンテースト産駒は、その脅威的な成長力から「3度成長する」と言われたが、その因子は紛れもなくLady Angera3×2だ。シュガーハートはさらに、母オトメゴコロがPretty Polly血脈の種牡馬Worden、そしてLyphardを内包する。これらがハーヘアと脈絡して、キタサンブラックの底力と粘着力=抜かせない力を発現させたのだ。私から見れば、キタサンブラックウインドインハーヘアなのである。

キタサンブラック

 

Hyperion、Pretty Polly、Lyphardを3代継続

 

そして、この稿の主題であるキタサンブラックの子、イクイノックスだ。

イクイノックスの母母ブランシェリーはトニービン×NureyevでHyperionの塊だ。そしてブランシェリーの3代母父Le FabuleuxがPretty Pollyを内包している。さらにイクイノックスの母シュガーハートは、父キングヘイローを通じてLyphardを持っている。つまり、イクイノックスは、ブラックタイドキタサンブラック→イクイノックスと、3代続けてHyperionとPretty Polly、そしてLyphardを継続クロスしているのだ!

イクイノックス

 

(ここからは読み飛ばしてもらい、下記の紫部分に飛んでもらって構わない)

 

なぜディープとイクイは斬れるのか

 

だが、イクイノックスはこうした英国スタミナ血脈が豊富でありながら、筋肉はディープインパクトのように品があり、柔らかい。1年目の天皇賞(秋)では、ディープのように斬れに斬れ、パンサラッサを差し切った。

 

ディープインパクトが柔らかい筋肉を持ち、あれだけ斬れたのは、サンデーサイレンスが持つHaloと母父Alzaoが持つSir Ivorのニアリークロスによるものだ(HaloとSir Ivorは同血ではないが、血統構成が非常に似ている)。

 

さて、イクイノックスの母父はキングヘイローだ。キングヘイローはHaloとSir Ivorを併せ持つ。さらに2頭と似た血統構成のDroneも内包し、Drone≒Halo≒Sir Ivor3・2×3という異常な(?)ニアリークロスを持つ。これらがブラックタイドのHalo≒Sir Ivorと脈絡し、ディープのような体質を受け継いだのだろう。そして、これら全ての血統的因子が絶妙に発現した結果、私たちは“ディープのように切れてキタサンブラックのように持続する”名馬を目撃しているのだ。

 

ディープインパクト天皇賞(春)の「4角先頭ひと捲り」で評価をより高めたのはなぜか。それはディープの本質が「斬れ」「瞬発力」ではなく、ウインドインハーヘア譲りの心肺機能(スタミナ)にあることを明らかにしたからだ。そしてイクイノックスの本質もまた、22年天皇賞(秋)の「32.7」ではなく、23年の「57.7-57.5」──その源泉はウインドインハーヘア、つまりPretty PollyとHyperionなのだ。

 

Hyperion的な心肺機能

 

Hyperion的な心肺機能」という例でわかりやすいのは、若い頃に追い込みで善戦を繰り返したハーツクライジャスタウェイが、先行してから見せた豹変ぶりだ(ハーツくらいの有馬、ドバイシーマやジャスタウェイ秋天ドバイターフ)。しかし、ハーツクライジャスタウェイが追い込んでいた時にタイトルを取れなかった。一方で、ディープインパクトやイクイノックスは、追い込みでもG1を勝ち切ってしまった。それが最強たるゆえんなのかもしれない。加えて両馬は内回りで行われる有馬記念でのコーナリングも美しかった。米国の伝説的名馬Secretariatも直線とコーナーでは走法が変わったといわれている。思い返せば、オルフェーヴルもそんな馬だった。俗な表現になるが、いま「最強馬論争」に名を挙げるならこの3頭なのだろう。

 

(編集ここまで)

 

──以下は馬券的側面からの雑感です

週中はジャスティンパレスのNureyev的ナタ斬れに期待していた。明らかにコーナリングが苦手だが、阪神内回りの菊花賞も好走、有馬記念は外差しバイアスながら最内追走ながら地力を見せ、宝塚でも崩れなかった。だからコーナー加速が求められない府中なら末脚の破壊力は増すという見立てだった。だが、直前になってガイアフォース複勝に変更した。8Rの本栖湖特別で2400m=2.22.8という好時計が出て、マイルの一線級で差のない競馬をしてきた同馬に魅力を感じたからだ。

 

と同時に、脳裏に浮かんだのは3歳のアーモンドアイが2.20.6という驚異的なレコードで制した18年のジャパンカップだ。

 

本来、ハイペースならジャスティンパレスのナタ斬れが炸裂するはずだが、2000mであまりにも時計が速すぎると(2000m以上を使われ続けたことも相まって)スピードの絶対値や追走力で劣るのではないか──。18年のジャパンカップでは、安田記念にも出走し2000mベストに思えるスワーヴリチャードが、より長い距離に適性を持つシュヴァルグランに先着した。スピード決着になったため、本来は持続力やスタミナが求められるはずの2400mのハイペースでも、スピードがスタミナに優ったのだ。

 

今回の天皇賞もこの発想で、スタミナ(ジャスティンパレス)よりもスピード(ガイアフォース)を上位にとった。ただスローペースの上がり勝負になれば(≒時計勝負にならなければ)クロノジェネシスやフィエールマンが追い込んできたように、長めの距離に適性を持つジャスティンパレスの差し込みもあり得ると考えていた。

 

結果的にジャスティンパレスがこの時計に対応してナタの斬れ味を発揮し、ガイアフォースはジャックドールのペースに付き合う形となり5着に敗れた。ジャスティンパレスは斬れの質がジャングルポケットと同質(Nurevey)で東京2400mも楽しみだが、相手がイクイノックスとリバティアイランドだ。ガイアフォースはよく走ったと思うだけに、ドウデュースあたりの位置取りで流れに乗った世界線を見たかった。

第84回菊花賞──ソールオリエンスとタスティエーラの本質

ブラックタイド×サクラバクシンオーキタサンブラックウインドインハーヘアの英血スタミナが前面に発現していたように、字面だけで血統を語ると稚拙になりかねない。父長距離馬×母(父)長距離馬だからといって長距離馬が生まれるとは限らないし、サクラバクシンオー産駒の中山大障害勝ち馬もいる。父スターリングローズアスカクリチャンが2500mのアルゼンチン共和国杯を、父バトルプランブレスジャーニーが芝のサウジアラビアRCや東スポ杯2歳Sを制したのは、母が内包する仏血が発現していたからにほかならない。つまるところ「血統表の何が発現しているか」を考察するのが肝要なのだ。

全身運動で

ソールオリエンスキタサンブラック×Motivator英ダービー馬=代表産駒にTreve、母父としてタイトルホルダーを輩出)という字面だが、母系に多く内包するFair Trialの影響かとてもステイヤーとはいえない爆発力を持ち、大きなアクションで──岡田繁幸総帥的に言えば全身運動で差してくる。だからこそ、距離延長はプラスではないだろう。リアルスティール菊花賞のように内枠を活かして差し込めればアタマの可能性も考えられたが、この枠では厳しいと見る。京都外回りがやや外差し優勢なのは幸運だが、終始外を回って差し切れるほど抜けた存在ではない。

ダービーで強い競馬をしたのは

一方、タスティエーラフレンチデピュティ×ノーザンテースト×クラフティワイフマイラー血統である母母フォルテピアノ(ダ1200〜1400mで3勝)が、この馬の理解を妨げてきた。フォルテピアノのパワーがダービーを制する早熟性をもたらしたのは言うまでもないが、そのダービーをどう評価するかが問題だ。

 

「スローペースの4番手でベストポジションだった」という点を強調すれば「展開が向いての勝利」と言える。多くの人が「1番強い競馬をしたのはソールオリエンスだ」「外を回って差してきたハーツコンチェルトだ」と回顧するのもうなずける。だがタスティエーラはソールオリエンスと違い、中長距離の道悪で強さを誇ったサトノクラウンの因子が発現したであろう燃費の良いトボトボ走りで、時計が掛かった中山の弥生賞皐月賞でパフォーマンスを上げた馬だ。とすれば「本来得意ではない瞬発力勝負で勝ち切った」と評価できないか。思い返せばダービーと同質の共同通信杯でも、完璧なレース運びをしながら切れ負けしていた。

 

折り合いに難がなく競馬上手で内枠確保、ソラを使うので併せ馬で差し込みたいが、戴冠に最も近い存在と考える。ダービーからの直行での2冠も、現代競馬の象徴のような気がする。

 

ダノンザタイガー 〜 母のCharedi≒Ta Wee

2023クラシック世代で特に注目・期待しているのがダノンザタイガーで、彼はコントレイルやイクイノックスを想起させる独特の柔らかさを持つ馬で、しなやかなストライドには美しさすら覚えます。

 

ハーツクライ産駒のデビュー時、ワンアンドオンリーヌーヴォレコルトの活躍で“母がスプリンダーであること”が注目されました。それは”母からパワーを補うことで晩成・中長距離血統のハーツクライ産駒が3歳春に完成する”という意味でした。

 

“母からパワーを補う”という点でいえば、ハーツクライの母アイリッシュダンスが持つBusanda(名種牡馬Buckpasserの母)が内包するLa Troienneを増幅しているか否かが大きなポイントです(Busandaの母父はWar Adomiralなので、その父Man`o Warの増幅も有効)。

 

そして同じくアイリッシュダンスが内包するトニービンの主要な血、NasrullahHyperionを増幅できればなお良いのです(Sadler's Wells≒NureyevやBlissing Groomなど)。

 

さて話をダノンザタイガーに戻しましょう。

 

母は6Fの米G1デルマーデビュータントSを勝ったスプリンター・シーズアタイガー。

 

母母父Cahill Roadは底力&パワーに秀でた名種牡馬Unbridledの全兄で、BuckpasserMan'o War4×4のIn Realityを持ち、Busandaの血を増幅しています。

 

さらに3代母父がGreat Above。Gread Aboveは母Ta WeeがCahill Roadの母母CharediとIntenitionallyやAspidistraが共通でニアリークロスの関係にあり、ニアリークロスはMan'o WarLa Troiennne血脈が共通ですから、Busandaと強く、強く、脈絡します。

Ta Wee

Chaderi

──追記

緩さが残るから(?)3歳秋緒戦は芝2400mを使われましたが、スワーヴリチャードと同じように2000mくらいがベストなのではと見ています。