4歳上500万下

「血統表」と「現実」をすりあわせて、競走馬の「個性」を「解釈」しよう

【逆説】日本競馬はスローペースのヨーイドン──“つまらない”でいいのだ

クロノジェネシスはすごいレースをした。日本調教馬がパリロンシャンの不良馬場で先行して、あれだけの粘りをみせたことに感慨を覚えた。名馬Nashwanから受け継いだ心肺機能、ありったけのスタミナを振り絞ったクロノジェネシスに賞賛を送りたい。

 

一部の血統好きからは、母クロノロジストだから──つまりクロフネ×サンデーサイレンス×ラスティックベルだから欧州(しかも道悪)の2400mは厳しいという意見もみられた。しかし、それは正しいようで正しくない。

 

たとえば、キタサンブラックウインドインハーヘアの重厚なスタミナと粘着力・持続力が完全に遺伝し、発現していた。明らかに短距離馬ではなかった。いくら母系の短距離色が強くでも、超一流の英血“ウインドインハーヘアの発現”だけで中長距離馬だったのだ。

 

また、こんな声も聞かれる。

 

高速馬場で、スローで、前有利で、瞬発力がある馬が有利で──こんな競馬をしていたら、日本調教馬はいつになっても凱旋門賞を勝てない。

 

しかし血統的、大局的見地に立てば、日本競馬はそれでいいのだ。海外の一流馬が来日しないジャパンカップで、内輪だけで盛り上がっていていいのだ。ガラパゴスでいいのだ。

 

なぜか──各国の競馬史を鑑みればいい。

 

英国血統がなぜ一流で、スタミナに優れているのか。それは「そういう」レース形態だからだ。

 

米国もそうだ。ゲートが開いてから「ダートをスピードで押し切る」という競馬をレース形態を確立させた。すると、おのずと「そういう」競馬で勝てない血統は淘汰され、スピードとパワーに特化した血が「一流」となった。そうしてスタミナ一辺倒だった英血と融合し、英米で名馬が生まれた。

 

なぜ、いまドイツ血統が世界の注目を浴びているのか。ドイツ血統は本年(2021年)の凱旋門賞を制したトルカータータッソのように道悪・スタミナ勝負に強い。その一方で、95年のJCを制したランドにしても、日本で母系に入っても、スピード勝負にさえ強さを見せる。この二面性が育まれたのは、それはドイツ「だけで」その血統が脈々と受け継がれてきたからだ。

 

そう、「ガラパゴス」だからこそ血は淘汰され、一流になる。

 

だから日本競馬も、高速馬場で、スローペースで、インの3番手からサッと一瞬の脚が求められるレース形態を突き詰めていいのだ。そうして淘汰され、生き残るディープインパクト的(Halo≒Sir Ivor的)な血が一流となる──かつて英国スタミナ血統と見事に敷衍(ふえん)した米血のように。

 

もちろん、ステイヤーズSダイヤモンドSを勝つ“脚の遅い”馬が種牡馬になる道は残しておいたほうがいい。しかし、そのような血統が活躍する必要は必ずしもないのだ。

 

先述した米英・独だけでなく、たとえばペルーササトノダイヤモンドで脚光をあびたアルゼンチンのように、淘汰された血が「一流」であることに変わりはないから、日本で淘汰された血もスノーフォールのように現地で順応できる。

 

日本競馬はスローのヨーイドンでOK、前残り、内枠有利でOKなのだ。