マンハッタンカフェから読み解く日本適性
マンハッタンカフェで重要なのは、いかに自身が持つHalo≒Boldnesian的(2×4)的な血を増幅するかです。では一体、「Halo≒Boldnesian的な血」とはなにかというと、Nasrullah(≒Royal Cherger、3/4同血)と、Sir Gallahad(=Bull Dog)と、Blue Larkspurと、Pharamond(=Sickle)です。
Nasrullahは説明不要、Sir Gallahad=Bull DogはTeddyの、Blue LarkspurはDominoの後継ラインで、父系としては途絶えてもなお影響力を発揮しているのは、さすがTeddy、さすがDominoと言ったところです。
TeddyやDominoの硬派なマッチョ米血と、Nasrullah=Royal Chergerの柔軟性が絶妙に中和したところに、日本適性――スピードの米でもなくスタミナの欧でもない、その中間点に位置する――が生まれているのでしょう。
独血を持つマンハッタンカフェとエイシンフラッシュが日本で活躍したのも、これらの血を増幅させることに成功したからです。
マンハッタンカフェは先述の通りHalo≒Boldnesian
エイシンフラッシュは母がRed God≒Stay at Home4×6、そこにMr.Prospector(父キングズベスト←Kingmambo←Mr.Prospector)が効いています。ちなみにMr.ProspectorはSickle、Nasrullah、Bull Dog、Blue Larkspurを持っています。こうして独血過多のムーンレディの中から僅かなスピードを拾い上げたのです。いや、むしろ僅かだからこそ絶品の斬れになったともいえる。
ラジオNIKKEI賞を制したメイショウテッコンもまさにマンハッタンカフェの教科書的配合。母がMr.Prospector3×4なのですから。さらに「Bold Ruler+Bull Dog+Pharamond」みたいな血もちらほら見られます。
しかし、これがディープインパクトとなると――もちろんヴィブロスやシンハライトやマカヒキなど、Haloクロスの馬も活躍するが――配合(母)を選ばずに重賞級の馬を輩出し続けてしまう。だからこそ〝スーパーサイアー〟なのです。
独血統、マンハッタンカフェとエイシンフラッシュに共通する二面性
テイエムオペラオーの引退レースの有馬記念を制したのは3歳のマンハッタンカフェでした。トゥザヴィクトリーのつくる緩い流れの中でマンカフェのHalo≒Boldnesian的なフワッとした機動力、瞬発力が活きたのです。
しかしマンカッタンカフェは菊花賞と天皇賞(春)を制しているように、Ribot~Allegedのスタミナも兼ね揃えていました。
8年前のダービーを究極の切れで制したのはエイシンフラッシュ。その切れの源は母ムーンレディのRed God≒Stay at Home(=Boldnesian)4×5、そしてムーンレディにキングズベストが配されてできたMr.Prospector≒Red God≒Stay at Home3×5・6です。もちろんダービーや毎日王冠の切れも見事ですが、3歳オルフェーヴルのスロー有馬2着や、3歳ゴールドシップ有馬で内から一瞬抜け出した脚(当日三浦皇成騎手に乗り替わり)は、じつに〝らしい〟もの。
しかしタフな馬場だった天皇賞(春)でも2着に好走しているように、代々重ねられてきたHyperionとSon-in-Lawの正当な英国的スタミナも垣間見えました。
僕が何を求めて競馬を観ているかって、エイシンフラッシュの【ゴールドシップが焼死した有馬記念】での一瞬の脚を見て「らしいな~」と思うためです(笑)。
これ、競馬だから「ん?」と思うだけで、ほかのスポーツなら当然のことです。ワールドカップでエムバペの「らしい」スピードを見て唸りたいから観ているんでしょう?
ブログタイトルの下にも書いてあるように、こんな感じで血統表と現実を擦り合わせて、競走馬の個性を解釈するのが私の醍醐味です。
そんなわけで今年もダービー・デイ
考察を書く気力が湧いてくるかどうか微妙な前夜です(^^;)
〝垂れない〟〝切れない〟走りはやっぱりHyperionが強かったのか
本当はヴィクトリアマイル前夜に書こうと思っていたのだが、仕事が立て込んでいて今日になった。
京王杯SCで着眼したのはラインスピリットの4着。母リボンストライプはウイニングチケットの全妹でHornbeam≒テスコボーイ3×3のNasrullahとHyperionのクロスで、父スウェプトオーヴァーボードが内包するフォーティナイナーも三代母CourtesyがNasrullah× Hyperionの組み合わせ。やっぱりこれだけNasrullahとHyperionが増幅されていると、いくら短距離の先行馬だろうと、中京1400とか東京1400とか、急坂+長直線での好走を考えてしまう。だから高松宮記念でも毎年注目していたのだが、今回は生涯ベストといってもいい走りだったのではないか。年齢を重ねてHyperionが成熟してきたともみてとれる。自分の注目していた馬が、自分の考えた通りの走りを見せる――これでもう満足している自分がいる。つまり、これが自分の競馬観だと思うこの頃である。
NasrullahとHyperionという観点でいうと、アエロリットは大跳びだからてっきりNureyev的――ジャングルポケット的斬れだと思っていたが、中山記念の〝垂れない〟走りやヴィクトリアマイルのイマイチ〝切れない〟走りを見ると、やっぱりHyperion、ネオユニヴァース×Nureyev、もっと言えばポインテッドパス+Nureyevなのだなぁと思った。だから案外、男馬がいてタフな流れの安田記念の方が向いているのではないか。それでも胴長大跳というのはNasrullahの影響なのだろう。
さて、オークス。キレッキレのアーモンドアイと競馬上手なラッキーライラックはブエナビスタとレッドディザイアを想起させます。最近だとハープスターとヌーヴォレコルトもそんな感じだった。オールドファンはどちらも〝最近〟なんでしょうけどね。
忙しい毎日ですが、オークス・ダービーくらいはじっくりと思索を巡らしてみますよ。
ガンコ ~ ディアウインクの仔が天皇賞(春)に出走する歓び
金曜の夜、銀座を回って飲み足りず自宅でジャックダニエルを飲みながら書いている。高校~大学時代のように土曜の青葉賞出走各馬をあれこれ考察して論ずる気力はなくなってしまった。ただ、仕事の疲労を紛らわすために競馬へ熱を注ぐ可能性を感じている日々ではある。
さて天皇賞だ。
いくら3200mの長距離戦とはいえ、スタミナ順に決しないのが春の京都3200m良馬場の面白いところである。内枠で巧く立ち回れた馬――フェノーメノのように――が有利だ、などということはもう誰でも言えるので本当に個人的な心情を軽筆する。
ガンゴはいい。ナカヤマフェスタは母ディアウイクがHis Majesty2×4、タイトスポット≒デインヒル1×2ともいえる強烈な配合で、この配合はステイゴールドの配合のポイントでもあるから生まれた名馬であるが(ワークフォースと重馬場ロンシャンで叩き合ったあの凱旋門賞は伝説的だ。競走馬はGIを多く勝つことよりも、1度でもいいから桁外れの能力を見せつけることに魅力を感じる――エピファネイアのJCのように…)、ようやくこの名馬からGIで勝負になる馬が出てきたと思うと感慨深い。当然だ!という気持ちと歓びが交錯している。
ナカヤマフェスタは重厚さを伝えるからTom Fool的軽快さを増幅している産駒が活躍している。ガンコもTom Foolを増幅しているのだがデインヒル≒Polishi Precedent 4×3とHalo4×4の調和が妙。
日曜新潟5R(芝1600m)の新馬戦は11番人気、ナカヤマフェスタ産駒のグリトニルが差し切りました。ナカヤマフェスタは母ディアウィンクが、その母父デインヒルの血統構成を極限に増幅したすごい配合馬で、それらしいパワーを武器に2010年の凱旋門賞では歴史的な不良馬場の中ワークフォースとの叩き合いを演じました。
産駒もやはりこのパワーを増幅した馬が走る(=だからダートでの勝利も多い)のかな、といったところ。面白いのは現3歳世代で母にヘクタープロテクターを持つ馬は3頭いて、全てが勝ち上がっているのです。グリトニルは母母父がWoodman(ヘクタープロテクターの父)で、相性の良さを物語っていますね。しかし、母が馬群を嫌う気性を伝えるAureole5×6・5というクロスを持つので、これには注意したいところです。今回も大外に持ち出してから勢い良く伸びてきました。とはいえ、ステイゴールド系の新馬が荒々しい勝ち方をすると大物を期待してしまいますね~。
Haloは軽やかなスピードで日本向き――とは良く言われることで、マンハッタンカフェなんかは欧州的重厚さをHaloで中和するというイメージがありますが、これも突き詰めればTom Fool増幅なのです。
ビートブラック的に中長距離戦線で唯一無二な存在になってくれたらと思っている。
シュヴァルグランの地力&鞍上とレインボーラインだと思っているがどうなることか。後者のこの成長ぶりについても当日までに簡単に述べなければならないなぁ。