4歳上500万下

血統好きが大学生のころ書いていたブログ(今でもたまに更新)

サトノキングダムやらドウディやら…

入稿した文章が上がっていないので、もともとこっちに書こうと思っていたコアなネタも含めて再度まとめます。

 

ノーザンテースト、Robertoの成長力

クイーンSは、マコトブリジャール福島牝馬Sに続いての重賞連勝。福島牝馬の11番人気に続き、今回も9番人気という人気の無さでした。展望記事にも書かなかったのですが、ひとつだけ気になっていたことは、福島牝馬ではいくらペース、位置取り等が完璧だったとはいえ直線で「きっちり」抜け出して0.2秒差を付けていたということ。ここの部分で、ちょっと今までのブリジャールを超えてたなぁという気はしていました。ブリジャールは母父がブライアンズタイムですが、Robertoやノーザンテーストというのは、母系に入ると本当に素晴らしい成長力をみせます。

2着シャルールは、I PassやNever Bendの持つLa Troiennneの影響で肩が立っているので、条件戦こそ力の違いで直線の長いコースで勝ちあがりましたが、小回り1800mはベスト。3着ダンツキャンサーは母がPrincely Gift4×4なので平坦、特に3角~4角下りの京都は抜群に合うタイプでしょう。

 

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 ベスト条件!

シャルールは母が斬れを伝えるフランス血脈ですが、母のNever Bendと父の持つBuckpasserを通じてLa Troienneのクロス、そして母系にTom Foolも入るので「器用さのある中距離馬」といったとこころ。立ち回りは抜群に巧く、パワーもあるので洋芝の小回り1800はベストでしょう。ヴィクトリアマイルはマイルのスピード勝負に巻き込まれたので参考外、ここは巻き返してくれるのではないでしょうか。

 

【クイーンS】血統考察 byうまカレ|競馬コラム|競馬予想のウマニティ - サンスポ&ニッポン放送公認SNS

 

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●血統の奥深さを感じさせるサクラバクシンオー

アイビスサマーダッシュベルカントの連覇。種牡馬サクラバクシンオーは、Nasrullah3×4の父サクラユタカオーの影響か、柔らかく、スプリンターらしい俊敏な動きが出来ない産駒が多いですが、代表産駒はサクラバクシンオーの持つ頑強な血、ノーザンテーストを増幅しています。ベルカントノーザンテースト≒Vice Regent3×4、母系のAlycidonノーザンテースト増幅に一役買っています。

そもそも、アンバーシャダイの全妹クリアアンバーにサクラユタカオーで名スプリンターが生まれるのが普通ではなくて、重厚なメジロ血脈からモーリスが生まれたように、地面だけでは何も語れないのが血統の面白いところです。望田先生はアンバーシャダイTourbillonの柔らかさが出た、と仰られていますが、サクラバクシンオーの血統をみれば(キタサンブラックで少し論争が起こりましたが)、母系に入ってスプリンターが生まれるよりもむしろマイル~中距離馬が生まれる方が納得がいきます。ハクサンムーンよりもキタサンブラックやアデイインザライフを見ている方が、サクラユタカオー→サンクラバクシンオーらしいな、と思います(3頭とも母父サクラバクシンオー

 

●ハイレベル古町特別

土曜新潟の古町時別は、1着~4着までが3歳馬という決着。ハイレベルな1戦だったと思いますが、特に注目しているのは2着サトノキングダムと4着レインボーフラッグ。

サトノキングダムは、ドバイWCを制したAnimal Kingdomの半弟でワールドエース、ビッシュ、エックスマーク、アドマイヤシーマなどが出るディープインパクト×Acatenangoというニックス。さらに母母父はダンシングブレーヴですが、これもAlzaoとニアリークロス(LyphardSir Ivor≒Drone)になるので、サトノルパンレッドアヴァンセスマートレイアーアヴニールマルシェなど相性は良いです。母系に入るTraffic Judfeの影響かパワーも感じさせるのが魅力。相当奥がありそうなので長い目で注目ですね。

ドバイワールドカップケンタッキーダービーを制した半兄Animal KingdomBlushing Groom→Candy StripesラインのLeroidesanimauxという南米色が強いの種牡馬の産駒。母父Acatenangoは1/4独、3/4英で成功した馬ですが、サトノキングダムの母系は独のDラインです。ポイントはLyphard4×4でありながら、そのクロスが、Lyphardとは思えない斬れ味をみせた父ディープインパクトと母母父ダンシングブレーヴを通してのものだということで、Alzaoダンシングブレーヴ3×3(LyphardSir Ivor≒Drone)でもあるということです。調べたところ、このニアリークロスを持つ馬はサトノルパンスマートレイアーアヴニールマルシェレガッタなどやはり斬れる馬を多く輩出していますね。

また、ディープインパクト×AcatenangoワールドエースやエックスマークなどOP馬が出ているように、Acatenangoの父父で純独血であるLiteratや、Mumtaz Mahalと結びつくTetratemaを2本(Acatenangoの母が5×3のクロスを持つ)、そしてHyperionを同時に取り込めることで相性が良いです。

それでも、やはりドバイワールドカップケンタッキーダービー馬の弟だけあって、母系のトラフィック(Traffic JudgeやEight Thirtyを持つ)の影響か、柔らかすぎないところも良いですね。あの俊敏さも感じさせる美しいリズム良いフットワークはエピファネイアを思い出させます。

しかし昨年はサトノクラウンサトノラーゼン、今年はサトノダイヤモンドにサトノキングダムを所有されている里見オーナー、見事ですね。何かこう、品を感じさせる馬が多いように思います。

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レインボーフラッグは、トニービン×NureyevでHyperion6・4・5×6・6、Fair Trial7・5×7の父ジャングルポケットに、母母ラゲラがTudor Minstrel5×5(Hyperion×Lady Juror←Fair Trialの母)で脈絡します。このLady Juror→Fair Trialは、5×6くらいでも非常に強い影響力のある血ですから、無視できません。Nureyev≒Sadler’s Wellsの隆盛も突き詰めればLady Jurorのおかげです。レインボーフラッグ自身は、気性をコントロールできれば将来が楽しみです。

 

ヴィクトワールピサ産駒のコウソクストレート

土曜新潟5R(芝1400m)は、ヴィクトワールピサ産駒のコウソクストレートが快勝しました。父産駒の2歳初勝利となりました。ヴィクトワールピサ産駒は、Mr.Prospectorの母であるGold DiggerNasrullahとCount Fleet)を増幅した馬が良く走るということは、このコラムでも何度も書いてきました。コウソクストレートは母メジロアリスがアドマイヤコジーン産駒でCaro3×3。2歳世代で中央で馬券になった馬は、コウソクストレート含め、メルヴィンカズマ(Caro)、アンネリース(母Caro4×4)と3頭すべてがCaroの血を持っています。Caro→CozzeneMill ReefGold Diggerを増幅するので非常にピサ産駒と相性が良いので注目です。

個人的に産駒デビュー前は、パワー型のピサでしたから、自身のHaloクロスを継続する形が良いのかなぁ~と思ったら違いましたね。母母Much Too Riskyの仏血を増幅すればジュエラーのようなキッレキレの馬も出る、なかなか面白い種牡馬だと思います。

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ダッシャーゴーゴーみたい

土曜小倉5R(芝1200m)の新馬戦で1番人気で5着に敗れたダノンチャンスは、母がワイルドラッシュ×ネガノですから叔父にダッシャーゴーゴー、ダッシャーワン。Halo≒Drone3×5・5、ナスキロ+Tom Foolという点ではDrone≒Hopespringseternalでもあります。パドックを見て思ったのですが、この「大きいし量も多いんだけれど緩い筋肉」というのはダッシャーゴーゴーにそっくり。Miswakiにナスキロ(Drone)を合せるとこうなるんですかねぇ。こういうタイプは若いうちは1400~マイルの方が良いのかもしれません。

 

ナカヤマフェスタ産駒のグリトニル

日曜新潟5R(芝1600m)の新馬戦は11番人気、ナカヤマフェスタ産駒のグリトニルが差し切りました。ナカヤマフェスタは母ディアウィンクが、その母父デインヒルの血統構成を極限に増幅したすごい配合馬で、それらしいパワーを武器に2010年の凱旋門賞では歴史的な不良馬場の中ワークフォースとの叩き合いを演じました。

産駒もやはりこのパワーを増幅した馬が走る(=だからダートでの勝利も多い)のかな、といったところ。面白いのは現3歳世代で母にヘクタープロテクターを持つ馬は3頭いて、全てが勝ち上がっているのです。グリトニルは母母父がWoodmanヘクタープロテクターの父)で、相性の良さを物語っていますね。しかし、母が馬群を嫌う気性を伝えるAureole5×6・5というクロスを持つので、これには注意したいところです。今回も大外に持ち出してから勢い良く伸びてきました。とはいえ、ステイゴールド系の新馬が荒々しい勝ち方をすると大物を期待してしまいますね~。

 

●ダイイチターミナルと同じニアリークロス

グリトニルの新馬戦で3着だった名種牡馬コンデュイット()産駒のドウディは母がStorm Catを持ちます。これはダイイチターミナルと同じでHopespringseternal≒Terlingua5×4という、ナスキロとWar AdmiralとLa TroiennneとBull Dog=Sir GallahadとMenowが脈絡する、柔らかく速く動けるニアリークロス。きっちり走ってくれました。

 

リーチザクラウン産駒のセイウングロリアス

日曜新潟1Rではリーチザクラウン産駒のセイウングロリアスが快勝。リーチザクラウン産駒は、米血らしい前向きな気性の影響もありこの夏好成績を残しています(種牡馬としてのポイントは、自身の配合が米血過多で完璧ではなかったということだと思う)。米血過多なので、大物を期待するなら、まずは母から重厚な欧血を取り込むべきだろうと考えていましたが、グロリアスの母はノーザンテースト3×3。東京で新馬勝ちを決めたニシノアップルパイも母父がアンバーシャダイノーザンテーストで、母母はHyperionが豊富なダーリントウショウです。グロリアスの走りは非常に大飛びで、これはサッカーボーイPrincely Giftの影響が大きいでしょう。数少ない産駒で、欧血をしっかりと取り込んだ馬ではしっかりとニショノアップルパイ、セイウングロリアスを出したリーチザクラウン。「自身が完璧な競走馬ではなく、完璧な配合ではなかった…逆にいえば、ポテンシャルは高かったのだから自身の弱点だけ補強すれば自信を超える馬が出せるかもしれない」という点では、ステイゴールドに通じるものがあります。これで来年の種付け頭数も増えるでしょうから非常に楽しみです。

リーチザクラウンは母母クラシッククラウンがChief's Crownの半妹という良血馬で、スペシャルウィーク×Seattle Slew×Mr.Prospector×Secretariatという米血の塊。競走馬としては欧血を取り込めなかったために先行しても、重厚な粘りが効きませんでしたが、このように「競走馬として完璧でなかったこと」が種牡馬としてはプラスに働くのです。

これは決して種牡馬として優遇されたスタートを切ったとはいえない、ステイゴールドにもいえたことで、望田先生はステイゴールドについて以下のように書かれています。

430キロ足らずの牡馬でPrincely Giftの非力さも受け継いで、全勝ち鞍が東京と平坦コース、小さくて非力なのが唯一の弱点で競走馬としてはチャンピオンにはなれなかったけれど、種牡馬としてはこの唯一の弱点を補うことで(補足:ノーザンテーストのクロスなど)チャンピオンを何頭も出したのは周知のとおり
完全無欠のチャンピオンではないからこそ、完全無欠のチャンピオンを出せるのだという、そんなことも教えてくれた馬でした

ちなみに中央初勝利となった、ニシノアップルパイは母がアンバーシャダイ×トウショウボーイノーザンテーストトウショウボーイを通じるHyperion6・5×5・6、さらに3代母セリナトウショウはPharos5・5×6・5、Swynford7×6・5、その母ビバドンナがDonatello4×2など、リーチザクラウンの父の内包するセントクレスピンの血を増幅する配合をしています。(まとめでいえば重要な欧血が豊富)この馬が出世頭になるのではないかと見込んでいます。

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うーん、サトノキングダムの走りを見て改めて思い出しましたが、エピファネイアメジャーエンブレムやアンビシャスのように、馬をみていくときには、「字面の血統らしくないもの」が発現されているかいないか、この点に留意しなければなぁと。

血統的には間違いなく重厚なスタミナや底力があるのに、軽い柔らかいフットワークで走る…といったように。

 

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【参考】

『日本サラブレッド配合史―日本百名馬と世界の名血の探究』(笠雄二郎著)

望田潤さんのブログ http://blog.goo.ne.jp/nas-quillo

栗山求さんの連載「血統SQUARE」http://www.miesque.com/motomu/works.html

『覚えておきたい 日本の牝系100』(平出貴昭著)