《回顧》第78回優駿牝馬 ~ 日本的なレースを制したのは
オークスは特段緊張することも興奮することもなくスマホ観戦、結果も何ら驚くこともありませんでした。
オークスは桜花賞に出ていたマイラーも出走することから激流となり差しが決まりやすいレースですが、昨年と今年は流れ自体は緩め(ヴゼットジョリーも厳しかったでしょう...)。
そうなれば視界さえ開ければソウルスターリングであり、モズカッチャンはフローラSの再現でしたが、こちらが思っていたよりも少し力があったよう。
アドマイヤミヤビやリスグラシューのハーツ勢はもっとスタミナが要求される流れが良かったですが、前者はジャスタウェイやワンアンドオンリーのように「“中距離で先行できる” = “アイリッシュダンスのスタミナを活かし切れる”」域まで完成していなかったということだし、後者はハーツながらアイリッシュダンスのスタミナというよりもMill Reefの斬れが武器になっている以上善戦ウーマンではないかという見立てのまま。
アドマイヤミヤビは(いや、ミヤビに限らず多くの上級ハーツ産駒に共通することなのだが)、ハーツクライのコピーのようなイメージで、ハーツクライがサンデーサイレンス産駒ながら父の斬れではなく、好配合の母アイリッシュダンスのスタミナを活かす競馬でGIを勝ち切ったように、やや前受け or 激流でこそ持ち味が活きるでしょう。そして今回はそれができる鞍上、そういう流れになり易いレースではあります。当然、阪神マイル<東京2400
そして晩成の父ながら、この時期に一線級でやれるというのは、レディスキッパーのクロフネ×デインヒルのパワーが、“ダート向き”だとか“スピード不足”という方向ではなく、“芝向きの筋肉の補完”、“体質強化”という良い方向に発現したということで。また、クロフネ×デインヒルでも、ライクザウインド(Alzao(Sir Ivor))でなければ、ズブいステイヤーかダート馬で終わっていたと思うんですよね。やはり最も日本向きなHaloと血統構成が似た血(Sir Ivor)を1つでも合わせることは重要だと感じます。
ソウルスターリングは中距離馬ではありますが、マイル向きのスピードも発現しているといった感じで、東京2400は問題ないでしょう。良馬場でこの好枠からレッドディザイア的な抜け出しが出来れば馬券圏内は外さない気がします。
リスグラシューは望田先生の“女ローズキングダム”という表現が秀逸で、アイリッシュダンスのスタミナを活かすというよりはMill Reefらしい斬れが武器ですよね。ハーツクライの特長が特長になっていないタイプなので善戦ウーマンというのも納得がいきます。だからこそこの鞍上によるもうひと押しがほしいんですよね。
紫部分は少し見誤っていたかな(-_-;)
逆にアドマイヤミヤビも前受けできているわけではありませんが、ハーツ産駒が“3歳早春のマイル重賞を勝ち切った”という事実が、本格化というか、既にGIで勝負できるということと等しいでしょう。
ディアドラは岩田騎手も期待通りの好騎乗で、まさにペプチドサプル2017になりました。こういう馬がアネモネを走っているんですから馬の個性を見抜くのは難しいです。
現実的に最も伏兵として可能性がありそうなのはディアドラではないでしょうか。ハーツにNureyevを合わせたNasrullahとHyperion配合で、1400やマイルで勝ち切れず位置取りも後方からになっていた...ということはつまるところ中距離馬なのでしょう。(昨年の矢車賞勝ち馬でオークス4着のペプチドサプルと被ります。彼女も窮屈そうにアネモネSを走っていたなぁ...)。もちろんローテは気になりますがこの鞍上で好枠を活かすことができれば楽しみです。
フローレスマジックはそういう流れを自ら作って、この走りは好走の部類に入ると思います。パワーが付き切るのを待ちましょう。
フローレスマジックは、ただでさえ晩成の配合(とはいえ完成の早さは牡<牝なのでアラジンよりは完成が早いと思う)で、さすがに2400よりは1800-2000がベターなタイプなので、オークスにしては緩い流れだった昨年(シンハライト)や2004年(シーザリオ)のような流れになってどうか。
アドマイヤミヤビやホウオウパフュームがビッシュ的に乗れないのはまだ本格化ではないということでしょう。先述したようにディアドラは完璧でした。
展望記事を総合すると、アドマイヤミヤビ×ミルコ騎手(先行?) /ディアドラ×岩田康成騎手(ヌーヴォレコルト的に内をしつこく) / ヤマカツグレース×横山典弘騎手(どこかで内に入れてスタミナ温存) / ホウオウパフューム×松岡正海騎手(ビッシュ的に) の走り、騎乗に注目ですね。
こちらも先述しましたが「タフな流れにならずハーツ勢の真骨頂がみられなかったなぁ」というのは事実なのですが、これも何度も書いていますが、“好位置を取り、残り600m400mをいかに早く走るか”という日本競馬の特徴は、日本の“血統が淘汰される基準”なのであり、そのことにより血統レベルは向上していくのです。だから単に「スローだスローだ」というところで思考が止まっていてはいけない。
(しかしその日本らしいレースを制したのはFrankel×スタセリタでした...)
緩い流れになればソウルスターリングだと思うんですがね~
逆にタフな流れでのアドマイヤミヤビやホウオウパフュームの真骨頂もみたいですよ。
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【参考】
『日本サラブレッド配合史―日本百名馬と世界の名血の探究』(笠雄二郎著)
望田潤氏のブログ 血は水よりも濃し 望田潤の競馬blog
栗山求氏の連載『血統SQUARE』http://www.miesque.com/motomu/works.html
『覚えておきたい 日本の牝系100』(平出貴昭著)
日曜の注目馬 ~
●何故か分かりませんがステイゴールドが頭をよぎり、ステイゴールドの2歳牡馬49頭の血統を全てチェックしました(笑)
●ミリッサのあのフワッとした走りは、どう考えてもHalo3×4に因るもので、毎種毎週この血の日本適性に感嘆します。前向きな気性はシンハリーズのForli6×5などFair Trialにの影響ですかね。どんな馬に完成するか。
●メイSは、1800で逃げたクラリティスカイの上がりが33.8というレース。ということはどちらかというとマイル寄りのパワー加速が求められたというべきで、とするならばFlower Bowlやアイリッシュダンスのスタミナが発現してきたナスノセイカンは対応できないのも仕方ないです...
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●優駿牝馬
ホウオウパフュームは何度も書いていますが、母マチカネタマカズラがNureyev≒Sadler's Wells3×3のハーツクライ産駒ですからNasrullahとHyperionに因る斬れで、持続戦になればなるほど良いタイプ。こういうタイプがジャスタウェイやヌーヴォレコルトやスワーヴリチャード(の共同通信杯)のように前受けできるようになると“本格化”なのですが、まだその域には達していないという点がどうか。
《展望》第78回優駿牝馬 ~ ヴゼットジョリー評まとめ / パワーの良好な発現 / いろんなハーツ解釈 / ペプチドサプル2017 - 4歳上500万下
ホウオウパフューム(Nureyev≒Sadler's Wells)やレッドコルディス(Outing Class)は母系のNasrullahとHyperion(=ナスペリオン)血脈がトニービンのHornbeamと脈絡して、ジャングルポケットやエアグルーヴやテレグノシスのようにトニービン直仔らしい重厚な斬れが武器の中距離馬だと解釈していますが、ハーツクライ産駒が本格化するときにはオッと思わせる先行があるもので、中距離で後方一辺倒の競馬しかできていないということは、まだGIだと掲示板止まりなのではないかと思うんです。昨年のビッシュ的に持続力を活かし切る騎乗ができれば楽しみはありますが。
そして牝馬の本格派中距離馬が輝けるGIというのが日本には存在せず(エリ女も京都だし...)、シュンドルボン的なキャラクターで終わってしまうんですよね。
逆にアドマイヤミヤビも前受けできているわけではありませんが、ハーツ産駒が“3歳早春のマイル重賞を勝ち切った”という事実が、本格化というか、既にGIで勝負できるということと等しいでしょう。
ブラックスビーチは母がFlower BowlとTudor Minstrelを内包するディープ産駒なので、厳しい流れになった時に驚くような頑張りをみせる可能性があります。大舞台でどういうパフォーマンスをみせるか。
昨年2着のチェッキーノは、全兄コディーノですから距離が持たないだろうということでフローラSでも疑っていた人が私の周りでも多くいました(8枠でしたし)。しかし距離は何ら問題なく、オークスもどういう流れになっていようとも1着シンハライト→2着チェッキーノは変わらなかっただろうという内容でした。それと一瞬同じキャラにみえたのがヤマカツグレースですが、やっぱりフローラは横山典弘騎手の2着だよな~ということで落ち着きました。
展望記事と総合すると、アドマイヤミヤビ×ミルコ騎手(先行?) /ディアドラ×岩田康成騎手(ヌーヴォレコルト的に内をしつこく) / ヤマカツグレース×横山典弘騎手(どこかで内に入れてスタミナ温存) / ホウオウパフューム×松岡正海騎手(ビッシュ的に) の走り、騎乗に注目ですね。
緩い流れになればソウルスターリングだと思うんですがね~
逆にタフな流れでのアドマイヤミヤビやホウオウパフュームの真骨頂もみたいですよ。
●京都11R下鴨Sはレトロロックvsヴォージュ、どちらもOPで活躍できる馬です。
ディーマジェスティやアドミラブルのようにディープ×Robertoのトップホースを輩出する可能性があると注目しているのがサムワントゥラブで、今日の京都9R、内回り2000mの鴨川特別ではその仔レトロロックが「らしい」ピッチ走法で連勝を飾りました。
ディープ×シンボリクリスエスというのはアドミラブルと同じ、ディープ×Roberto+Caerleonというのはディーマジェスティと同じ、そしてしっかりとBurghclere≒Aureoleも持ちます。
ナカヤマフェスタ×タニノギムレットのサンデーサイレンス3×4
サンデーサイレンスのクロスは、ナカヤマフェスタ×タニノギムレットという一見するとパワー&スタミナ寄りの配合でこそ活きるのではないか...という仮説を持っていて、ヴォージュもサンデーに似た黒鹿毛で字面の血統らしからぬしなやかさがあります。
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【参考】
『日本サラブレッド配合史―日本百名馬と世界の名血の探究』(笠雄二郎著)
望田潤氏のブログ 血は水よりも濃し 望田潤の競馬blog
栗山求氏の連載『血統SQUARE』http://www.miesque.com/motomu/works.html
『覚えておきたい 日本の牝系100』(平出貴昭著)
土曜の注目馬 ~ 本格化の最中のナスノセイカン / ホワイトマズル≒ウインドインハーヘア etc...
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メイS
以前から贔屓しているナスノセイカンとアングライフェンが出走しますが、前者は目黒記念&アル共マイスターとなる可能性を秘めています。
ナスノセイカンはハーツクライ×ホワイトマズル×タイトスポット(His Majesty×Lyphard)でLyphard4×4・5、母母ナスノフローラはHis Majesty=Graustark2×3というディアウィンクばりのすごい配合でどこからどう見ても晩成。陣営は「末脚を活かす競馬でどこまでやれるか」とコメントしていますが、「末脚を活かす競馬」しかできていないということは本格化手前であり、前受けしてこの血統のスタミナを活かす競馬ができるようになれば目黒記念やアル共くらいは持っていってもおかしくない馬でしょう。
最も強調したいのはナスノセイカンが「7・8番手でレースが出来ていた」ということ。Lyphard4×4・5のハーツクライ産駒が32秒台の末脚で差し切るというのがそもそも普通ではない(ジャスタウェイやマジックタイムの2歳時と同じ)ので、こういうレースができるようになってきたということは目黒記念とアル共制覇が現実味を帯びてきました。
金鯱賞と日経賞は着順よりも、前受けできるようになったということが注目すべき点です。ジャスタウェイの秋天もスワーヴリチャードの共同通信杯も、マジックタイムだって2歳時は追い込み一辺倒の競馬でしたね。東京1800でどういう競馬をみせるのか楽しみです。
アングライフェンはステイゴールドの満点配合ではありませんが、母レッドスレッドはパントレセレブル×シネマスコープですから成長力・底力がある配合で“函館記念くらいは勝てるのではないか”と書いてきました。京都記念はあわや馬券圏内という好走、金鯱賞も0.5秒差、また、大阪杯で厳しい流れを経験したことは更なる成長に繋がるでしょう。そして今回は鞍上が鞍上ですから陣営も手ごたえを感じているのでは...
Hyperion凝縮繁殖
平安Sは、超Hyperion凝縮繁殖タガノレヴェントンの仔タガノエスプレッソが2度目のダ1800でどこまでやれるか。アンタレスSは出遅れ癖が響きました。
兄タガノトネールはHyperion的なスタミナ・粘着力が発現し1400が忙しくなり1600の武蔵野Sで強豪相手に逃げ切りました(ベストパフォーマンス発揮が期待されたフェブラリーの前に安楽死...)。であるならば、エスプレッソだって6歳7歳で1800の芝OPや2000の重賞でやれる可能性はあると思うんですがね。
NasrullahとHyperion(ナスペリオン)
カーネーションCの有力2頭、アドマイヤローザとイストワールファムはオークスに出ていてもおかしくない素質馬ですが、配合にも共通点がありどちらも東京向きです。
アドマイヤローザはハービンジャーに、母アドマイヤテンバはクロフネ×アドマイヤグルーヴですからエアグルーヴのHornbeam≒パロクサイドのNasrullahとHyperionが脈絡。イストワールファムも母母ヒストリックスターはハープスターの母として著名でFairy King(=Sadler's Wells)とトニービン(Hornbeam)のNasrullahとHyperionが、父ローエングリンのSadler's WellsとMill Reefに脈絡し、どちらも東京向きの重厚な斬れが発現しています。
ムーンザムーンがどういう走りをしているか思い出せないし、映像もみるのも面倒なので分かりませんが(見ろ)、彼女もローエングリンにテスコボーイというNasrullahとHyperion血脈を持ちますね。
しかし、ハーツクライは
- ハローユニコーン(Nureyev、Mill Reef)
- ホウオウパフューム(Nureyev≒Sadler's Wells)
- レッドコルディス(Outing Class)
- リスグラシュー(Mill Reef)
- マナローラ(Nureyev)
と、アドマイヤミヤビ以外の5/6がNasrullahとHyperion血脈を保有。
また、ハービンジャーも4頭いますが
- モズカッチャン(Nureyev、Hornbeam)
- ディアドラ(Nureyev)
ヤマカツグレースはデインヒル≒Ameriflora3×3でちょっと例外。モーヴサファイアも勢いがありすぎる牝系ですから、やっぱり血統。
《展望》第78回優駿牝馬 ~ ヴゼットジョリー評まとめ / パワーの良好な発現 / いろんなハーツ解釈 / ペプチドサプル2017 - 4歳上500万下
★参考
ホワイトマズル≒ウインドインハーヘア
東京5R(芝2000)の有力リフトトゥヘヴンは、ホワイトマズル×ディープインパクトですからダンシングブレーヴ≒Alzao2×4とEla-Mana-Mou≒Burghclere3×4(ということはホワイトマズル≒ウインドインハーヘア1×3ともいえる)
その逆の配合である“ディープインパクト×ホワイトマズル”はスマートレイアーやミッキーグローリーやマスクオフを輩出している配合で、スマートレイアーをみれば分かるように若いときはAlzao≒ダンシングブレーヴ的な斬れをみせるのですが、だんだんとBurghclere≒Ela-Mana-Mouのスタミナ・粘着力が発現してきて今では牡馬相手の中長距離重賞で互角に戦えるまでになりました(これはディープインパクト×キングカメハメハのデニムアンドルビーが3歳時はAlzao≒ラストタイクーンの影響でJCでキレッキレだったのに、いつしかフェアリードールのHyperionが発現して阪神大賞典や宝塚記念で好走するようになった...という事象と同質)
リフトトゥヘヴンはマズル×ディープの牡、どんな馬に育つのか興味深いです。
ミッキーグローリー(母マズル×トニービンというのも良い。5歳、長期休養中)
レッドアフレイム(母マズル×シルバージョイ、6歳で2勝目を挙げる)
マスクオフ(初年度産駒、間違いなくOP級だった。)
ヤマニンペダラーダ(3歳!)
トゥモローワールド(中央3戦、3着が最高)
母スカーレットドレス(3歳、全兄レッドアフレイム)
母メリッサ(2歳)
母ヤマニンエマイユ(2歳)
母スノースタイル(1歳)
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【参考】
『日本サラブレッド配合史―日本百名馬と世界の名血の探究』(笠雄二郎著)
望田潤氏のブログ 血は水よりも濃し 望田潤の競馬blog
栗山求氏の連載『血統SQUARE』http://www.miesque.com/motomu/works.html
『覚えておきたい 日本の牝系100』(平出貴昭著)
《展望》第78回優駿牝馬 ~ ヴゼットジョリー評まとめ / パワーの良好な発現 / いろんなハーツ解釈 / ペプチドサプル2017
3頭の中で最も好みなのはヴゼットジョリーで、新潟2歳の頃は「Haloも感じさせる」と書きましたが(もちろん影響がゼロではない)、改めてレースを見てみるとMill Reefや母母フェンジー(Saumarez×Lyphard)の影響が大きい重厚な持続斬れにうつりました。今年の新潟2歳のレベルは高いとは言えないと思いますが、決して新潟マイルのヨーイドン向きではない馬が楽勝したということをむしろ評価したい。しかし和田騎手乗り替わりで外枠の持続差し...というとアヴェンチュラの4着が思い出されます(-_-;)
一方◎ヴゼットジョリーはHaloの影響か気性面の課題は少ない。欧血が凝縮された母母フェンジーの影響で重厚な斬れ方をする馬で、新潟2歳のメンバーレベルは高いとは言えないのだが、こんな斬れ方をする ー ハープスターやロードクエストやミュゼスルタンやモンストールらとは違うタイプ 馬が2歳時のマイル重賞を楽勝してしまったという事実は軽いものではない。昨年の牝馬3冠路線で、母のスタミナで持続戦になると必ず突っ込んできたアースライズ(オークス4着/秋華賞5着)のようなキャラになるのではないかと考えているが、良い意味で期待を裏切ってほしい。その可能性を感じる新潟2歳だった。
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ベルルミエールのファルコンS4着→NZT3着の粘り腰が思い出され、いやそれならば阪神マイルで◎は違うだろうと葛藤しながらも、この血への気持ちが優りました(笑)
距離が短い中で、馬群に突っ込むという競馬を経験、非常に良い負け方だったと思います。かなり重厚な斬れ方ですから距離を伸ばしたオークスで◎です(やや前付け希望)。
《回顧》阪神JF/香港ヴァーズ ~ サトノクラウン、ヴゼットジョリー...Welsh Pagentに惹き付けられていた。残るはアンビシャス。 - 4歳上500万下
そしてこの世代最も贔屓しているヴゼットジョリーは、何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も書いているように、脚長で重厚斬れをする中距離馬で、母母フェンジーの持続力≒スタミナ(HyperionとLady Juror)を中距離でこそ活かすタイプとみています(半姉ベルルミエールはスピードが発現しているので、フェンジーの持続力≒スタミナを短距離で活かしている)。ですから、距離延長のオークスの激流でアースライズ的ローデット的好走をするだろうという希望的観測があります。ここも一ケタ着順、掲示板乗るか乗らないか、くらいの走りをしてもらってオークスに万全の状態で出てきてもらいたいです。“牝馬のユーイチ”が主戦ですし。
体調が優れないというなら仕方ないですが、ヴゼットジョリーがオークスに出走しないというのは残念です。成長力がある配合ですから、秋以降に期待。
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出走予定馬を見た感じは、やはりソウルスターリング・アドマイヤミヤビ・リスグラシューの争いかと感じました。
アドマイヤミヤビは(いや、ミヤビに限らず多くの上級ハーツ産駒に共通することなのだが)、ハーツクライのコピーのようなイメージで、ハーツクライがサンデーサイレンス産駒ながら父の斬れではなく、好配合の母アイリッシュダンスのスタミナを活かす競馬でGIを勝ち切ったように、やや前受け or 激流でこそ持ち味が活きるでしょう。そして今回はそれができる鞍上、そういう流れになり易いレースではあります。当然、阪神マイル<東京2400
そして晩成の父ながら、この時期に一線級でやれるというのは、レディスキッパーのクロフネ×デインヒルのパワーが、“ダート向き”だとか“スピード不足”という方向ではなく、“芝向きの筋肉の補完”、“体質強化”という良い方向に発現したということで。また、クロフネ×デインヒルでも、ライクザウインド(Alzao(Sir Ivor))でなければ、ズブいステイヤーかダート馬で終わっていたと思うんですよね。やはり最も日本向きなHaloと血統構成が似た血(Sir Ivor)を1つでも合わせることは重要だと感じます。
ソウルスターリングは中距離馬ではありますが、マイル向きのスピードも発現しているといった感じで、東京2400は問題ないでしょう。良馬場でこの好枠からレッドディザイア的な抜け出しが出来れば馬券圏内は外さない気がします。
リスグラシューは望田先生の“女ローズキングダム”という表現が秀逸で、アイリッシュダンスのスタミナを活かすというよりはMill Reefらしい斬れが武器ですよね。ハーツクライの特長が特長になっていないタイプなので善戦ウーマンというのも納得がいきます。だからこそこの鞍上によるもうひと押しがほしいんですよね。
ホウオウパフュームは何度も書いていますが、母マチカネタマカズラがNureyev≒Sadler's Wells3×3のハーツクライ産駒ですからNasrullahとHyperionに因る斬れで、持続戦になればなるほど良いタイプ。こういうタイプがジャスタウェイやヌーヴォレコルトやスワーヴリチャード(の共同通信杯)のように前受けできるようになると“本格化”なのですが、まだその域には達していないという点がどうか。そしてこういう牝馬の才能を活かせる牝馬限定GIがないが悲しいところ(雨のエリ女とかになってしまう)。やはり愛知杯ですか(^^;)
ブラックスビーチはKingmamboのパワーとリーチフォーザムーン(Pulpit×Chief's Crown)のナスキロ的柔らかさが絶妙に発現していて、さらにKingmambo内包のFlower Bowl、母系の奥にもTudor Minstrelを内包しているというのがポイントで、ディープ産駒でも単なる“斬れ”とか“末脚が魅力”というだけではなくもう一つ奥の引き出しがある馬でしょう。
フローレスマジックは、ただでさえ晩成の配合(とはいえ完成の早さは牡<牝なのでアラジンよりは完成が早いと思う)で、さすがに2400よりは1800-2000がベターなタイプなので、オークスにしては緩い流れだった昨年(シンハライト)や2004年(シーザリオ)のような流れになってどうか。
ハローユニコーンは、ハーツクライでこういう条件替わりが楽しみという気持ちも分かるのですが、この血統は全兄ジョルジュサンクもそうなのですが、ラトロ肩・Ribot肩が伝わりやすいようで、全体的にちょっと中距離の大舞台でのしなやかさや柔軟性に欠けるところがあるかなと思います(これはモーヴサファイアにもいえる)。
ハーツの伏兵ならば、前走内容からも期待を集めるでしょうがレッドコルディスには注目ですね。
レッドコルディスは、叔父にウォーニング、コマンダーインチーフ、4代母が英オークス馬Nobless、しかも配合された種牡馬もRaise a Native、Roberto、Danzig、Smart Strikeと一流で、全兄ヴレから注目している血統。でもやっぱり母はRobertoが入ってMr.Prospector≒Slightly Dangerous2×2(Raise a NativeとGold Digger≒Bramaleaが共通)なのでパワーを感じる走りで、もちろん前走も負けて強しでしたが東京2000(しかも8枠)というのは厳しいかな。それでも走りには注目したい馬です。
Robertoが入るというのが良くも悪くも気になるのですが、ストロングリターン(シンボリクリスエス×Smart Strike)もRoberto+Smart Strike(母コートアウトが優秀なだけか...)。ハーツ+NasrullahとHyperion血脈(Outing Class)でもありますから、東京2400での走りは気になりますね。
現実的に最も伏兵として可能性がありそうなのはディアドラではないでしょうか。ハーツにNureyevを合わせたNasrullahとHyperion配合で、1400やマイルで勝ち切れず位置取りも後方からになっていた...ということはつまるところ中距離馬なのでしょう。(昨年の矢車賞勝ち馬でオークス4着のペプチドサプルと被ります。彼女も窮屈そうにアネモネSを走っていたなぁ...)。もちろんローテは気になりますがこの鞍上で好枠を活かすことができれば楽しみです。
しかし、ハーツクライは
- ハローユニコーン(Nureyev、Mill Reef)
- ホウオウパフューム(Nureyev≒Sadler's Wells)
- レッドコルディス(Outing Class)
- リスグラシュー(Mill Reef)
- マナローラ(Nureyev)
と、アドマイヤミヤビ以外の5/6がNasrullahとHyperion血脈を保有。
また、ハービンジャーも4頭いますが
- モズカッチャン(Nureyev、Hornbeam)
- ディアドラ(Nureyev)
ヤマカツグレースはデインヒル≒Ameriflora3×3でちょっと例外。モーヴサファイアも勢いがありすぎる牝系ですから、やっぱり血統。
ルメール騎手の狂いのない精密な騎乗、デムーロ騎手の大胆ながら持ち味を活かし切る騎乗、それが可能な2頭の枠ではあります。そこに武豊騎手、そしてディアドラ×岩田康成騎手、そんなイメージ。なかなか面白いレースになりそう。
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【参考】
『日本サラブレッド配合史―日本百名馬と世界の名血の探究』(笠雄二郎著)
望田潤氏のブログ 血は水よりも濃し 望田潤の競馬blog
栗山求氏の連載『血統SQUARE』http://www.miesque.com/motomu/works.html
『覚えておきたい 日本の牝系100』(平出貴昭著)
デンコウアンジュの好走
阪神牝馬Sは、まぁミッキークイーンでしょうがデンコウアンジュがどこまでやれるか注目しています。
アルテミスSの殿一気は、中距離馬の斬れで、オークスで期待をかけていましたが不利を受け9着。スムーズなら掲示板はあったでしょう。桜花賞は内へ突っ込んで行き場を失いましたし、秋華賞は内回りで出遅れ、最悪なスローペース、その中で上がり33秒5を使って大外から追い込んできたレース振りは評価できます。そしてエリ女もインコースの先行決着...
他力本願なレースになってしまいますがローズSではシンハライト、クロコスミア、カイザーバルに次ぐ4着。“大箱マイルのスロー”という条件はアルテミスSや桜花賞と同じで、スムーズならば掲示板くらいはあっても驚けません。
ナスキロ的な斬れですから、黄色いメンコも影響してマルセリーナに似てるな、と思うこともあって、ヴィクトリアマイルで内枠でも引けば...とすら思っています。
彼女の欧州ナスキロ的な重厚な斬れ、つまり、ジェンティルドンナやエイジンアンウインズではなく、ウオッカやマルセリーナやヒカルアマランサスやニシノブルームーンの斬れと同質ですからVMがドンピシャという感がありました。今日は馬場も向いた感がありますが、自分の考察が正しかったと証明される走りをみせてくれました。
Caerleon×Darshaanのマリエンバードの現役時代は知りませんが、デンコウアンジュの斬れをみれば、マリエンバードの走りも想像することができます。この辺りも競走馬考察の面白いところです。
昔なら、馬券を買ったり、ほれ見たことかと第三者に誇示したりしていましたが、もう全て自分の中で完結して納得というようになりました(血統が、“アグネスタキオン×A.P.Indy=ヒカルアマランサス”から、メイショウサムソン×マリエンバードに変わっただけで、本質は変わっておらず同じことの繰り返しですから)。
でもこれは最近の若者のSNS投稿と同じですよね。他者承認がないと自我を確立できないようでは真の幸福にはたどり着けない...と。一昔前ならば、今のように他者との距離が近すぎず、夜なんかもSNSで繋がらないから必然的に孤独を経験できたはずで、それが自我の確立に繋がっていったのだろうなぁ(何のブログだ)。
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【参考】
『日本サラブレッド配合史―日本百名馬と世界の名血の探究』(笠雄二郎著)
望田潤氏のブログ 血は水よりも濃し 望田潤の競馬blog
栗山求氏の連載『血統SQUARE』http://www.miesque.com/motomu/works.html
『覚えておきたい 日本の牝系100』(平出貴昭著)