展望と回顧 ~ 京成杯
近藤英子氏の馬名のセンスは大好きですが、イェッツトはなんだろう。タイムフライヤーやディーマジェスティのように、素人目にもハッキリとパワーの発現が確認できればよいのだけれど、トニービンをSadler's Wells≒Nureyev、さらにキンカメ内包のHornbeamで増幅したようなドゥラメンテ的な皮膚の薄さともとれる。
それでも、中山1800という器用さが求めらえる屈指の舞台でスッと先行でき、抜け出すことができたというのは、トニービン的というよりSadler's Wells≒Nureyev的バレークイーン的アンライバルド的コディーノ的、つまりFairy Trial的な小脚使いと見るべきなのだろうか。バレークイーン+Robertoという観点でみればヴィクトリーでもある。ならばコースは良い。
ダブルシャープのクローバー賞、タワーオブロンドンを内から差し返したキタサンブラック2016春天的勝ち方は強い勝ち方だ。母系の奥に強力な硬派な米血パワーが凝縮されていて、そこにKris≒Busted1×4のBehkaraを母に持つベーカバドが配され、母メジロルーシュバーのアグネスレディーやGraustarkのスタミナを掘り上げたようなイメージがある。
ジリ脚の中距離馬が外回りのマイル戦で善戦している、という解釈ができるサウジアラビアRCと朝日杯の敗戦で、ここはメンバー的にも期待できるのではないか。
余談になるが、例えばタニノギムレットはブライアンズタイム産駒ながらRobertoというよりもGraustark3×4というよりも、母タニノクリスタルのSicambreの斬れが引き出されていた、そしてウオッカもRobertoを持ちGraustark3×4のタニノギムレットを父とし、母系にトウショウボーイが入りながらも重厚な粘着質な馬ではなくRivermanの影響で美しい斬れを武器とする馬だった、エイシンフラッシュも血統表の中に僅かに眠るMr.Prospector≒Stay at Homeのスピードが発現し、キタサンブラックも明らかにBurghclereのスタミナが発現表現されている。
そういうことなのだ。
東大生だから優秀とは限らないように、ハーツクライだから中山はダメだ、ではなくって、それではタイムフライヤーとフラットレーが同じタイプの馬に見えるというのか。アットザシーサイドとハタノヴァンクールが同じタイプの馬に見えるというのか。私は先ほどタニノギムレットの件で述べたような、本質論を議論したいのだ。
私だっても競馬に興味を持ち始めたときは、ハーツクライだから中山はダメだ、といったような画一的な意見に感心していたものだが、それは初心者だったからだ。“血統”専門家なり予想家を名乗る者に、そんな画一的な意見は求めていない。このレースは“○○系”が強い、ではないのだ。“○○系”らしさが発現しているかどうか、“○○系”ではないけれど、“○○系”らしさがある馬はどれか、という進論にしなければ意味がない。
しかし商業的に画一論の方が便利であるということは理解している。競馬だけではない、世の中に蔓延する画一論は嫌なものだ。自由というのは苦しい。
【回顧】