アルテミスS考
ほぼ同じことを以前も書いたことがあるのだが、ディープインパクト産駒でもジェンティルドンナやハープスターやディーマジェスティは、母の硬派なパワーを父の柔軟性でうまく中和したような配合イメージだ(もちろん、細かい欧血の脈絡などもある)。一方、ヴィブロスやシンハライトなどはHaloのクロスが印象的で、同じ性質の父とを組み合わせている(≒両親の再生産)というイメージがする。
こういう視点でみるならば、アルテミスSのラテュロスとトーセンブレスは前者である。ただ、ラテュロスは米血過多(にしては柔軟性がありさすがディープと感心するが)で、トーセンブレスもクラシックまで突き抜けるほどの馬にはみえない。
付論になるが、トーセンブレスの小刻みなピッチ走法は、母の米的なパワーの影響もあるだろうが、ウインドインハーヘアとFairy King(ファルブラヴの父)≒Nureyev≒Sadler's Wellsらが多く内包するFair Trial(もっといえばLady Juror)の影響もあるはずで、これはスワンSのレッツゴードンキ(Nureyev≒Number4×4)のピッチ走法と血統的本質は同じなのである。だから、レッツゴードンキがスプリンターズSでのすごい末脚をみると、ハープスターのそれを思い出し、そしてそれは、トーセンブレスの新馬でのそれと同じことである。もっといえばアンライバルドの皐月のひと捲りも、スティーグリッツの九十九里特別のひと捲りも、牡馬だからスタミナが牝馬以上に発現して長いところでやっているだけで、本質は同じである。
ダノングレースはHaloのクロスこそないものの、Miswakiを抱えるからHaloとの親和性は高い。母母Holy MoonがNijinsky3×3で、Flaming Page≒Tom Fool4・6・6×4でもある。それ以上にディープとの配合で特筆すべきは母父OratorioのFlower Bowl≒Aureole4×4であろう。これはBurghcreleと強く脈絡する。牡馬の方が大成しやすい配合だ。話を母母Holy Moonに戻すと、彼女はTom Foolを強く増幅しているから、サンデー系ならマンハッタンカフェと間違いなく合うだろう。
ウラヌスチャームはNorthern Dancerだらけのルーラーシップに非Northern Dancerのアメジストリングという配合。母は、父フジキセキがMillicent、母インフェイヴァーがSecretariat≒Sir Gaylord2×3とナスキロ血脈が多く、実馬も胴長でとてもマイラーにはみえない。素質でどこまで走れるかだろう。道悪は得意そうだ。
トロワゼトワルは良い馬だと思う。セコンドピアットの初仔だ。ロードカナロアにセコンドピアットだから、フットワークはナスキロ的に柔軟で美しい。Mill ReefにSecretariat=Syrian SeaのロードカナロアにCozzeneが入るから当然だ。しかしどうしてもこういうフットワークが好きなのだ(Cozzeneらしいフットワークといえば、ディープ×ガヴィオラのコメットシーカーが私の中の典型だが、日曜東京では全弟ギャラッドがデビューするからそのフットワークに注目されたい)。そういう外形的な好みにプラスして、母母エービーヌードル(Be My Guestなど)→母父ハーツクライ(アイリッシュダンス)→ロードカナロア(Flower Bowl)とHyperionとFair Trial(Lady Juror)が継続して交配されているという配合的な好みもある。現3歳世代はヴゼットジョリーにこういう奥深さを感じていたが今年同対象がトロワゼトワルになりそうだ。
ラッキーライラックは、オルフェーヴルにライラックスアンドレース、というよりオルフェーヴルにプリンセスオリビアといった方がよいだろうが、このHyperionとFair Trial(Lady Juror)とDonatelloの塊はオルフェーヴル、というよりステイゴールド×オリエンタルアートにとってプラスに作用するだろう。馬体重も然り、晩成だろうが、しっかりとステラマドリッドの米血パワーも伝わっているようなフットワークも良い。
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天皇賞(秋)といえば、やはり望田先生の以下の論考(引用している)に限りますが、泥んこならばシャケトラが楽しみだ。