中山芝2200mは外回りコースを使用するため、3角が非常に緩く、内回りのように3角~4角でペースが緩まないので捲りが決まりにくく、逆に言うと逃げ先行の流れ込みが決まりやすいイメージがあります。
思い出すのは、AJCCでゴールドシップが捲れなかったこと、セントライト記念のヤマニンエルブの大逃げ(2着)、古くはツインターボもそう。
また、勾配それほどありませんが、3角が緩いのは京都外回りと同じで、3角~4角にかけて「捲る」のではなく、ダラーンと進出する脚、スムーズにポジションを上げることが求められます。
Princely Giftとノーザンテースト
そういう競馬が得意な血がPrincely Giftでしょう。望田先生は「前脚がよく伸びる」と言われています。
Princely Giftは柔らかい血ですから、それだけではGIIで勝ち負けできる馬にはなれずに、パワーを注入して柔らかさと頑強さを上手く中和する必要があります。そこでパワー注入にベストなのがノーザンテースト。
ここら辺のことは望田先生が超詳しく分かりやすく完璧に解説されています。
ここまで読んで勘付いている方は多いと思いますが、ノーザンテースト×Princely Giftという組み合わせで日本に根付いている名牝系があります。それがダイナサッシュ。そこにディクタスを配されたゴールデンサッシュが特に影響力が強いですね。
近5年の中山2200重賞(AJCC、セントライト記念、オールカマー)で、馬券になったゴールデンサッシュ=サッカーボーイ=ベルベットサッシュ持ち
を列挙してみます。(太字はステイゴールド産駒)
・ショウナンパンドラ
・ジュンツバサ
・クリールカイザー
7頭中3頭がステイゴールド産駒以外というのが注目ですね。
また、ゴールデンサッシュ=サッカーボーイ=ベルベットサッシュ以外でノーザンテーストとPrincely Giftを両方持っていて中山2200重賞で馬券になった馬は、
・キタサンブラック
・ミトラ
らがいます。
トニービン持ちの種牡馬
もう1つ中山2200重賞で注目したいのが、「トニービン持ち種牡馬」です。特にAJCCに限ると、以下の馬たちが好走し、単に「トニービン持ち」の馬は9年連続で馬券になっています。
・エアソミュール
・ヴェルデグリーン
・ブラックアルタイル
・イントレット
昨年のAJCCとセントライト記念が異常なスローペースでしたが、本来は3角からダラーンとした脚の使い続ける戦いになりやすいので持続力が求められます。特にヴェルデグリーンが勝利した2014年は馬券になった3頭すべてGrey Sovereign持ちでした。
ちなみにノーザンテースト持ちの馬も9年連続で馬券になっています。ゴールデンサッシュの影響が大にしても見事です。AJCCで高齢馬の成績が良いこととも関連してるでしょうし、こういう晩成な中長距離血統は好きですね。
3血脈のびっくりデータ
ここまでPrincely Giftとノーザンテーストとトニービンのことを書いてきましたが、自分でもびっくりのデータを発見。
過去5年(オールカマーとセントライト記念は新潟開催だった2014年を除く)の中山2200重賞の勝ち馬13頭中12頭が、Princely Gift、ノーザンテースト、トニービンの3血統のうち、2つを保有していました。
今年のAJCCでその条件に該当するのは、
・ショウナンバッハ(3/4弟キタサンブラック)→Princely Gift、ノーザンテースト
・マイネルメダリスト→Princely Gift、ノーザンテースト
ショウナンバッハは父ステイゴールドですが、母シュガーハートもPrincely Giftとノーザンテーストを持っています。3/4弟キタサンブラックはLyphardのクロスでしたが、こちらはキタサンブラックよりも少しノーザンテーストのクロスらしくピッチ寄りの走りをするので、キタサンブラックと同じ小回りを上手く立ち回れる+東京の上がり勝負でも対応できますね。ただ弟を見ても分かるように、スピードや機動力が魅力の血統なので、弟のセントライト記念の要になれば別ですが、本来中山2200に向く血統ではないのかなぁ~という気がします。と、書いたけれどもマツリダゴッホという馬がいたな...
フラガラッハはトニービン×Nureyevの母スキッフルに、父が母父ノーザンテーストのデュランダルなのでHyperionが強い。一昨年のAJCCが5着、昨年が6着、こういうHyperionの強い馬はハーツクライ→ワンアンドオンリーの親子のように後ろからでも結果を残せる場合が多いですが、やっぱり本領発揮は前受けした時だろうし、横山典弘騎手で逃げた日経賞も好内容。とはいえ、9歳でさすがに厳しいでしょうか。
マイネルディーンは母ムービースクリーン(父ナイキアディライトでマイネルディアベルを産んだ優秀な母馬!)がHornbeam3×4で、なんと母母がディクタス×ノーザンテーストですからゴールデンサッシュと3/4同血(まぁゴールデンサッシュで重要な役割を果たしているPrincely Giftが抜けてはいるんですが)、Hornbeamのクロスにディクタスなので、なが~い脚を使えるのが長所、しかし日本は直線の長いコースでなが~い脚を求められるレースになりにくい国ですから、必然的に小回りに良績が集中、それでも捲り上等!というタイプでもありませんから、この中山2200という中途半端な条件はベストに近く、準OPのグレイトフルSでの勝ちっぷりは見事。OP昇級後は、
昨年のAJCC→ドスロー
京都記念→ドスロー
新潟大賞典→ドスロー
七夕賞→詰まる
中山金杯→ドスロー
と、ほとんどが物理的に不可能なレースに遭遇してしまっており、上がり32秒台も2回計測するほど。中山最終週という点や、先週は前意識が強すぎて1番人気を飛ばしてしまった(愛知杯・シュンドルボン)大野騎手への乗り替わりも好感が持て、1番ヴェルデグリーンやサクラアルディートに近い馬はこの馬なのではないかと思います。
マイネルメダリストは、ステイゴールドに、母母がFharos=Fairway4×4、母父がGraustarkとNunbered Accoundの最強パワー&スタミナ血脈アサティスですから、スタミナ至上主義な馬で、ブリンカーなどで走る気が戻って強気な騎乗をすれば前走くらいはやれる馬であります。ここもそういう競馬でしょうから、無くはないかも。
細かい話をすると、今年は早めに動いて驚異的な粘り腰を使えるクランモンタナとマイネルメダリストがいますし、日曜中山最終の件もあるので、さすがに昨年のAJCC、セントライト記念のような単純な前残りにはならないと思うし、ならないでほしいです。
サクラアルディートも4角手前から仕掛けての粘り込み、そういう競馬をしたい馬がそういう競馬をすれば、そういう結果になるでしょうから、スタンスとしては米血<欧血でいきたいです。
【参考】
日本サラブレッド配合史―日本百名馬と世界の名血の探究(笠雄二郎著)