コラムを入稿したのですが反映されないのでこちらに上げます。
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【神戸新聞杯】
●取りこぼしは考えにくい
配合的な点からサトノダイヤモンドについて簡単に説明すると、Halo≒Sir Ivor3・5×5・4でサザンヘイローを通じるHaloのクロスはマカヒキと同じ。母のNorthern Dancer4×4やLureやLogicalといった血からパワーを取り込み、父の瞬発力の根源であるHalo≒Sir Ivorを継続させた、マカヒキやシンハライトのような「父再生産型」の配合系。完歩も大きいが、母のパワーも発現しているからやや地面に叩きつけるような走法をしている。Halo≒Sir Ivorを継続しているから完歩は大きくても内回りもドゥラメンテやリオンディーズのようなあからさまなストライド走法と比較すればマイナスにならないから皐月賞でも好走できた。その皐月賞はきさらぎ賞から直行というローテーションに加え、池江調教師は先行有利な馬場状態だったため、ルメール騎手に「好位の5~7番手くらいの先頭から5馬身差くらいを追走してくれ」と指示を出したという。(*1)向こう正面でルメール騎手が追っつけ、ハイペースに付いていったのは、その「先頭から5馬身差くらいを追走してくれ」という指示を守っていたから。これを抜きにしても直線での不利がなければ2着マカヒキとの差はさらに縮まっていたであろう強い負け方。ダービーも外にヨレなければ勝っていた可能性があった。ディープインパクトのスタミナ源であるBurghclereを増幅していないから極端な持続戦になった場合の怖さはあるものの、ダービーよりもスタミナが問われた皐月賞であの内容だからそこまで気にする必要もなさそうだ。取りこぼしは考えにくい。
●時とともに距離適性は如実に表れる
エアスピネルはこの牝系らしい小刻みなピッチ走法ながら、武器はコーナリングだろう。だから皐月賞なら勝負になると思っていたのだが、あの激流をみて「ラスト」は垂れるだろうと思ったものだ。しかし3着サトノダイヤモンドと差のない4着。ダービーはピッチ走法だし体系的にも2400mは長いと思っていたが、いくらスローペースだったとはいえ、見せ場十分の4着は立派といえる。しかし、パワーや距離適性というのは時とともに発現してくるものだから、ここは夏を超えて距離適性が如実に表れてくると考える。神戸新聞杯での「サトノダイヤモンド1着」と、「エアスピネル2着」ならば前者の方が可能性が高いとみる。
ダービー9着のレッドエルディストは、マイニングとNever bendを通じるLa Troiennneクロスで肩が立ったピッチ走法だが、Darshaanやクリスタルパレスといった仏血が多い持続斬れで、阪神外回りはぴったりの印象。外差しが決まりやすい神戸新聞杯のイメージにも最も合致している。
皐月賞7着のナムラシングンは、Machiavellian=Coup de Genie3×3という全きょうだいクロスがおしゃれな配合だがRibotをクロスしているからか捲りが身上のタイプで、外回りで末脚を伸ばす競馬は向いていない。
ミッキーロケットはNureyev4×4、Mr.Prospector3×5、Nijinsky6×4、ラストタイクーン≒Caerleon3×3などがある相似配合馬で、パワーを引き出す仕掛けもあるが、春は緩さが残っていたから坂のない京都で良く走った。外回り向きではあるので無視できないが、阪神のタフな芝と急坂はマイナス。
イモータルは、緩緩体質の中瞬発力勝負で好走したサウジアラビラロイヤルカップで素質の片鱗を見せたが、クラシック出走馬の中でも成長曲線が緩く(特に精神面)、ダービーの瞬発力勝負では成す術がなかった。素質はこの中でもトップクラスだし、少なくともダービー以上の上がり勝負になることはないだろうから条件は好転している。
阿寒湖特別を制したカフジプリンスは、Seeking the Goldの影響か掻き込んで走るので洋芝小回りがベスト。前走は不利と流れが不向きで参考外だが、阪神外回りで積極的には推せい。とはいえ、やはりアイリッシュダンス(ハーツクライの母)のスタミナは伝わっているようなので無視まではできない。
プリンシパルS2着で惜しくもダービー出走を逃したマイネルラフレシアは、母のGraustark5×4などパワーを増幅する仕掛けもありますが、Nureyev≒Sadler’s Wells3×5とトニービンがナスペリオン(NasrullahとHyperion)で脈絡するので、トニービン的・ジャングルポケット的な斬れを発現させています。京都での瞬発力勝負だった白百合Sは参考外、阪神外回りは相当合っているはず。
【オールカマー】
ゴールドアクターの天皇賞は仕方のない負けだし、宝塚記念を回避して立て直したのがたのが功を奏したようで、状態は良さそうだ。ジワッと進出できる中山外回りも合っていそうだ。
マリアライトも欲をいえば、内回りでゴリッとひと捲りという競馬の方が合っていそうだが、宝塚記念は道悪やデキの良さだけでは片づけられない。
それでも、この2頭に先週のディーマジェスティやサトノダイヤモンドほどの安心感を覚えないのは、中山外回りというコースのせいでしょう。
セントライト記念の考察でも述べましたが、おむすび型の中山外回りは、3角~4角入り口までダラーンと直線が続くから捲りにくい→逃げが決まりやすい(古くはツインターボ、近年ではヤマニンエルブやクリールカイザー)。この条件に合致するのは、(既にAJCCでゴールドシップ撃破の金星を挙げてしまっているが)クリールカイザーと、カレンミロティックだ。どちらも抜群にコーナリングが巧く捲りを身上としているわけではないし、とはいっても末脚に魅力があるタイプでもないから、中途半端な条件である中山外回りが合っているというわけだ。まずは「逃げが決まりやすい」という点から、この2頭を推したい。
また、中山は向こう正面から3角までに約2mの下りとなっており、外回りは3角が急でないためその勢いのまま4角を迎えることになる。この惰性の付け方は京都外回りと似ており、この条件が得意な血がPrincely Giftだ。ステイゴールド産駒のオールカマー、セントライト記念、菊花賞の成績をみれば一目瞭然だ。そして、昨年圧勝したショウナンパンドラやクリールカイザーもPrincely Giftの影響を受けている(ショウナンパンドラは母がステイゴールドの半妹)。他ではPrincely Gift直系のサクラバクシンオーが代表的であり、キタサンブラックの京都適性もまさしくPrincely Giftに因るものだ。
この「3角まで下ってダラーンと4角へ」というコース形態上から推したいのはショウナンバッハ。既に今年のAJCCで3着となり結果を残しているが、ステイゴールド×サクラバクシンオーだからPrincely Gift5×5、母のVictoria Park5×4の影響かピッチ走法なのだが体質的にはPrincely Giftが出ているようだ。内枠で戸崎騎手なら絶妙に差し込んで来るだろう。
ここまで述べてきたことを関係なしに推したいのは、サトノノブレス。今年に入り重賞2勝、鳴尾記念の「もうGIIIなら格が違います」という勝ちっぷりは、トニービン的なものだし、同じくトニービンを持つ厩舎の同級生でラブリーデイ的な成長を感じさせた。外目を早めに進出しての8着という宝塚記念の内容は濃いし、ひょっとするとこの秋覚醒がみられるかもしれないと密かに注目している1頭だ。
【まとめ】
・神戸新聞杯は、サトノダイヤモンドが崩れることは考えにくい。相手で注目したいのはレッドエルディストとマイネルラフレシア
・オールカマーは、2強は強いがサトノノブレスの成長度に期待し、中山外回り適性が高い(高そうな)クリールカイザー、ショウナンバッハ、カレンミロティックにも警戒したい。
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【参考】
『日本サラブレッド配合史―日本百名馬と世界の名血の探究』(笠雄二郎著)
望田潤さんのブログ http://blog.goo.ne.jp/nas-quillo
栗山求さんの連載「血統SQUARE」http://www.miesque.com/motomu/works.html
『覚えておきたい 日本の牝系100』(平出貴昭著)