4歳上500万下

血統好きが大学生のころ書いていたブログ(今でもたまに更新)

今週の3歳戦短感

久しぶりに少し時間を掛けて競馬を考えていた。

あすなろ賞を逃げ切ったオルフェーヴル産駒エポカドーロは好きな配合だ。戦法を見てもフォーティナイナーの前向きさが出ているし、走法を見ても明らかにTom Rolfeの影響で肩が立ったピッチ走法である。しかしこの馬の妙は母母サンルージュがBold Lad(IRE)を持ち(Bold Ladの母母Fair AlyciaはAlycidon×Fair Trialというすごい配合!)、さらに母母Cairn Rougeがピットカーン産駒でFair Trial4×4、Donatello5×4であるということだ。ステイゴールド×メジロマックイーン×ノーザンテーストを更に増幅した唸れる配合である。こういう馬がクラシック戦線に居てくれると面白いものだ。

 

共同通信杯オウケンムーンジャングルポケットにエリシオ、つまりNasrullahHyperionを増幅してトニービンを再現している。それらしく後躯で走るから直線が長く急坂があるのが良い。

サトノソルタスは、Burghclere≒Tropicana3×5のディープで、母のNorthern Dancerクロスはないが母父がLa Troienneパワー豊富だからPOGのころから注目していた。体質の弱い血統なので不安だが、賞金加算はさすがだ。

グレイルシュヴァルグランNasrullahHyperion斬れというよりはRobertoが入るのでタイムフライヤー的なパワー寄りのハーツクライにみえるが、この時期に先行できる力が付いていないということが分かった。タイプは異なるが昨年のスワーヴリチャードと比較してみればよい。

それはそうと、今まではジャスタウェイヌーヴォレコルトワンアンドオンリーやスワーヴリチャードのような配合で走っていたのに、同じ配合型とはいえないRoberto持ちのタイムフライヤーに続いてグレイルまでトップホースになってしまったら一流種牡馬を超えてディープのようなスーパーサイアーということになってしまう。これまでをみるとハーツクライは素晴らしい種牡馬だがスーパーサイアーではないので、そういう大局的視点からみてもグレイルは大物ではない、つまり古馬になってもジャスタウェイシュヴァルグラン的覚醒はしないのではないか、とみている。

 

と、もうここらで集中力が切れてしまう。もうすっかり競馬脳ではなくなったのだなぁ。クイーンCも考えていることはあるが気力が続かないので回顧を書きたくなったら書くことにする。

ハッピーグリン

セントポーリア賞を美しく差し切ったハッピーグリン(こういう良い意味で簡易な馬名は好きだ)はローエングリン×アグネスタキオン

 

ローエングリンはMill Reef5×3であって、Mill ReefとはNasrullahHyperionPrincequilloとCount Fleetであって、NasrullahHyperionという点ではアグネスフローラと呼応し、NasrullahPrincequillo(ナスキロ)という点では4代母Gold Beautyと強く呼応する

いずれにせよ、ローエングリンMill Reef的な要素が発現しているのは確かで、いかにも東京の中距離は合っていたなぁという走りをしていた。最近の馬でいえばまるでサトノクラウンのようであった。

美しさの論理

いやぁ、驚いた。何に驚いたかって、ステイゴールド×タニノギムレットといういかにも好相性そうな配合の第1号がパフォーマプロミスだったということだ。もっといそうなものだが。タニノギムレットは言わずもがなGraustark3×4、Romanも考慮するとKelley's Day≒Flaxen2×3という刺激的な配合で、この英国伝統的スタミナ&米硬派パワーがステイゴールドに合わぬわけがない。しかし実馬はいかにもステイゴールドキタサンブラックにも共鳴するPrincely Giftらしい柔らかさが表現されていて美しい。オルフェーヴルナカヤマフェスタと共通する、望田先生のいう“柔”と“剛”の絶妙な発現具合というものだろう。

 

 

ハーツクライが好きだ。4歳時のジャパンカップで追い込んでアルカセットの2着、そして次走の有馬記念でアッと驚く先行策でディープインパクトを破り、翌春のドバイシーマクラシックでは2400の大箱を逃げ切り、アスコットでのキングジョージHurricane RunElectrocutionistとスタミナを一滴残らず搾り取られる伝説的三つ巴をみせた。

サンデーサイレンスは肌馬を活かす種牡馬だ。ハーツクライの母アイリッシュダンストニービン×Lyphardである。エアグルーヴジャングルポケットという東京で斬れたイメージがある種牡馬トニービンであるが、その斬れの源はNasrullahHyperion、つまり母父Hornbeamに因るものだ。トニービンのHornbeamを増幅した最高の成功例はドゥラメンテだ。

他方トニービンはHyperion5×3とFair Trial6×4である。HyperionとFair Trialといえば、英国の伝統的なスタミナ血脈であり(Fair TrialはLady Josephine的スピードも伝える2面性のある血だがここでは便宜上Son-in-Law的スタミナを伝えるということにする)、キタサンブラック持続力粘着力も、ダイワスカーレットダイワメジャーの持続力粘着力も、サトノクラウンのスタミナも、全てHyperionとFair Trialに因るものだ。

話をアイリッシュダンスに戻そう。母父LyphardNorthern Dancer(Hyperion保有)×Court Martial(←Fair Trial)であり、HyperionとFair Trial的な粘着力が本質である。そこにトニービンを合せるとHyperionとFair Trialのクロスとなり、JC→有馬でのハーツクライの変貌ぶりは、“アイリッシュダンスの仔がGI馬になるにはこれしかない”という血統どおりの事象であった。

あの粘着力持続力スタミナが美しく、好きだ。

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展望と回顧 ~ 京成杯

近藤英子氏の馬名のセンスは大好きですが、イェッツトはなんだろう。タイムフライヤーやディーマジェスティのように、素人目にもハッキリとパワーの発現が確認できればよいのだけれど、トニービンをSadler's Wells≒Nureyev、さらにキンカメ内包のHornbeamで増幅したようなドゥラメンテ的な皮膚の薄さともとれる。

それでも、中山1800という器用さが求めらえる屈指の舞台でスッと先行でき、抜け出すことができたというのは、トニービン的というよりSadler's Wells≒Nureyev的バレークイーンアンライバルドコディーノ的、つまりFairy Trial的な小脚使いと見るべきなのだろうか。バレークイーン+Robertoという観点でみればヴィクトリーでもある。ならばコースは良い。

 

ダブルシャープクローバー賞、タワーオブロンドンを内から差し返したキタサンブラック2016春天的勝ち方は強い勝ち方だ。母系の奥に強力な硬派な米血パワーが凝縮されていて、そこにKris≒Busted1×4のBehkaraを母に持つベーカバドが配され、母メジロルーシュバーのアグネスレディーGraustarkのスタミナを掘り上げたようなイメージがある。

ジリ脚の中距離馬が外回りのマイル戦で善戦している、という解釈ができるサウジアラビアRCと朝日杯の敗戦で、ここはメンバー的にも期待できるのではないか。

 

余談になるが、例えばタニノギムレットブライアンズタイム産駒ながらRobertoというよりもGraustark3×4というよりも、母タニノクリスタルのSicambreの斬れが引き出されていた、そしてウオッカもRobertoを持ちGraustark3×4のタニノギムレットを父とし、母系にトウショウボーイが入りながらも重厚な粘着質な馬ではなくRivermanの影響で美しい斬れを武器とする馬だった、エイシンフラッシュも血統表の中に僅かに眠るMr.Prospector≒Stay at Homeのスピードが発現し、キタサンブラックも明らかにBurghclereのスタミナが発現表現されている。

そういうことなのだ。

東大生だから優秀とは限らないように、ハーツクライだから中山はダメだ、ではなくって、それではタイムフライヤーとフラットレーが同じタイプの馬に見えるというのか。アットザシーサイドハタノヴァンクールが同じタイプの馬に見えるというのか。私は先ほどタニノギムレットの件で述べたような、本質論を議論したいのだ。

私だっても競馬に興味を持ち始めたときは、ハーツクライだから中山はダメだ、といったような画一的な意見に感心していたものだが、それは初心者だったからだ。“血統”専門家なり予想家を名乗る者に、そんな画一的な意見は求めていない。このレースは“○○系”が強い、ではないのだ。“○○系”らしさが発現しているかどうか、“○○系”ではないけれど、“○○系”らしさがある馬はどれか、という進論にしなければ意味がない。

しかし商業的に画一論の方が便利であるということは理解している。競馬だけではない、世の中に蔓延する画一論は嫌なものだ。自由というのは苦しい。

 

【回顧】

展望と回顧 ~ シンザン記念

簡単に。

 

スターリーステージは配合は文句なしですがそれ故の過剰人気感は否めず、やはり全兄の3歳春が頭にありますからどうしても首をかしげたくなってしまう。

 

ファストアプローチは以下の望田先生の解説に納得で、マイルならば京都<阪神だろうし、マイルはそもそも疑問。相対的に持っているものが違うので好走はしても驚きはしませんが。

 いかにもDawn Approachの仔らしいパワー体質とTom Fool的な脚捌きで中山や札幌を捲るファストに対し、タワーのほうは東京でルメールがジックリ差しに回るとなかなかの斬れ味を発揮

朝日杯にまつわる血統の話(1)更新 - 血は水よりも濃し 望田潤の競馬blog

 

アーモンドアイはロッタレース(Nureyev×Sex Appeal)ですから硬派なイメージがありましたが、そこはさすがのロードカナロア×サンデーサイレンスで想像以上の柔軟性も発現していてこれかなぁという感じはしています。

 

プリュスヴィクトワールピサMr.Prospectorクロス+Mill Reef、つまりCount Fleetを増幅するパールコード的コウソクストレート的なピサの成功配合ですが、その走りは何と表現したら良いのか、何が発現しているのか私には分かりません。ただ京都は悪くなさそうに見えた。

 

注目しているのは、万両賞の勝ちっぷりから能力は確かなものがあるであろうヒシコスマーで、朝日杯は明らかにラストは気持ちが抜けていたので参考外、キタサンブラックとお味Lyphard4×3なので将来的には中距離の先行馬なのではないかと思っていますが(キタサンブラック新馬は差し切りだった)、Bold Bidder、Riverman、さらにHaloとプレイメイトも血統構成が非常に似ていて日本の芝を走るのに重要な血ですからちょっと贔屓していきたい1頭

 

ツヅミモンはNijinsky4×4・4で確認したらそれらしいスペシャルウィークのような胴長体型だったので京都外回りをどう走るかは見物ではあります。よくみたらカタマチボタンの仔で2年連続ストロングリターンだったのですね。

 

ブランモンストルは柔らかいロードカナロアに母からSecretariatをもう1本持ってきて、フジキセキもあるのでMill Reefもクロスされ、間にクロフネの米硬派パワーを注入、そのバランスの良さはアーモンドアイなんあと被るところがあります。それでもクロフネが強そうで、そうとすれば京都<阪神ではありますが、この時期の3歳戦は早熟性≒パワーが重要なのでこれくらいの方が良いのかもしれません。

 

カシアスDanzigパワーが出ていますのでやはりこの時期の3歳戦では見逃せず、外枠ですが小頭数で京都のラチ沿いでこの鞍上ですから注視はしておきたいですよね。ロジクライ的にね。

 

【回顧】

アーモンドアイは説明するまでもないですがロードカナロア×サンデーサイレンス×Nureyev×Sex Appealという良血ですがトライマイベスト≒ロッタレース5×2、なかなか強烈ですがNorthern Dancerに関してはサンデーサイレンスがハッキリとした1/4異系で、Northern Dancer+Sex Appeal的な頑強さとロードカナロア×サンデーサイレンスの柔軟性の発現が絶妙...という表現が合っているような気がします。

ツツジモンは馬場の恩恵もあったかと思いますが、何十年経っても京都外回りのNijinsky

カシアスは将来的にはしっかりスプリントに寄るんでしょうが、この時期の3歳マイルはやっぱりパワーの発現が大事、そして1回京都の浜中騎手