短考 ~ 阪神JF
ラッキーライラックとロックディスタウン、底力というか血統の深みという点では前者の方が上ですよね。どちらも米血過多の母ですが、ライラックスアンドレースは何といってもプリンセスオリビアというのがオルフェーヴルの配合のキー(ノーザンテーストとメジロマックイーン)と脈絡。
リリーノーブルはデウスウルト=バティスティーニで結果を出したKingmambo≒ビーバップ3×3、ルーラーシップでも小脚で走るタイプでしょうか。こういうタイプ、つまりスッと加速できるタイプは気性等の要因はさておき内枠や真ん中の枠でも気にならないです。むしろ、プラスにもなり得る。
対照的にストライドで走るマウレアの内枠というのは、赤松賞は内を割って勝利しているとはいえ不安。
ほかで気になるのは、ブラックタイド×Pivotal×デインヒルのマドモアゼルというのはBurghcrele≒Bustino≒Flower Bowl3×5・6でクロフネサプライズ的に大舞台で真価を発揮するかもしれないと淡い期待。
ノースヒルズのノヴェリスト、ナディアはNijinsky≒The Minstrel5×4・5
前走はめちゃくちゃ右にモタれながら2着。400キロちょっとの小柄な馬ですから将来どんな馬になるか。
短考 ~ チャンピオンズC
気が向いたので、書き殴ります。
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昨年のチャンピオンズCは向こう正面でブライトラインがペースを押し上げてアウォーディーのスタミナが活かし切らされたかというところでサウンドトゥルーの強襲...というレース。
一方、ホッコータルマエが押し切れるレースになることもあり、要は展開次第なのですが、コパノリッキーが最内枠ですし、(鞍上がポスト横山典弘騎手の天才なので何をしてくるか分からないが)1番人気も気分よく走りたい先行馬ということで、サウンドトゥルーやサンビスタの時のような激しめのレースになるかなという気がしています。
となると当然サウンドトゥルー、アウォーディーの昨年ワンツーコンビに注目なのですが、今回人気の盲点になっているのはアポロケンタッキーではないかと思うのです。
初めて一線級との対戦になった昨年の当レースで5着。掴みどころがない馬ですが、望田先生がいうようにRibotが強い馬で昨年より力を付けていることが明白なのであればこの人気の落ちようには注目してみたいところ。
サンビスタのイメージがしやすいのは鞍上込みでロンドンタウンであります。
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サトノクロニクルはPOGで選んでいて、なんでハーツなのにPOGで注目していたのかなと思えば、スワーヴリチャードと同様Busanda増幅があったからということを、以前の記事を見つけて思い出しました。兄ラーゼンがあんな感じですから、Robertoが今後どう作用してくるかですよね。ジャスタウェイやシュヴァルグラン的覚醒はないのではないかという悲観的観測をしていますが...。
サトノクロニクルは母トゥーピーがBold ExampleとFresserのナスキロクロスなので緩いですが(ただでさえハーツは晩成)、この時期にここまでやれているのはBusanda≒Better Self6×7・7とBusandaを増幅できているからというのは間違いないでしょう。
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現3歳世代では、ヴゼットジョリーやジョーストリクトリやグリトニルといったところが贔屓(ひいき)馬でしたが、2歳では葉牡丹賞で競馬にならなかった芦毛のクレディブルがそれ。
グランド牧場生産のスズカマンボ産駒で、母ホワイトクルーザーはクロフネ×ホワイトカーニバル(サンビズタの母)という、お馴染の血統。つまり、サンビスタと3/4同血ということになります(間にクロフネが入っている)。
そんな馬が東京芝の新馬を上がり最速で差し切るのだから、面白い。
冬の乾燥した中京ダのGIを、牡馬相手に勝ち切ってしまう馬が生まれるスズカマンボ×ホワイトカーニバル(クレディブルの4代母グランドリームのYour Host≒Alycidon3×3に、スズカマンボの母スプリングマンボのGraustark5×4が強力に呼応!)という重厚なスタミナ&パワー配合ですから牡馬の方が大成しやすいですし、どういう馬に育っていくのか楽しみな1頭なのです。キングジョージやプリンスオブウェールズSを制しても驚かない(笑)
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オブセッションについてはまた今度ですね~
何年たっても変わらない“斬れの質”
シュヴァルグランはハーツクライにNureyevであり、つまりトニービンにNureyevであり、つまりトニービンにNasrullahとHyperionだから、彼の重厚な斬れは、かつて府中を斬り裂いたジャングルポケットや、エアグルーヴや、テレグノシスや、ドゥラメンテと同質である。ほんの数十年では、影響力を与える血というものは変わらないものです。
ラジオNIKKEI杯2歳Sを制したグレイルも、ロックオブジブラルタルの母Offshore BoomはNasrullahとHyperionを持ち、Blushing Groomを持つという点ではシュヴァルグランと同じですが、どうもRobertoが入るというのが気になるところ。
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※追記(2017年11月27日)
望田先生の回顧記事で本記事の論旨と重なる部分がありましたので引用しておきます。
配合的にも母系にナスペリオン血脈のNureyev(Special)とBlushing Groomが入るのはハーツクライの大物が出る配合パターンで、ジャスタウェイしかりヌーヴォレコルトしかりで、代表産駒の多くは母系にナスペリオン血脈を持ち、つまりトニービンのナスペリオン的斬れを増幅する配合をしています
┌Hyperion
Hornbeam(トニービンの母父)
│┌Nasrullah
└△
┌Hyperion
┌○
┌○
Special
│ ┌Nasrullah
│┌○
└△
┌Nasrullah
┌○
Blushing Groom
│ ┌Hyperion
│ ┌○
└△┌○
└△
京都2歳も勝って2戦2勝のグレイルも、母系にBlushing GroomとBold Ladと二つのナスペリオン血脈を引いています
体型的には母系のBlushing Groomの影響も強いので“おっとりした性格のマヤノトップガン”と評してきて、またHalo3×4・5を持つので内回りの機動力にも長けているのだと宝塚記念で◎を打ったこともありましたが、やはり本格化してきたハーツクライ産駒が最初に勝つG1は東京の中距離だった
Blushing Groomもナスペリオンでしたね。
阪神大賞典や昨年の有馬記念等、4角のスムーズな加速をみていても、器用さは感じ取れ、覚醒して有馬までかっさらったら父の無念を晴らしに来夏アスコットへ...なんて夢も広がるのですがね。
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発走1時間前の短考記事の文章の中では、以下が正解でした。
また、シュヴァルグランのジャスタウェイ的覚醒可能性というのも頭の片隅に入れておきたいところ。
キタサンがキタサンらしいレースをすれば、相手は去年のような相対的に速い脚がない馬になるんでしょうか(^^;)
ジャパンカップ 短考
JCですので、レース前にいま思っていることを簡単に書き留めておきたい。
私がJCの考察ということで思い出すのは2015年、ショウナンパンドラが制した際の望田先生のそれです。
父がMill Reefのクロスで母系にAureoleを引く狂気のイトウが緩めず逃げるか、ナスペリオンをクロスしないジリ脚ハーツクライのカレンミロティックで蛯名が春天のようにロンスパを仕掛けてくるか、そして休み明けは比較的優等生なレースで良績を残してきたゴールドシップが府中でも向正で動くのか
“スローの女王”ジェンティルドンナに逆らいつづけたように、“ピッチの横綱”ラブリーデイは本来東京向きではないと書いてきた望田としては、ここは流れるかロンスパかで決め打ちしてまたまた反旗を翻すしかない
ロンスパで決め打つのならば、トニービンやNureyevなどHyperion重視の着地点でいいだろう…という腹でもう一度過去のJCを洗い直してみて愕然としたのは、実はHyperion的な馬はぜんぜん勝ってなかったのです
緩まず流れたりロンスパ持続戦になると、Hyperion重視の配合でHyperion的な持続力で走る馬が好走するというイメージは合っていたけれど、しかしジャスタウェイもオウケンブルースリも、トーセンジョーダンもジャガーメイルも好走はしたけど勝ってはいなかった
これらはHペースの秋天だとHyperion的な末脚で頭まで突き抜けるのにJCだと2着3着までで、勝つのはジェンティルやブエナビスタやウオッカなど牝馬の斬れか、エピファネイア(Kris S.≒Habitat2×4)やローズキングダム(Mill Ree5×4)などナスキロ柔い斬れ
そうなんや、JCというのは、実は最も日本的な斬れがモノを言うレースで、だから牝馬が強いレースで、だから最近外国馬が全然ダメで、ジャパンカップというより日本盃と呼ぶにふさわしいレースなんやなあ…
その瞬間◎は決まりました
2000mのレースの方が2400mのそれよりスタミナが要求されるというのは日本においては良くある話です。皐月賞とダービー、秋天とJC
近年は秋天のペースが上がらず施行距離の字面通りのスタミナが要求されるケースが多かったですが、今年の場合は秋天が泥んこでHyperionとSon-in-Law的な伝統的ブリティッシュスタミナの絞り合いでした。
牝馬の斬れという観点からみればソウルスターリングが勝ち切っても驚けません。マカヒキも牝馬らしい斬れの持ち主です。
レイデオロはラブイーデイと似たようなイメージで良いと思いますが、キンカメ×Robertoでもラドラーダなのでラストタイクーン≒Alzaoとナスキロ血脈がクロスされているのでラブリーデイ以上に柔軟性と東京適性も感じさせます。が、先週のペルシアンナイトがあったにせよ、私の中で3歳牡馬のレベルにはまだ疑問符があります。
また、シュヴァルグランのジャスタウェイ的覚醒可能性というのも頭の片隅に入れておきたいところ。
シャケトラは有馬宝塚タイプですが、配合を褒め続けてきただけにここを勝ち切っても驚かない数少ない1人です(笑)
キタサンがキタサンらしいレースをすれば、相手は去年のような相対的に速い脚がない馬になるんでしょうか(^^;)
英ステイヤー血脈の極み
ちょっと眠れなくって、色々と過去の名勝負をYouTubeでみていました(ブルーライトでなおさら眠れなくなるのに)。私は、そんなに過去の人馬について明るくありませんが、99年の古馬中長距離戦線、即ちスペシャルウィークvsグラスワンダー(+エルコンドルパサーinフランス)というのはやっぱり良い。
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私は、競馬ファンの中でも所謂「ロマン派」や「馬券派」ではなくって、眼前の競走馬の個性について自分なりの解釈をすることが好きで、「何故あの馬はAという特徴を持っているのか」ということが分かってしまえばそれで満足で、中学2年生の頃に競馬に興味を持ってから、主にそればかり求め続けていました。
そこで出会ったのが望田潤先生のブログ『血は水よりも濃し』で、その衝撃といったらもうすごかったです。例えば先日の天皇賞の回顧にあったこの一文
ディープインパクト×Storm Catの2頭は、それらしいストライドで走るサトノアラジンと、それらしくない(Kingmambo的Special的な)掻き込みピッチで走るリアルスティールとでハッキリ明暗分かれましたが、リアルスティールはこんな馬場は巧いほうだけど1800mベストなので、2000mで道悪になるとスタミナの問題が出てくる
Kingmambo的Special的な掻き込みピッチ走法といえばレッツゴードンキやトーセンビクトリーも同質で、こういうことを考えるとディープインパクトだからどうとかキングカメハメハだからどうという一面的な見方が空しく思えてきます。
また、キタサンブラックとサトノクラウンについての論考が読んでいて快感ですので載せておきます(笑)
キタサンブラックの父ブラックタイドは名馬ディープインパクトの全兄で、サトノクラウンの父Marjuは女傑Salsabil(愛ダービーなど欧クラシック4勝)の3/4弟。MarjuとSalsabilの母Flame of Taraは略図のようにHyperionの強いクロスを持つが、ブラックタイドとディープインパクトの母ウインドインハーヘアもHyperion的なスタミナの血を強く受けている。
抜群に鋭い脚はないが粘着力と成長力に富むのがHyperionの特長といえるが、こうしたHyperionらしさはディープインパクトよりもブラックタイドに強く伝わったといえるだろう。ディープの場合はHalo≒Sir Ivorのニアリークロス(2×4)譲りのしなやかさ俊敏さのほうが強い。
ブラックタイドのように粘着力を主として伝える種牡馬は、母父にマイラーやスプリンターの血を入れ、先行力を増すような配合にするのが望ましい。母父のスピードで先行してこそ、父の粘着力が活きるというわけだ。テイエムイナズマ(母父Danzig)が好例だが、母父にスピードが入る配合が実際よく成功している。
サトノクラウンの全姉Lightening PearlはチェヴァリーパークS(英G1・芝6F)勝ち馬で、母父Rossiniはロベールパパン賞(仏G2・芝1100m)勝ち馬。筆者はセレクトセールで実馬を見て「好配合のマイラー」と紹介したが、牧場関係者も当時はそう考えていたようだ。
しかしMarjuの代表牡駒3頭、Indigenous、Viva Pataca、Chinchonは、いずれも古馬になって芝2000~2400mの大レースを勝っており、いずれも母父がマイラーなのだ。これはMarjuがHyperion的な粘着力成長力を強く伝えている証だろう。
というわけで、ブラックタイドやMarjuのような種牡馬が、母父にスプリンターの血を入れて2400mのチャンピオンを出すのは不思議でもなんでもなく、むしろ順当というべきなのである。>
下のようにブラックタイドの母母BurghclereとMarjuの母母Welsh Flame は非常によく似た血脈構成で、AureoleやAlcideを生み出した「HyperionとDonatelloとSon-in-Law」という英ステイヤー血脈の極みというべき組み合わせが綿々と重ねられています
※Fair Trial(FT)の母父とAloeの父はともにSon-in-Law
いつも書いていることですが、BurghclereやWelsh Flameのような重厚なスタミナを伝える種牡馬の場合は、母父にマイラーやスプリンターのスピードを入れて、「母のスピードで先行したり捲ったりして父のスタミナで踏ん張る」という脚質にするのが成功しやすい
そういう意味でキタサンブラックとサトノクラウンはよく似たコンセプトの配合といえ、出遅れをリカバリしたユタカの名騎乗は語り継がれていくことでしょうが、2角の入りでは中団以降だった2頭が4角では2番手で並んでいて、そこから追い合ったから歴史的名勝負になったのだ、というのが配合史的見方
そしてHyperionの絞り合いになれば前にいるほうが有利で、しかしこういう大箱で持続力が問われるレースで、サトノクラウンがまともに負けたのを、根負けしたのを初めて見た
私がカーニバルソング(アンビシャスの母)や、フレンチビキニ(ベルルミエール、ヴゼットジョリーの母)や、ペンカナプリンセス(ダノンジェラート、トリコロールブルーの母)らが大好きなのは“英ステイヤー血脈の極み”といえる血統が継続して配合されているからです。
そして日本でそういうスタミナの絞り合いがみれて良かったなぁと、日が経過する度に今年の秋天の深みを実感しています。
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スマートレイアーが年齢を重ねて母のHyperion的なスタミナが発現してきた、だから2400の馬になったという解釈はアル共のデニムアンドルビーも同じで、しかも鞍上が鞍上ですから注視してみたいです。このHyperion的成長で今ふと頭に浮かんだのはJCBに出ていたタガノヴェローナで、きっと彼女もダ中距離を前受けして踏ん張る男らしい熟女になるでしょうから温かく見守っていきたいです。