フィエールマンの強さ
▼このブログにも「読者」は存在したようで「もうやめちゃったんですか」という趣旨のコメントをいただきました。ありがたや、ありがたや...。もちろん競馬はチェックしているんですが、いかんせんブログを更新する熱量にならず。頭では考えているんですけどね。
▼上半期のレースを振り返ったとき、まず頭に浮かぶのはアドマイヤマーズのNHKマイルCだ。グランアレグリアも強いがアドマイヤマーズも相当強い。皐月賞はヴェロックスにマーズがやりたかった競馬をされて、そのヴェロックスに被されてワンテンポ仕掛けが遅れた。(ダイワスカーレットのようなHyperion的粘着力もあるが、スカーレットと違ってストライド走法なので)トーセンジョーダンの天皇賞(秋)的にHyperion的持続力でジワジワ「伸び続ける」ことが持ち味のマーズにとって最悪の形だ。それでも3強に次ぐ4着を確保した。
NHKマイルはマーズの実力を考えれば過剰不人気だった。1番人気はグランに譲ったとしても、グランの1.5倍とマーズの4倍超はないだろう。しかもマーズは「絶好の」外枠。皐月のように被される心配は払拭されていた。スタートを出て外目の3~5番手、スローになりそうならハナを叩いてメジャーエンブレム的なラップを刻めばいい―そこで1年以上ぶり(?)の馬券を購入するため、ウインズ渋谷へ足を運んだ。単勝でいいと思ったが、誰かが言っていた「単勝は馬単総流しと同じ」という言葉を思い出し、強弱を付けた馬単総流しを購入した。
ところが!出遅れて中団でのレースになってしまった。だから道中は完全にあきらめていた。しかし、である。それこそ、まさにトーセンジョーダンの天皇賞のように「斬れる」というよりはジワジワと脚を伸ばして差し切ってしまった。2着のケイデンスコールも悪くないと思っていたので馬単は200円持っていた。そんなワケで4万円ちょっとゲットすることができた。
マーズの勝利は、「メジャーエンブレムが桜花賞で自分の競馬が出来ずに4着→持ち味を活かしてNHKマイル勝利」を想起させる。2歳王者(女王)という点も同じだ。「会心の勝利」という言葉がピッタリだった。
▼その次に印象的なのは、やはりダービー。「いやぁ、勝ち切るかねぇ...」と何度呟いたことか。でもこれが競馬の面白い所なんだよなぁ。サートゥルナーリアは敗れたものの、残り400くらいで「うぉ、きたーー」と誰もが思ったはず。まぁどんなに強い馬でも負けることはある。ディープの有馬記念を思い出した。
▼いいなぁと思ったのはフィエールマンだ。着差を付けずに勝つところがイイ。新馬はさておき、山藤賞とラジオNIKKEIで大外一気の競馬をしておきながら菊花賞は馬群を縫ってエタリオウとの叩き合いを制した。ただ者なワケがない。けっきょく、天皇賞もグローリーヴェイズを抜かせなかった。「着差以上の完勝」というヤツだ。野球やサッカーにもいえることだが、接戦を勝ち切ることが真の実力の証明だと思う。
それにしてもフィエールマンのレース振りを見ているとハープスターを思い出す。阪神JFでハープスターと川田優雅は、後方から馬群に突っ込んでレッドリヴェールに敗れた。「大外に出せばよかった」と少なからぬ批判を浴びた。そうだろうか? 川田騎手がどこまで考えていたかは知らないが、ビッグレースを勝つならそういう競馬を身につけさせた方がいいに決まっている。まして凱旋門賞は多頭数でスロー、道中や最終コーナーでの接触は当たり前のこと。ナカヤマフェスタvsワークフォースでも御覧なさい。あのJFのレース振りでハープスターがロンシャンの直線、馬群を割って抜け出てくるシーンが脳裏に浮かんだものだ。でも現実はご存知の通り。
だからフィエールマンの菊花賞やAJCCや天皇賞の競馬は必ず凱旋門賞に活きてくるはずだ。しかも彼はフランス血統でフランス的な斬れを持っている。よく「欧州競馬」と一括りにしている言説もあるが、アスコットとロンシャンを、イギリスとフランスを一緒にされたら困る。もちろん日本以上にスタミナや精神的なタフさが必要とされる(馬群が凝縮されるので)が、ロンシャンは斬れが必要だ。1つ、フランス血統のリュヌドールの産駒であること。2つ、タフな競馬の経験が豊富であること。この2点から秋のフィエールマンが楽しみだ。天皇賞のとき、望田潤さんが「しなやかさが落ちている」という趣旨のコメントをしていたのが気になるが―。
有馬記念直前短考
▼中山内回りは、4角~短い直線&急坂でビュッ、グーンと加速しなければならないワケで、グラスワンダーのようなパワーやヴィクトワールピサのようなフワッとした機動力、ラブリーデイのような地面に吸い付くようなコーナリングが求められる。
そうなった時に、キセキの父譲りの重厚なフットワークは間違いなくマイナスとなる。中山内回りの有馬記念や日経賞で父は勝ち切れなかった(もちろん、京都内回りの金鯱賞は勝ち切ったが、別に内回り適性で勝ったわけではなく、持ち前の持続力を活かすにはあの形がベストだっただけで相手が一枚下だった)。
もちろん、先行力を身につけたキセキだから3角からペースを上げ4角でセーフティリードを取って押し切る―ということも考えられるが、重厚ストライドで走る馬はキツイコーナーで負担が掛かっている(ストライドロス)。それこどグラスワンダーやラブリーデイやヴィクトワールピサの中山内回りや阪神内回りでのコーナリングと、ブエナビスタやルーラーシップやスペシャルウィークやドゥラメンテのそれを比較すればいい。
▼ブラストワンピースもモズカッチャンもミッキーロケットもビュッ、グーンと加速できるタイプではないが、抑えるとすればモズとロケットか。両者ともに内でうまく立ち回れるし、ロケットに関してはファンの想像以上に力を付けている可能性がある。ブラストは来年の秋天がベストの舞台となるはずだ。
▼サトノダイヤモンドとマカヒキは器用さも兼ね揃えているが中山2500の持続戦では厳しそう。強いて言うならサトノは普通の3着候補として見れなくもないが、過剰人気だし鞍上は長距離だと不安が残る。
▼それならば内で垂れないクリンチャーのスタミナと、どう考えても好配合なのに母数が少ないステイゴールド×タニノギムレットのパフォーマプロミスの成長度に魅力を感じる。後者の字面以上の瞬発力は母母に凝縮されている米血の影響だろう。なかなか好みの馬だ。
▼中山内回りでビュッ、グーンと加速できる馬といえばミッキースワローとサクラアンプルールだが、後者はこの枠で真っ向勝負だとさすがに厳しい。一方前者はJCでのパフォーマンスとローテーション、さらにアルアインをしっかりと完封した(セントライト記念)という事実に再度目を向けたい。緩みない流れの中山2500ならばレイデオロを差し切れる可能性がある。
血統表をみればわかるが、カンパニー的でカンパニー的小脚で走る馬だ。名手が札幌記念でのミスを取り返す―サクラローレルの秋天→有馬を想起させてならない。
▼ミッキースワロー、レイデオロ、パフォーマプロミスの序列で少し買ってみます。
‟斬れ”と‟粘り”と体質
▼フィエールマンが菊花賞を制しました。
また名文を貼っておきます(笑)
Noir et Orを見たことがなくても、Noir et Orの産駒や孫を見たことがなくても、その血統表から描けるイメージだけでオナニーできてしまうのが血統予想の面白いところなのでね
Noir et Orはたぶんサッカーボーイみたいなやつなんですよと、だからきっと京都外回りを上手にくだることができますよと、そういうイメージを提供できるような血統予想をいつも書きたいなあ…とは思っています
今年の菊花賞は、Noir et Orとステイゴールドが上手にくだって叩き合ったレースでした
でもいくら血統派がNoir et Orでうなっても、やっぱりスローでディープか、やっぱりノーザンか、やっぱりルメールか、とばかり言われるのはあんまり面白くない(^ ^;)
4戦目、そして7月以来のレースで勝ち切ってしまったことは偉業としか言いようがありませんが、今年の菊を観て想起したことはフランス血統の‟斬れ”
日本ではHighest Honorが代表的でしょうか、レーヴドスカーの産駒、そしてジュエラーなどフランス血統は斬れに斬れる。しかし、その分体質的な弱さがネック。
一方、その分キタサンブラックやダイワメジャーに代表されるHyperion的な粘りは体質的な強さも兼ね揃えています。キタサンはまさに無事之名馬、ダイワメジャーも怪我を克服して活躍しました。
デニムアンドルビーやスマートレイアーもそうでしょう。デニムは怪我を克服した後も牡馬混合重賞で善戦、スマートレイアーも息の長い活躍を見せていて距離適性が伸びてきたのもHyperion的です。
レースで粘るためには、心肺機能的な特質ももちろんありますがそれ以上に精神的な強さも必要。そしてそれは怪我の克服とも無関係ではないと思うのです。
彼らの母系の血統表を凝視してみてください。
▼秋天はレースの質によってマイラー(寄りの馬)が好走したり(リアルスティール。モーリスはちょっとモノが違ったかな)、ピッチ走法(カンパニー、スクリーンヒーロー)が好走したり、重厚ストライド(スペシャルウィーク、メイショウサムソン)が好走したり、Hyperionの持続力が爆発したり(ダイワスカーレット、ジャスタウェイ、キタサンブラック、ダイワメジャー)します。
だから、もしトウケイヘイローが飛ばしたジャスタウェイの秋天がスローだったらピッチ走法のコディーノ(5着)がもっと善戦していたかもしれない(まぁそれで2着を死守するジェンティルドンナはやはり名馬なのですが)。
これは天皇賞だけでなく東京のレース全般に言えること(安田記念もスローだと小回り中山記念向きのロゴタイプが勝てる)で、今年の秋天は中山向きの馬が先行出し抜けするんじゃないかと思っています...
そういうレースになるとスワーヴリチャードが安田記念を使ったのはプラスに働きそうかなとも。
‟抜かせない力”がイイ
好きなレースの一つにハーツクライの有馬記念があります。もう何度も書いているので詳述しませんが、ハーツクライの本質はアイリッシュダンス――トニービン×Lyphardなのです。つまり、HyperionとFair Trialを通じたSon-in-Law(ハイインロー)のスタミナ。
JCまでは素質だけで追い込んでいたけど、体がパンとしてくると先行できるようになって本質である‟抜かせない力”を発揮できるようになった――。
ハイインローの抜かせない力は、同じルメールで言えばリトルアマポーラのエリザベス女王杯(先行)がそうですし、今パッと浮かぶところではバブルガムフェローの秋天、ワンアンドオンリーのダービー、神戸新聞杯。
もちろん、キタサンブラックやダイワスカーレット≒ダイワメジャーの二枚腰も血統的本質は同じです。
さて、前置きが長くなりましたが菊花賞に出走するステイフーリッシュも同じような特徴を持っている馬です。指した共同通信杯でイマイチ、先行した神戸新聞杯の快勝は、ハーツクライのJC→有馬、ワンアンドオンリーの皐月→ダービーを想起させます。
同じステイゴールドでも、エタリオウやアフリカンゴールドやシャルドネゴールドはStorm CatやGone Westを通じてナスキロ血脈が入るのでステイフーリッシュほどの男らしさは出ません。
まぁ、個人的に抜かせない力がある馬が好きなので、もし好走した時に公開しないように仕事の合間に書いてみただけの話です。
と、ここで思ったのですがステイフーリッシュの母はカウアイレーンでした。なにかと勘違いしているようです。ただこれまでのレースを見て、ハイインロー的な母を想起していました。相当ロベルトのスタミナが発現していると思うが、どうだろうか。
サウジアラビアRC短考
グランアレグリアは、母がNijinskyのクロスで胴長、そこへきてSir Gayload≒Secretariat6×6・6だからダラーンとした斬れ方で、こういう馬を2歳のマイル重賞で信用するのはどんなものか。サトノアラジンの2歳~3歳と同じようなイメージだ。
ドラウプニルは、ルーラーシップ産駒で母がアグネスタキオン×ウインドインハーヘア。ウインドインハーヘアは伝統的英国スタミナ(HyperionとLady juror)凝縮、でタキオンのアグネスレディーが脈絡し、エアグルーヴはトニービン×ノーザンテーストだから、またHyperionとLady juror。これがダイワスカーレット的Hyperion二枚腰に出るのか、エアグルーヴ・ドゥラメンテ的ナスペリ斬れに出ているのかは分からないが、後者ならばコース替わりは◎
ハーツクライでもシュヴァルグランのようなタイプもいればマジックタイムやタイムフライヤーのような内回り捲りタイプもいるように、シャドウエンペラーはジャスタウェイでも後者タイプ。となると東京は?
アマーティとセグリオスエリオルは、父云々というより、手堅くスピードを伝える牝系ですから、こういうタイプを2歳重賞で抑えるというのはアリ。スピードならサムシングジャストも。