シンザン記念 / フェアリーS / 日曜の注目馬
寒竹賞はマチカネタマカズラの仔、ホウオウパフュームが田辺騎手らしい殿一気で2勝目。昨日も書いたように母マチカネタマカズラはKingmambo×El PradoでNureyev≒Sadler's Wells3×3、これはトニービンの主要血脈であるNasrullahとHyperionとFair Trialを増幅していて、パッと思いつくだけでもシュヴァルグランとヌーヴォレコルトがNureyevを持っています。またトニービンとNureyevの相性の良さはジャングルポケット(トニービン×Nureyev)を思い起こせば十分。父ディープインパクトの3/4兄ジューヴルエールよりも配合は良いといえます。馬体はまだ緩く、若いころのシュヴァルグランを思い出しました。当然本格化は古馬になってからですが、春はどこまでやれるか見ものです。
福寿草特別はサトノユリア(ディープインパクト×ソニックグルーヴ(フレンチデピュティ×エアグルーヴ))の仔、サトノリュウガがオルフェーヴルの宝塚記念を思い出させるような池添騎手の好騎乗もあり連勝。
エアウィンザーはムーヴザワールドとクビ差の接戦といえば聞こえはいいですが、あの明らかにエアウィンザー向きの流れで勝たれたわけですから、首以上の差があるのでしょう。
以下は取り上げようか迷ったけど、「どうせ10番人気5着くらいだろう」と高を括って取り上げなかった馬たち。2場開催で時間もあるので今日は書いてみよう。
淀短距離Sで9番人気3着だったラインスピリットは、母リボンストライプがウイニングチケットの全妹(でトニービン×母母父テスコボーイでHyperionのクロス)だからスウェプトらしい単調な早熟短距離馬ではないはずで、前走は道悪の割には頑張っていたし今回人気落ちならば...という思いはありました。
京都最終で14番人気2着だったデンコウリキは、昨日も書いたPrincely Gift系の盟主サクラバクシンオーが母父で軽い前輪駆動の走り。こういうタイプは京都外回りは鬼で、最近では10/8の久多特別(外回り1400m)で8番人気1着だったラクアミ(ダイワメジャー×サクラバクシンオー)が思い出されます。デンコウリキは近走も勝ち馬から0.2秒差、0.5秒差の競馬、そういう馬が最内枠で池添騎手継続騎乗というのは魅力ではありました。
10番人気1着だったスペシャルギフトも、名繁殖とはいえないまでも好繁殖スーヴェニアギフトの仔で、芝が悪いわけはなかろう(単純にシュプリームグフトとベステゲシェンクは重賞で馬券になっていますからね)と、初芝だった前走でも注目していましたし勝ち馬から0.3秒差7着と内奥は及第点といえるものでした。
中山最終で7番人気3着だったウイングチップは、一昨年のセントライト記念4着馬(勝ち馬:キタサヌラック)で、その際にHaloらしいなぁと感じたのを覚えていますが、母ウイングレットはHalo3×3/Nijinsky4×4で中山牝馬S/スイートピーS勝ち、秋華賞では3着。器用さを発揮するには札幌1500と並んでベストといえる中山1600替わりというのは気に掛けていました。
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シンザン記念
ペルシアンナイトはフェアリーSのキュイキュイ項に詳しく書きましたがデインヒルを増幅した配合で、Nijinskyが入りTom Fool≒Flaming Page7×6としているからか、いずれにしてもキュイキュイ以上にパワーが効いていてハービンジャーの緩さが抜けた締まった筋肉にうつります。一方Nijinskyらしい胴長体型でもあるため、小回りよりは大箱でしょう。前走は秋山騎手が言うように「能力、スピードの違いで早めに先頭に立った」ようなもので、マイルを連続して使われますが「クラシック級」の評価です。
距離適性はやや異なりますが、素質という点ではアルアイン以上にタイセイスターリーを評価しています。ちなみに、シンザン記念とDanzigというのは、ロジクライ/ロードフェリーチェ/ミッキーアイル/エーシントップ/ヘミングウェイ/ジェンティルドンナなど走っているんです(昨年の『馬キュン!』シンザン記念回のために調べた。3歳のこの時期に重賞で勝負するにはDanzigに代表されるNorthern Dancer的なパワーによる早熟性が重要だということでもある。)。
ロジクライだって、京都のヨーイドンとかどうなの?という血統ですし、ロジやタイセイスターリーのような一見「京都<阪神では?」と思わせるパワーが要るレースだと思うのです。欲を言えば内枠で兄同様浜中騎手で内割り希望でしたが。外枠からでも運と技術があれば内を取れますからね。
アルアインは母ドバイマジェスティが強いクロスを持たないので晩成とみていて、やはり母父Essence of DubaiはA.P.Indy→Pulpitのラインでもあるので少し筋肉の怠慢さは感じるんですよね。それでも新馬特別連勝ですから素質は素晴らしいのですが人気ぶりをみると...
マイスタイルは母母レディダンジグがDanzig×Secretariat、Northern Dancer×Secretariatという組み合わせのChief's Crownとハーツクライはヌーヴォレコルト/ベルラップが出ているように相性が良いですし、ハーツクライにしては完成が早い配合。ただ相対的にみて可も不可もなくという感じで、掲示板が限界かなというイメージ。
穴目ではブレイヴバローズとキョウヘイを挙げておきます。
ブレイヴバローズはネガノの仔で、何といってもHopespringseternal→Miswakiが母父で自身はHalo3×4、そういう足捌きをしますし、Halo的な軽い機動力もナスキロ的な前輪駆動の走りもどちらも京都芝は◎です。アントニオバローズ→ガルボとマンハッタンカフェが連覇した重賞でもあります。
キョウヘイはスペシャルウィーク≒ダンスインザダーク2×2のリーチザクラウン産駒で、本来の差しに戻した前走で上がり最速。軽い馬場の方が合いそうでもあります。
フェアリーS
アエロリットは母がネオユニヴァース×アイルドフランス、ということは叔母にスターアイル、他にもダイヤモンドビコーなどで馴染みのMy Bupers~ステラマドリッドの牝系です。クロフネ×ネオユニヴァース(母ポインテッドパスがHyperion5×4)×Nureyev(Hyperion4×4)なので一応スリープレスナイトなど活躍馬を輩出する「クロペリオン(クロフネ×Hyperion凝縮牝馬)配合」でもあります。
陣営もコメントしているように大飛びで、しかも確信は持てませんがドゥラメンテ的な前駆よりも後躯が強そうな走りに見えるのは、NureyevのNasrullahとHyperionの影響でしょうか。ですから「中山1600の内枠」という条件は歓迎というわけではないのですが、そこは横山典弘騎手が4角で巧く外に持ち出すはずで賞。混沌としたこのメンバーならば素質は1枚上な気がしています。
キャスパリーグは何度も書いているよう非社台系ディープPOG(10頭持ち)で指名していて期待していましたが、期待が大きかっただけに、その期待は上回ってくれませんでした。
ディープインパクト×Storm Catのニックス配合で、母母父がシアトルダンサーⅡ←Nijinskyですから、「Storm Cat産駒でStorm Bird≒Nijinsky2×4の繁殖牝馬」というとマジックストームと同じなのですが、兄リアルキングをみてもちょっと米血パワーが強すぎる感じで、阪神1600でバキューンと弾け切る馬ではないんですよね。もちろん、好勝負可能だとは思いますが桜を狙っていただけに...
コーラルプリンセスはセイクリッドバレーの半妹のクロフネ産駒でVice Regent≒ノーザンテースト4×3、ピッチで走るのですが器用さがあるというわけではなくスタートも巧くないので中山1600の最内枠というのは懸念。
ヒストリアはアルテミスSで◎でしたが、新馬こそ素質の違いで差し切りましたが重賞となると中山<東京ではないでしょうか。それとやはりハーツクライですから、素質があるあると言いながら3歳のこの時期に推しまくるのも違うのではないかと。
素質という面ではキュイキュイはこの中ではアエロリットに次ぐNo.2だと思っています。ハービンジャー産駒らしい柔体質と関節の柔らかさがみてとれます。
配合的には週中望田先生は母母ルフィーラがNorthern Dancer、La Troienne、Flower Bowl≒Aureoleがデインヒルと脈絡すると書かれていたようにデインヒルを増幅した配合で、個人的にはナカヤマフェスタ産駒を想起させます(笑)
ただマイルというよりは1800ベストというイメージですから中山マイルが気になるところ。
メローブリーズはその機動力に期待して函館2歳で◎(8番人気4着)でしたが、前走で素質を証明。その前走はビルズトレジャー(次走ホープフルで悪くない競馬)、ハウメア、バリンジャー、ジョーストリクトリと平場の500万にしてはなかなかのメンバーでしたし、母父エルコンドルパサーらしい機動力、母はKnown Factを通じてTom Foolを持つのでモデルスポートのTom Fool≒Spring Run2×3を継続するTom Fool≒Spring Run6・7×7でもありますから中山マイルは◎
あとは岡田牧雄さん名義の2頭。ブラックオニキスは能力はあると思いますが母父チーフベアハートの影響か少し緩さを感じるので中山マイルは短いと思うんですよね。時計の掛かる中距離がベストという見立て。ライジングリーズンはブラックタイド×キングカメハメハ×ブライアンズタイムですから外枠は残念ですか東京<中山ではあるでしょう。
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中山5Rのスターライトブルーは、ホワイトマズル×ジャングルポケット、3代母父もノーザンテーストというHyperionの豊富さで、こういうタイプがデビュー戦で東京で斬れているのをみると将来性を感じます。菊に出走してほしい1頭。
中山6Rには千葉セリで3000万で競り落とされたフジマサスターダムが登場。これはnetkeibaの掲示板にあるメテオさんの書き込みを引用したいと思います。
フラワーパークの主要血脈をクロスしている(Night Shift≒ノーザンテースト3×4、Habitat5×5、Derring-Do≒A. 1 5×5、Abernant≒チャイナロック7・7×6・5やAureole7×7ほかを通じたHyperion(とSon-in-Law)血脈が共通)なので面白いかも。
ダーレーのキングズベスト産駒カンタンテは、Soaring~Balladeの牝系で叔母にマリーンウィナー(ホワイトフーガの母)がおり、自身はNureyev≒Sadler's Wells4×3と筋は通っています。
ナカヤマフェスタのヘヴンオンアースは、母父プラウドデボネアがAlibhai→Traffic Judge、Heliopolisを持ち自身はLyphard5×3、悪くない配合ですし陣営も「初戦から勝ち負けできるものは持っている」
京都10R寿Sはこのブログに何度も登場させていますが問答無用でナカヤマフェスタ×タニノギムレット×フジキセキでHis Majesty=Grausutark、サンデーサイレンス3×4のヴォージュ、もう1つ2つレベルアップできる馬だと思っています。
明け4歳のジョルジュサンクは、ここは相手関係がどうかですが猛烈なピッチ走法なので京都内回り2000の内枠という条件は絶好に思えます。
中山最終のジェネラルゴジップはパワーに寄ったディープ産駒なので初中山は歓迎、それでいて田辺騎手というのえすから非常に楽しみ。
気性が難しいプレイヤーハウスの距離短縮も気になるところ。
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【参考】
『日本サラブレッド配合史―日本百名馬と世界の名血の探究』(笠雄二郎著)
望田潤氏のブログ
栗山求氏の連載『血統SQUARE』
http://www.miesque.com/motomu/works.html
『覚えておきたい 日本の牝系100』(平出貴昭著)