4歳上500万下

「血統表」と「現実」のすり合わせ、競走馬の「個性」を「解釈」する―

雑感 ~ 第160回天皇賞(秋)

 

▼思いどおりにならないから「あーだこーだ」と考える。それが競馬が単なるギャンブルではなく人を惹きつける理由の一つだろう。「ほかの可能性はないか」と考えに考えて結論に到達させる「予想」という行為が面白い。

天皇賞・秋、最初に浮かんだのはスワーヴリチャード横山典弘騎手の「内枠」「先行」だ。おそらくリチャードも2000m前後がベスト、「5歳になって大成するハーツクライの先行」(リスグラシューの宝塚とか、シュヴァルグランJCのとか、ワンアンドオンリーのダービーとか...)にも当てはまる。

▼ユーキャンスマイルの「左回り」「岩田康成騎手」「内枠」もみんな考えていて、この2頭は「それなりの」人気だ。タイプは違えどキンカメ×ダンスインザダークは2015年の勝ち馬ラブリーデイと同じだ(本当にタイプが違くて2000ベストだとは思わない)。

▼「スローのヨーイドン」でヘヴンリーロマンスやカンパニー的に内から一瞬の脚で差し込める馬は...という発想になれば、マイル寄りに適性があって「内枠」のケイアイノーテックか、ピッチ走法で走るランフォザローゼスか。後者は不調のデムーロが久しぶりに...なんてことも考えたりする。去年も同じような発想でアルアインに期待したが大外を引いてしまった。マカヒキもHaloのクロスでそういうタイプだったが、どうもムキムキになりすぎている気がする。だからといってダートでもないんだけど。

▼ゴーフォザサミットは「ナスキロ血脈の母×ハーツクライ」という点ではスワーヴリチャードと似たような配合だ。だから大箱(直線が長いコース)向きで、「ハーツが3歳時の東京2400を勝ち切ってしまった」という点で「古馬になれば中長距離G1でヤレる」、少なくとも「目黒記念かアル共は勝つ」というイメージを持っていた。4歳になっても悪いレースはしていないが、思ったほど成長していない。...が、もしかするとリチャード同様2000前後がいいタイプなのかもしれない。そういう点で注目している。

▼アーモンドアイサートゥルナーリアは今さら語る必要もないが、サートゥルナーリアは「リオンディーズエピファネイアのいいところ取りした馬」であり、『あの!』エピファネイアをJCで3番手から勝たせた鞍上が騎乗するのだ(決してサートゥルナーリアの方が上だと言っているわけではない)。

▼彼らに一矢報いるなら、2頭より前にいる馬...というのは誰もが考えることだろう。「力強く」急坂を駆け上がって残り200mで先頭に立てる馬がいるではないか――ダノンプレミアム

デインヒルパワーで加速(といってもディープなのでEnableやFrankelのほどパワーに寄り過ぎていないのが日本的)するので、間違いなく直線には急坂があったほうがいい。そりゃあスローになればそのパワーだけで一瞬で加速できるから京都のマイラーズカップでも勝てるし、能力の違いで小回りの弥生賞も買ったけれど、大飛びだからどちらかというと大箱向きだ。皆が半信半疑だった金鯱賞を思い出せばいい。日本で大箱2000のG1はココだけだ。ダノンスマッシュ・ダノンファンタジ・ヴェロックス――「川田ここかよ~」「ダノックスここかよ~」というのも、「競馬あるある」ではないか。

 

“熱走”を期待する。

第80回菊花賞 雑感

▼ヴェロックスHyperionが豊富で激流である程度前に付けて持続力を活かした競馬が合っている。ハーツクライ系はこのHyperionが発現するまでに時間が掛かり、シュヴァルグラン(JC)やリスグラシュー(宝塚)やヌーヴォレコルトオークス)やワンアンドオンリー(ダービー)、そして本馬の父ジャスタウェイ秋天)のように、いつしか先行抜け出してHyperionの持続力を活かし切るレースができたときGIで勝ち負けする。この馬の場合、新馬戦から緩さがなく先行抜け出して持ち味を発揮できていた。若駒S若葉Sこの馬の真骨頂というレースだが、持ち味を引き出してくれた鞍上が素晴らしい。それでもかかる馬なのでダービーでは中団から。結果的に末脚を伸ばしていたが、あれば「伸ばした」というより、ジワジワ脚を「使い続けた」というイメージだ。超Hペースの秋天Hyperionマンのトーセンジョーダンが差し切ったように―。

一言で言えば、ダイワスカーレットのような馬だ。だからベストは中距離での果敢な先行。直線に急坂があればなお良い。が、菊花賞は京都だ。菊花賞では、ヴェロックスと同じくHyperion的な持続力を武器とするワンアンドオンリーが「アレ、伸びない」という負けっぷりだった。思えば彼も若い頃は掛かっていたので、中団からレースをしていた。ヴェロックスも3000で先行できるか? フツーの差しに回ったら斬れる馬にやられてしまうぞ。斬れるサトノダイヤモンドとか、掛からないキタサンブラックとは違う。

▼ニシノデイジールメール替わりで内枠、うまく折り合って末脚爆発だ―と誰もが考える。僕もその可能性はあると思う。ただこの馬の場合、「中山のコーナリングが上手い」ことが京都外回りで気がかりなのだ。つまり、フィエールマンのようにストライドを伸ばす末脚ではないということ。もちろん東京でも東スポ杯を勝っているしダービーでも5着だがそれは地力の高さが成せる業で、今回も「そこまで」な気がしなくもない。まぁそれでも好走確率が最も高いのはこの馬だと思う。馬場が少し悪いのも、他馬と相対的に見ればプラスだろう。

▼馬場で言えばヒシゲッコウも同じだし、素質があって鞍上が神。フィエールマンイメージはこっちか。これは外回り向きの重厚な斬れだ。

▼だが今回いちばん注目しているのはユニコーンライオンだ。ライオンRHだし、馬名もなんか微妙?だし、血統もようわからんし、勝つときも着差つけないし...掴みどころがないのでいつも過剰“不”人気である。印象的なのは、いつも矢作師や担当の助手さんが「能力は高いが」「真面目に走らない」「気を抜く」「幼さが抜けない」というコメントを出していたこと。そこに気を抜かせない岩田騎手がマッチした。

助手さんは「スタミナはある」ともコメントしているが、血統をみるとナスキロだらけ。ナスキロだらけでダラダラ走り続ける長距離ランナーというとサトノクラウンがいる。しかもクラウンが京都記念を連覇したように、3角からダラーンと坂を下る京都も合う。神戸新聞杯も一番嫌いなヨーイドンのわりにはよく走っていると思う。枠も最高、騎手も最高、荒れてきた馬場もイイ。

▼ほか気になる部分を書き殴ると、サトノルークスは姉タッチングスピーチのように夏を越して成長してきたし長丁場もいいと思うが鞍上がもっとガシガシ系が良かった。

▼メイショウテンゲンは母メイショウベルーガが京都鬼だったことだけ気になる。

▼レッドジェニアルも京都は合いますな。神戸新聞杯もかかったわりに踏ん張っていた。ただ内枠がほしかった。

▼ホウオウサーベルは鞍上も魅力だが、スタミナに寄り過ぎている気がする。菊花賞はスタミナ順に決まるレースではない。

 

フィエールマンの強さ

▼このブログにも「読者」は存在したようで「もうやめちゃったんですか」という趣旨のコメントをいただきました。ありがたや、ありがたや...。もちろん競馬はチェックしているんですが、いかんせんブログを更新する熱量にならず。頭では考えているんですけどね。

▼上半期のレースを振り返ったとき、まず頭に浮かぶのはアドマイヤマーズNHKマイルCだ。グランアレグリアも強いがアドマイヤマーズも相当強い。皐月賞はヴェロックスにマーズがやりたかった競馬をされて、そのヴェロックスに被されてワンテンポ仕掛けが遅れた。(ダイワスカーレットのようなHyperion的粘着力もあるが、スカーレットと違ってストライド走法なので)トーセンジョーダン天皇賞(秋)的にHyperion的持続力でジワジワ「伸び続ける」ことが持ち味のマーズにとって最悪の形だ。それでも3強に次ぐ4着を確保した。

 NHKマイルはマーズの実力を考えれば過剰不人気だった。1番人気はグランに譲ったとしても、グランの1.5倍とマーズの4倍超はないだろう。しかもマーズは「絶好の」外枠。皐月のように被される心配は払拭されていた。スタートを出て外目の3~5番手、スローになりそうならハナを叩いてメジャーエンブレム的なラップを刻めばいい―そこで1年以上ぶり(?)の馬券を購入するため、ウインズ渋谷へ足を運んだ。単勝でいいと思ったが、誰かが言っていた「単勝馬単総流しと同じ」という言葉を思い出し、強弱を付けた馬単総流しを購入した。

 ところが!出遅れて中団でのレースになってしまった。だから道中は完全にあきらめていた。しかし、である。それこそ、まさにトーセンジョーダン天皇賞のように「斬れる」というよりはジワジワと脚を伸ばして差し切ってしまった。2着のケイデンスコールも悪くないと思っていたので馬単は200円持っていた。そんなワケで4万円ちょっとゲットすることができた。

 マーズの勝利は、「メジャーエンブレム桜花賞で自分の競馬が出来ずに4着→持ち味を活かしてNHKマイル勝利」を想起させる。2歳王者(女王)という点も同じだ。「会心の勝利」という言葉がピッタリだった。

▼その次に印象的なのは、やはりダービー。「いやぁ、勝ち切るかねぇ...」と何度呟いたことか。でもこれが競馬の面白い所なんだよなぁ。サートゥルナーリアは敗れたものの、残り400くらいで「うぉ、きたーー」と誰もが思ったはず。まぁどんなに強い馬でも負けることはある。ディープの有馬記念を思い出した。

▼いいなぁと思ったのはフィエールマンだ。着差を付けずに勝つところがイイ。新馬はさておき、山藤賞とラジオNIKKEIで大外一気の競馬をしておきながら菊花賞は馬群を縫ってエタリオウとの叩き合いを制した。ただ者なワケがない。けっきょく、天皇賞もグローリーヴェイズを抜かせなかった。「着差以上の完勝」というヤツだ。野球やサッカーにもいえることだが、接戦を勝ち切ることが真の実力の証明だと思う。

 それにしてもフィエールマンのレース振りを見ているとハープスターを思い出す。阪神JFハープスターと川田優雅は、後方から馬群に突っ込んでレッドリヴェールに敗れた。「大外に出せばよかった」と少なからぬ批判を浴びた。そうだろうか? 川田騎手がどこまで考えていたかは知らないが、ビッグレースを勝つならそういう競馬を身につけさせた方がいいに決まっている。まして凱旋門賞は多頭数でスロー、道中や最終コーナーでの接触は当たり前のこと。ナカヤマフェスタvsワークフォースでも御覧なさい。あのJFのレース振りでハープスターがロンシャンの直線、馬群を割って抜け出てくるシーンが脳裏に浮かんだものだ。でも現実はご存知の通り。

 だからフィエールマンの菊花賞AJCC天皇賞の競馬は必ず凱旋門賞に活きてくるはずだ。しかも彼はフランス血統でフランス的な斬れを持っている。よく「欧州競馬」と一括りにしている言説もあるが、アスコットとロンシャンを、イギリスとフランスを一緒にされたら困る。もちろん日本以上にスタミナや精神的なタフさが必要とされる(馬群が凝縮されるので)が、ロンシャンは斬れが必要だ。1つ、フランス血統のリュヌドールの産駒であること。2つ、タフな競馬の経験が豊富であること。この2点から秋のフィエールマンが楽しみだ。天皇賞のとき、望田潤さんが「しなやかさが落ちている」という趣旨のコメントをしていたのが気になるが―。

有馬記念直前短考

▼中山内回りは、4角~短い直線&急坂でビュッ、グーンと加速しなければならないワケで、グラスワンダーのようなパワーやヴィクトワールピサのようなフワッとした機動力、ラブリーデイのような地面に吸い付くようなコーナリングが求められる。

そうなった時に、キセキの父譲りの重厚なフットワークは間違いなくマイナスとなる。中山内回りの有馬記念日経賞で父は勝ち切れなかった(もちろん、京都内回りの金鯱賞は勝ち切ったが、別に内回り適性で勝ったわけではなく、持ち前の持続力を活かすにはあの形がベストだっただけで相手が一枚下だった)。

もちろん、先行力を身につけたキセキだから3角からペースを上げ4角でセーフティリードを取って押し切る―ということも考えられるが、重厚ストライドで走る馬はキツイコーナーで負担が掛かっている(ストライドロス)。それこどグラスワンダーラブリーデイヴィクトワールピサの中山内回りや阪神内回りでのコーナリングと、ブエナビスタルーラーシップスペシャルウィークドゥラメンテのそれを比較すればいい。

ブラストワンピースモズカッチャンミッキーロケットもビュッ、グーンと加速できるタイプではないが、抑えるとすればモズとロケットか。両者ともに内でうまく立ち回れるし、ロケットに関してはファンの想像以上に力を付けている可能性がある。ブラストは来年の秋天がベストの舞台となるはずだ。

サトノダイヤモンドマカヒキは器用さも兼ね揃えているが中山2500の持続戦では厳しそう。強いて言うならサトノは普通の3着候補として見れなくもないが、過剰人気だし鞍上は長距離だと不安が残る。

▼それならば内で垂れないクリンチャーのスタミナと、どう考えても好配合なのに母数が少ないステイゴールド×タニノギムレットパフォーマプロミスの成長度に魅力を感じる。後者の字面以上の瞬発力は母母に凝縮されている米血の影響だろう。なかなか好みの馬だ。

▼中山内回りでビュッ、グーンと加速できる馬といえばミッキースワローサクラアンプルールだが、後者はこの枠で真っ向勝負だとさすがに厳しい。一方前者はJCでのパフォーマンスとローテーション、さらにアルアインをしっかりと完封した(セントライト記念)という事実に再度目を向けたい。緩みない流れの中山2500ならばレイデオロを差し切れる可能性がある。

血統表をみればわかるが、カンパニー的でカンパニー的小脚で走る馬だ。名手が札幌記念でのミスを取り返す―サクラローレル秋天→有馬を想起させてならない。

ミッキースワローレイデオロパフォーマプロミスの序列で少し買ってみます。

‟斬れ”と‟粘り”と体質

フィエールマン菊花賞を制しました。

また名文を貼っておきます(笑)

Noir et Orを見たことがなくても、Noir et Orの産駒や孫を見たことがなくても、その血統表から描けるイメージだけでオナニーできてしまうのが血統予想の面白いところなのでね
Noir et Orはたぶんサッカーボーイみたいなやつなんですよと、だからきっと京都外回りを上手にくだることができますよと、そういうイメージを提供できるような血統予想をいつも書きたいなあ…とは思っています
今年の菊花賞は、Noir et Orとステイゴールドが上手にくだって叩き合ったレースでした
でもいくら血統派がNoir et Orでうなっても、やっぱりスローでディープか、やっぱりノーザンか、やっぱりルメールか、とばかり言われるのはあんまり面白くない(^ ^;)

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4戦目、そして7月以来のレースで勝ち切ってしまったことは偉業としか言いようがありませんが、今年の菊を観て想起したことはフランス血統の‟斬れ”

日本ではHighest Honorが代表的でしょうか、レーヴドスカーの産駒、そしてジュエラーなどフランス血統は斬れに斬れる。しかし、その分体質的な弱さがネック。

一方、その分キタサンブラックダイワメジャーに代表されるHyperion的な粘りは体質的な強さも兼ね揃えています。キタサンはまさに無事之名馬、ダイワメジャーも怪我を克服して活躍しました。

デニムアンドルビースマートレイアーもそうでしょう。デニムは怪我を克服した後も牡馬混合重賞で善戦、スマートレイアーも息の長い活躍を見せていて距離適性が伸びてきたのもHyperion的です。

レースで粘るためには、心肺機能的な特質ももちろんありますがそれ以上に精神的な強さも必要。そしてそれは怪我の克服とも無関係ではないと思うのです。

彼らの母系の血統表を凝視してみてください。 

 

秋天はレースの質によってマイラー(寄りの馬)が好走したり(リアルスティール。モーリスはちょっとモノが違ったかな)、ピッチ走法(カンパニー、スクリーンヒーロー)が好走したり、重厚ストライドスペシャルウィークメイショウサムソン)が好走したり、Hyperionの持続力が爆発したり(ダイワスカーレットジャスタウェイキタサンブラックダイワメジャー)します。

だから、もしトウケイヘイローが飛ばしたジャスタウェイ秋天がスローだったらピッチ走法のコディーノ(5着)がもっと善戦していたかもしれない(まぁそれで2着を死守するジェンティルドンナはやはり名馬なのですが)。

これは天皇賞だけでなく東京のレース全般に言えること(安田記念もスローだと小回り中山記念向きのロゴタイプが勝てる)で、今年の秋天は中山向きの馬が先行出し抜けするんじゃないかと思っています...

そういうレースになるとスワーヴリチャードが安田記念を使ったのはプラスに働きそうかなとも。