サトノアーサー ~ ディープ×デインヒル / 気になる4角でのモタつき
何事もそうですが、全体像を掴む(イメージする)ということは非常に大切だなと感じます。
それは、「競走馬の血統・配合」においても同じで、「どういう馬なのか」という馬の「個性」を考える、解釈するミクロ血統学と、「強い馬を生産する」ための「マクロ血統学」という目線を持ちながら考察していきたいです。ファンである我々は、前者を考察することの方が多いですね。
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ディープインパクト産駒は、配合的に「父再生産型」と「母パワー中和型」の2つに大別できると考えています。
「父再生産型」とは、父の瞬発力の源であるHalo≒Sir Ivorを継続し、かつ母からパワーも補っているような馬。サトノダイヤモンドやマカヒキやシンハライトやヴィブロスなど。
「母パワー中和型」とは、パワーやスタミナに偏重した母に父の柔軟性を注入し、その「剛」と「柔」のバランスが取れた馬。ジェンティルドンナやディーマジェスティやミッキーアイルやサトノアレス、スピルバーグ=トーセンラーもこちらと言っても良いかもしれません。
「母パワー中和型」は、ディーマジェスティのようなややズブい中長距離馬か、ミッキーアイルやサトノアレスのような短距離馬に出ることが多いですが、血統表の中のプラスの要素が完璧に伝わればジェンティルドンナ級の名馬が誕生する可能性があります。
ディープ産駒の「母パワー」と言ったところで思い浮かぶのが、デインヒル。Burghclereと脈絡する最強Flower Bowl、Halo≒Sir Ivorと脈絡するTom Fool、そしてHaloの母Cosmahと3/4同血のNatalmaをNorthern Dancer+もう1本持つことが相性の良さの理由でしょうが、パワー優先であることに違いはありません。
サトノアーサーは、母キングスローズがRedoute's Choice(←デインヒル)産駒でNorthern Dancer4・5×3・5・5と、圧倒的なNatalma血量
Redoute's Choiceは、3代母Dancing ShowがNijinsky×Sir IvorなのでFlaming Page≒Attica2×3という配合で、母父Canny LadはHyperionとFair TrialのクロスでこれはFlower Bowlと脈絡
つまりRedoute's ChoiceはデインヒルのFlower BowlとTom Fool(≒Flaming Page≒Attica)を増幅した配合で、ここがそれぞれディープのBurghclereとHaloやAttica→Sir Ivorを脈絡
パッと見、デインヒル系×NureyevでNorthern Dancerが多い硬派な配合ではありますが、Redoute's Choiceはディープ血統構成を綿密に増幅しています。
(また、Burghclere≒Flower Bowl3×5に加え、母系にMiranda(=Pretty Polly)の血を引くLe Fabuleuxを持ちます(Burghclere)。)
柔らかすぎないわけではないけれど、かなり柔らなフットワークで走るというのは、先日新馬を圧勝したファンディーナと被るところがあるな~と思います。
それはやはり、どちらもSir Gaylordをクロスしているからに違いないでしょう。
サトノアーサーで気になるのは、デビュー戦での4角でのモタつき。新馬戦で緩めのつくり&道悪が影響したと思いますが、3歳で頂点を極めた馬たちは、マカヒキもサトノダイヤモンドもこういうモタつきはみせませんでした。
こういうタイプですから、きさらぎ賞の行われる、「下って平坦」の京都外回り1800mはかなり良い条件ですが、ダービー最有力と呼ぶのには首をかしげたくなります。
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【参考】
『日本サラブレッド配合史―日本百名馬と世界の名血の探究』(笠雄二郎著)
望田潤氏のブログ 血は水よりも濃し 望田潤の競馬blog
栗山求氏の連載『血統SQUARE』http://www.miesque.com/motomu/works.html
『覚えておきたい 日本の牝系100』(平出貴昭著)