4歳上500万下

血統好きが大学生のころ書いていたブログ(今でもたまに更新)

《回顧》有馬記念 ~ Haloクロス躍動の一方で、男性的な馬も活躍した2016年

 有馬記念

◎1.キタサンブラック

〇14.シュヴァルグラン

▲11.サトノダイヤモンド

△10.アドマイヤデウス

★13.デニムアンドルビー

 

以下のエントリー書いたが、これほどまでに「着地点≒序列付け≒印打ち」に悩んだレースもそうない。

derby6-1.hatenablog.com

キタサンブラックは馬の個性でみれば、「父中長距離馬×母父短距離馬という配合系」らしい機動力にウインドインハーヘア的粘着力が武器だから明らかに東京2400<中山2500だが、それでも様々な外的要因により「東京2400で勝ち、中山2500で負ける」ということがあるのが競馬の世界。昨今の日本競馬は大箱のGIでスローペースというのが顕著だからどうしてもその可能性に目がいってしまう。好調ではあるもののJCの方がデキは上であろう。

テンの速いマルターズアポジーがいて、3角からレースが動くことも多い有馬記念、それならばハーツクライ譲り、アイリッシュダンス譲りのスタミナが伝わっているシュヴァルグランの逆転の方がイメージはし易い。Haloクロス、「父中長距離馬×母父短距離馬」らしい機動力もあり内回りも苦にしない。そしてハーツクライ(ディープインパクト)もジャスタウェイ(ジェンティルドンナ)も大物食いをしてきた。

こんなに迷うならば、昨秋とは状態が違く、JCを回避したことにも好感が持て、Fall Aspen、トニービンアドマイヤラピスという名血からHyperionを受け継ぎ、同舞台の日経賞のレコード勝ちが忘れられないアドマイヤデウスや、東京で斬れていた3歳時から、阪神大賞典/宝塚記念でみてとれるようにフェアリードールのHyperion的延着力が発現してきたデニムアンドルビーに◎を振ってしまおうとも思った。

それでもそれでも、宝塚記念的な敗戦がイメージできても、シュヴァルグランの持続差し切りの方がイメージし易くても、それだからこそ◎はキタサンブラックとしたい。きっとディープ産駒の差し馬でこの戦績ならもっと圧倒的な人気だったはずだ。

サトノダイヤモンドは菊は強かったがあの着差はディーマジェスティとの京都適性の差とみているし、地面を叩き付けるような走法だが胴長体型のためどちらかというと大箱向きに思える。中山2500ならシュヴァルグランの方が先着しそうなイメージだ。

サウンズオブアースマリアライトも切りがたいが、それ以上に△★への想いが強い。

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強い馬が強い競馬をした、レースとして見応えのある有馬記念でした。

キタサンブラックが4角で先頭に立ち、ゴールドアクターに並びかけられたとき、皆さんはどのような気持ちになりましたか。私は、寸分たりとも「ゴールドアクターに交わされる」とは思いませんでした。彼の粘着力/勝負根性は並ばれてからこそ活きるのだ、このことをこの1年間で何度も目にしてきたからです。

新馬戦と500万は力の違いで差し切った。

スプリングSで、「父中長距離馬×母父スプリンター」という配合系らしい「フワッ」とした機動力を見せつけた。

皐月賞は、圧倒的に先行有利の馬場(クラリティスカイも5着)で、クラリティスカイの作る厳しいペースだったが3着に好走(◎だった)。

ダービーはまだ完成しきっていない中でのかなりのハイペース、そして新馬皐月賞まで関東に輸送してきた疲労もあったはず。

 

さて問題はここからで、宝塚記念まで様々な難癖を付け無印にし続けてきました。その度にいつもこちらの推測を上回ってきたのがキタサンブラック

セントライトは、らしい「フワッ」とした機動力で制したが、ペースに恵まれただけだと思っていた。

菊花賞は、(ステイゴールド産駒が多く好走しているように)Princely Giltらしい下り坂適性と、内で我慢し続けた北村宏司騎手の超好騎乗の賜物だと思った(今では、あの勝負根性は一流馬のそれだったとも思うが)。

有馬記念は、リアファル×ルメール騎手が菊花賞と同じ轍を踏まんと、ハイラップで逃げると考えていたが、またもや緩い流れでと展開が向いただけだと思った。

大阪杯も馬場と展開が向いていた。

天皇賞(春)は展開と、京都(下り坂)適性。しかし、今となればあの「明らかに1度差されてからの差し返し」には、HyperionとSon-in-Law→Lady Jurorらしい「抜かせない力」だと思える...

そうしてようやく、ここまで馬場や展開といった外的要因が向き過ぎていた(もちろん、先手をとって自分の流れに持ち込ませる先行力があることも素晴らしい)から、さすがに春天ほど楽な競馬にはならないだろうし、させない陣営がいるだろうと悲観的に見ていた宝塚記念で度肝を抜かれた。

derby6-1.hatenablog.com

キタサンブラックは、Lyphard4×4とDonatelloとノーザンテーストとWordenによるPretty Polly=Mirandaの継続により、こちらの想像以上にウインドインハーヘアの、Burghclereの粘着力/持続力が伝わっている馬だ」とも書きましたが、LyphardというのはNorthern DancerにCourt Martialなので、HyperionとLady Juror→Fair Trialであり、ノーザンテーストというのはLady Angela3×2経由のHyperion4×3

このHyperionとFair Trialによる粘着力/粘り腰はダイワスカーレットハーツクライキャプテントゥーレと同じで、配合の入口と思いますが本当に好みです。何かこう、男性的な感じがするのです(⇔女性的な斬れ:リスグラシュー/サトノクラウン)。

後述するサトノダイヤモンドはじめ、Haloクロスの斬れや機動力が結果を残した2016年ですが、キタサンブラックだけでなく、メジャーエンブレムという男性的な馬がGIを制したことも嬉しかった。

ダイワメジャー(というよりHyperion5・4×6のスカーレットブーケ)に、Sadler's Wells(HyperionとFair Trialを持つ)とHigh Top(Fair Trialを持つ)とDanzig(HyperionとFair Trialを持つ)を持つキャッチータイトルを合わせて生まれたのがメジャーエンブレム

桜花賞の鬱憤を晴らしたあのNHKマイルCは、サトノクラウン香港ヴァーズと並んで今年のベストレースです。

 

サトノダイヤモンドの、「胴長の体型だけど思い切りストライドを伸ばして走るのではなく叩き付けるような走法になっている」というのは、Haloやマルペンサのパワーの影響と考えられますが、胴長でストライドで走りすぎるとコーナーで加速ができませんから(Ex:ワンアンドオンリー)、非常に効率の良い走りといえます。

今日のレースのように何でもできる万能性というのはHaloらしいといえますね。

 

そして「Haloらしい」というのは、今年の日本ダービーマカヒキのダービーでのレース振り。皐月賞まで後方からの競馬をし続けていましたが、最内枠から中団を取って折り合った...というレース振りがまさにそれ。

 

偏にHaloといっても、どのように影響を与えたかというのは個体ごとに異なるよなぁというのは良く考えていたことです。

ストレイトガールHalo3×4は、母のデインヒルパワーでダ1200を走るような馬になりそうなところを、芝向きの軽やかなスピードや柔体質に変えたというイメージ

サトノダイヤモンドマカヒキは、どちらも胴長体型だけれども、ストライドを伸ばし切る走法でなくしたというイメージで、これは内回り(コーナリングが求められる)でのレースでもでもマイナスにならない、相対的にみた場合はプラスにさえなり得るようになっている。

 

そして、天皇賞(春)もダービーも安田記念秋華賞菊花賞エリザベス女王杯有馬記念も、スローペースでややインコース有利というレース結果だったけれど、それは日本の「淘汰の基準」なのであり、だからこそ日本の血統レベルが世界最高峰に高まっている。日本競馬らしいレースを観る度に栗山先生の馬場に関するこの見解を思い出します。

そしてその一方で、名馬が産まれるためには「相反する要素を伝える血」が必要ですから、今日の日本競馬においての「淘汰の基準」とは異なる血ということも重要と思います。

その点でも、キタサンブラック/メジャーエンブレムという、粘着力を武器とする2頭がしっかりと結果を残したという事実は嬉しいです。

derby6-1.hatenablog.com

 

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【参考】

kuriyama.miesque.com

kuriyama.miesque.com

kuriyama.miesque.com

blog.keibaoh.com

 

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そしてキタサンブラック/メジャーエンブレムに影響を与えているFair Trialも、Haloのサイアーライン上にあるRoyal Chergerも、牝祖はLady Josephineであるというのはすごい...

 

シュヴァルグランは4角でスタミナを信じ、機動力に任せて動いた強気の競馬。こういう競馬をすることは大事だと思います。まだハーツの4歳、来年が本当に楽しみ。

デニムアンドルビーも3角から追っ付け遠し、それで最後まで脚は上がっていませんから好内容でした。サトノダイヤモンドキタサンブラックゴールドアクターシュヴァルグランと比べるとコーナリングが上手くないのが分かりますが、「時計の掛かる外差し馬場」ならGI級

ラストタイクーンAlzao的な緩さが残っていた3歳時は「斬れ」を感じさせていましたが、阪神大賞典2着/宝塚記念2着をみると、やはり母のキングカメハメハ×フェアリードールらしさを感じます。

アドマイヤデウスは、(外が伸びないレースだったので今回は厳しかったと思いますが)中山であれば、日経賞のような捲る競馬がみてみたかったです。やはりGIの中山で内で我慢する競馬だと、直線に向いて相当な「反応の速さ」を求められるように思います。

 

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【参考】

『日本サラブレッド配合史―日本百名馬と世界の名血の探究』(笠雄二郎著)

望田潤氏のブログ 血は水よりも濃し 望田潤の競馬blog

栗山求氏の連載『血統SQUARE』http://www.miesque.com/motomu/works.html

『覚えておきたい 日本の牝系100』(平出貴昭著)