《回顧》阪神JF/香港ヴァーズ ~ サトノクラウン、ヴゼットジョリー...Welsh Pagentに惹き付けられていた。残るはアンビシャス。
サトノクラウンが遂にGIを制しました。「絶対に種牡馬になるんだ」(なんて思っていないだろうが)という、ステイゴールドのような執念の差し切りでした。
僕の競馬への入り口となった馬がブエナビスタならば、血統配合への関心を最大級に高めたのがサトノクラウンであり、間違いなく1番血統表を眺めた馬だと思います。
彼の血統(下記)を理解しようと考察し続けたことで、みえる世界が変わったとでも言いましょうか。
母がMr.Prospector3×4とSir Ivor≒Hopespringseternal3・4×4で、強力な父母相似配合で、自身はそれをラストタイクーン≒Touch of Greatness(Northern DancerとナスキロとAttica≒Tom FoolとSearching≒Busanda)のニアリークロス2×3を幹とする、「Northern DancerとナスキロとTom FoolとLa Troienne」の組み合わせの継続クロス
Northern Dancerと+ナスキロとTom Foolと「War AdmiralとLa Troienne」とハイインローという現代におけるキーとなる血や組み合わせを、考えうる最良のラインを経由して受け継いでいるこの名繁殖牝馬は(Sir Ivorは母父としては最強の血ですから)、Alzaoともラストタイクーンとも、Sadler's WellsともデインヒルともGreen Desertともきれいに脈絡しニアリークロスになる
ミクロな話をすれば、天皇賞のときにも感覚的なものでしかありませんが「天皇賞というよりジャパンカップというイメージ」と書きました。
Marjuも母系はHyperionとFair TrialとDonatelloという重厚重要な欧血の凝縮だし、ジョコノダⅡも母系はHyperionとCourt Martialのクロスがあります。京都記念だって所謂「軽い斬れの1800馬」だったらできないパフォーマンスです(宝塚だって強い競馬だった)。
あのダービー以来の2400で、もがいた末に手にした香港のGIタイトルはドゥラメンテだって喜んでいるはず。そしてサトノクラウンと双璧をなす同世代の素質馬アンビシャスも2400でゆったりと走らせてみたい、もっといえばジャパンカップでスミヨン騎手騎乗で前付けさせてみたい...そう感じました。
脱線しましたが今回のヴァーズはサトノクラウンの一つの答となったし、今後のローテーションが気になります。シーマクラシック、春天、欧州12F、来年こそジャパンカップ...
以下は望田先生のブログのコメント欄から
rodさん
(同じMarju産駒の)インティジェナスは香港のスロー上がり勝負が合わなくて、90年代のJC特有のワンペースのタフな流れで一変した
望田先生
サトノクラウンは意地みたいな◎でしたが、私はデビュー当時からずっと2000mの馬やと思ってました。でも私の知るかぎり、たった一人だけ「あの馬の末脚は欧州12Fの馬のそれだ」と言ってた人がいた
そうかサトノクラウンは長いところで前半ゆったり走ったときは必ず好走している、それに気づいたときにあのMahmoudさんの言葉が蘇ってきたのです
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◎⑰ヴゼットジョリー
〇②ソウルスターリング
▲⑱リスグラシュー
△⑧サトノアリシア
★①ディーパワンサ
阪神外回りに舞台が変わってから、昨年のような例外(メジャーエンブレム)もあるがウオッカやブエナビスタ、トールポピーといった、「東京2400ドンと来い」という中距離馬の斬れがモノをいうレースになった。
今回それに該当するのは、ソウルスターリング/リスグラシュー/ヴゼットジョリーの3頭。
〇ソウルスターリングも▲リスグラシューも素質は相当で、オークスでこの2頭がワンツーフィニッシュをしても何ら驚けないほどだが、今回敢えて懸念材料を申し上げるとすれば、前者は内枠がアダになる可能性、後者は小柄な体での連戦/前走みせた気性の幼さ(戸崎騎手なら信頼が置けるが)がある。
一方◎ヴゼットジョリーはHaloの影響か気性面の課題は少ない。欧血が凝縮された母母フェンジーの影響で重厚な斬れ方をする馬で、新潟2歳のメンバーレベルは高いとは言えないのだが、こんな斬れ方をする ー ハープスターやロードクエストやミュゼスルタンやモンストールらとは違うタイプ 馬が2歳時のマイル重賞を楽勝してしまったという事実は軽いものではない。昨年の牝馬3冠路線で、母のスタミナで持続戦になると必ず突っ込んできたアースライズ(オークス4着/秋華賞5着)のようなキャラになるのではないかと考えているが、良い意味で期待を裏切ってほしい。その可能性を感じる新潟2歳だった。
パワーがあり阪神替わりがプラスの△サトノアリシアが穴目では面白く、1400ベスト勢からは前走で脚を余し今回最内枠の★ディーパワンサが最も妙味があるか。
「〇ソウルスターリングも▲リスグラシューも素質は相当で、オークスでこの2頭がワンツーフィニッシュをしても何ら驚けないほど」と書いたように、昨年の朝日杯のリオンディーズ→エアスピネルに似た雰囲気を感じてはいたものの、ベルルミエールのファルコンS4着→NZT3着の粘り腰が思い出され、いやそれならば阪神マイルで◎は違うだろうと葛藤しながらも、この血への気持ちが優りました(笑)
距離が短い中で、馬群に突っ込むという競馬を経験、非常に良い負け方だったと思います。かなり重厚な斬れ方ですから距離を伸ばしたオークスで◎です(やや前付け希望)。
と、ここまで書いて思いましたが、Marjuは母母がWelsh Flame(父Welsh Pagent)、ヴゼットジョリーは母母父がSaumarez(母父Welsh Pagent)、アンビシャスは3代母Fiesta FunがWelsh Pagent産駒のSaumarezの妹
無意識のうちに惹かれていた3頭。Welsh Pagentに引き寄せられていたのかもしれません。
ソウルスターリングは、His Majesty=Graustark5×7が嫌だなぁと思っていたのですが、あの独特の美しさしなやかさというのは、1/4非Northern Dancer、Monsunが成せる業なのでしょうか。牝馬のMill Reef、Tom Fool≒Spring Run7・7×8...うーん。
日本でFrankel産駒が走るならミスエルテのようなMiswaki増幅が基本形でちょっとソウルスターリングは別物でしょう。
牝馬のMill Reefといえばリスグラシューがそう。リリサイドが優駿な繁殖であろうことは誰もが感じていたことだとは思いますが、ハーツの定番「母Northern Dancerクロス」でも自身がLyphard4×5・4だとちょっと重厚なタイプに出るかと思っていてPOGでは選べませんでした。
ディーパワンサ/レーヌミノル/ジューヌエコールはフィリーズレビューで対戦でしょうか。内枠引いた馬が勝ちそうですが(^^;)
しかしサトノクラウン→ソウルスターリング→モーリスと、血統派にはたまらない1日でした。
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【参考】
『日本サラブレッド配合史―日本百名馬と世界の名血の探究』(笠雄二郎著)
望田潤さんのブログ http://blog.goo.ne.jp/nas-quillo
栗山求さんの連載「血統SQUARE」http://www.miesque.com/motomu/works.html
『覚えておきたい 日本の牝系100』(平出貴昭著)