第95回凱旋門賞/第50回スプリンターズS 回顧
凱旋門賞
勝ち時計が日本ダービーよりも速い2分23秒61、レース映像を観る限り2000m(残り400m)通過が1分59秒37、Mahmoudさんの試算によると、レースの上がりが36秒63ということですから、究極の持続戦で、こういうレースで、3角~4角がかなりきついシャンティイで終始1番外を回されたマカヒキは、さすがにどうやっても勝てません。マカヒキが好走するレース質と全く正反対のものとなってしまいました。今回については、「レースは生き物」、この言葉に尽きると思います。ディージマジェスティ、もっといえばフェイムゲームなんかが出ていたらどれくらい走れたのだろうと考えたくなるレースの質でした。
Foundは、ムーア騎手に尽きるでしょう改めてどういう騎乗をしたかは書くまでもありませんがすごすぎた。
配合的には、ぼくはHopespringseternal≒Past Example4×5に目がいきますが、やっぱりGalileo×Intikhabでスタミナ×パワー。母がNorthern Dancer5×3、自身がNorthern Dancer3×6・4で、Urban Seaだけ非Northern Dancerという形でもあります。全体的にNorthern DancerやMr.ProspectorやHopespringseternal≒Past Exampleなど重要血脈をクロスしてある相似配合系ですが、Allegrettaと3代母Martinovaの部分は、Tom FoolやNearcoのクロスがうっすらできるくらいで、この3代目に位置する牝馬が1/4異系になているというのも良いですね。
Highland Reelは何とか穴として取り上げられたので良かったですが、「ピッチ走法だけど持続型」というヴァンキッシュランやレッドエルディストのようなタイプで、セクレタリアトSや香港ヴァーズをみてもコーナリングはラブリーデイのように巧い。JCよりも有馬記念で見てみたくなりました(^^;
Order Of St GeorgeはHopespringseternal≒Secrettame≒Weekend Surprise4×3・4、Mr.Prospector4×3・5と、こういう軟質なスピードがスタミナとなって発現していると考えていて、戦績通りスタミナが問われる流れが向いたことは言うまでもありません。
近年だとDanedreamが勝った年に近いレースだったんですね、Treve→Treve→Golden Hornの3年をみてきたぼくとしては、今年はペースメーカー、Vedemaniがハイラップで飛ばし、近年と異なりこういう流れになってマカヒキは厳しいだろう、という結論には何回やっても行き付けなかったでしょう...
逆にこの流れでみたかったのはLa Cressonniereで、Aloe→Feolaの名牝系にHyperion→Borealisと配された5代母HighlightはHyperion3×2、そこにFair Trial3×3のQueen's Hussarを配された4代母Light o'Battleは実にBurghclere的、Mill Reefを挟んでKris、Galileoと配されたAbsolute Ladyの仔。
こんなことを書いていると、Burghclere的なスタミナが発現した、ウインドインハーヘアらしいブラックタイドの息子、キタサンブラックに来年の凱旋門賞を走ってほしいという気もしてきます。
たまに日本馬の勝利は、オルフェーヴルレベルじゃないと厳しいんですかね?という声を聞きますが、そんなことはないと思います。もちろん、オルフェーヴルのように、コース・ペース・馬場を問わずに好走できるレベルの名馬であれば勝利する可能性は高いといえますが、たとえば近年だとTreveが連覇した年くらいの流れを、ジェンティルドンナがムーア騎手を背に内枠に入っていたり、ジャスタウェイ陣営がペースメーカーを使い、サトノシュレン的なラップを刻んでいても好勝負出来たんじゃないかと思います。今年もフェイムゲームなら、外から追い込んできたNew Bayを交わしてPostponedにも先着できたんじゃないかという気もしますし(笑)
今年は、日本で最も大成しにくい「先行力のあるスタミナ型」が好走する馬場状態・流れで、仕方ない敗戦といえるでしょう。
スプリンターズS
スプリンターズSは、望田先生の回顧が素晴らしすぎて(今日はこれを読んで眠気が飛んだ)...。
やっぱり生粋のスプリンターの持ち味が活きる流れとは言えなかったし、そういう流れをビッグアーサーは作れなかった。
といっても、今回は田辺騎手がすごかった...という方が先にくるレースでしたが。
中山で行われた過去15年の前半3Fを並べてみても
16 33秒4
15 34秒1
13 32秒9
12 32秒7
11 33秒0
10 33秒3
09 32秒9
08 33秒6
07 33秒1(不良)
06 32秒8
05 32秒9
04 33秒6(不良)
03 33秒3
01 32秒5
00 33秒0(稍重)
99 33秒2
98 32秒9
さすがに昨年よりは速いですが、32秒台で入ることが多いスプリンターズSで、33秒4は遅いと言わざるを得ません。ミッキーアイルが逃げているのですから、さすがに32秒台では入れません。
ミッキーアイルもサトノルパンもレッツゴードンキもブランボヌールもウリウリもレッドアリオンもダンスディレクターもサクラゴスペルも生粋のスプリンターではありませんから。
サンデーサイレンスの孫が種牡馬として猛威を振るうこの時代ですから、もう1200mのGIはこういう流れになり易い、と決め打って予想した方が良いのかもしれませんね。
レッドファルクスは母がスティンガーの全妹でHalo≒Chieftain2×4で、やっぱり1400質のフワフワッとした瞬発力にみえて(芦毛だからかもしれませんが)、CBC賞はラップ的には強くないと出来ないパフォーマンスなのだろうけれど、ああいう後傾ラップを差し切る競馬は生粋のスプリンターではないからできた芸当だとも思った。
とはいえ、左トモが甘かったこの馬が、右回りでGIを勝つまでに成長したことは賞賛しなければなりません。
ベルカントはテン乗りが響いたのか、ラチを頼れずにモタれてしまって、けっきょくスプリンターズは2年連続で力を出せずにお母さんとなります。
ビッグアーサーは、香港でガチンコしてくれば良いんじゃないでしょうか。
【凱旋門賞】血統考察 byうまカレ|競馬コラム|競馬予想のウマニティ - サンスポ&ニッポン放送公認SNS
【スプリンターズS】血統考察 byうまカレ|競馬コラム|競馬予想のウマニティ - サンスポ&ニッポン放送公認SNS
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【参考】
『日本サラブレッド配合史―日本百名馬と世界の名血の探究』(笠雄二郎著)
望田潤氏のブログ 血は水よりも濃し 望田潤の競馬blog
栗山求氏の連載『血統SQUARE』http://www.miesque.com/motomu/works.html
『覚えておきたい 日本の牝系100』(平出貴昭著)