※追記(2017.05.18)
ハービンジャーの配合については望田先生の以下の考察が非常に有効と思います。
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ハービンジャーはNorthern Dancer系で最も発展しているDanzig→デインヒルのラインでキングジョージを楽勝。ただ、デインヒル系はパワーがありすぎるためか、日本ではそれほど結果を残せていないというのは周知の通り。
産駒を見ていると、デインヒル系ながら「柔らかさ」は伝える種牡馬のようで、これはサンデー系の母と多く交配されていることと、ハービンジャーの母父Beringの仏血、さらにSir Ivor→Sir Gaylordの影響ではないかと考えます。
簡単に代表産駒について考察していきますが、以下4点のポイントに注目してみていきたいと思います。
- 母父Beringの2代母父Le Fabuleux
- 2代母父Shareef Dancer
- Flower Bowl≒Aureole5×6(HyperionとSon-in-Law)
- ハイトット≒Aureole5×6(HyperionとDonatello)
Le Fabuleuxは、スタミナと底力がある父Wild Risk、さらに3代母父Sans Taresの父Sindの2代母MirandaはPretty Pollyの全妹を持つ重要血脈です。
Shareef Dancerは、Northern Dancer×Sir Ivor×Tom Foolという日本向きな配合で、母Sweer AllianceはSir Ivor×Tom Foolですから、Attica≒Tom Fool2×2というなかなかすごい配合。軽さ、切れといった日本的な資質を引き出すにはここを攻めるのが良いでしょう。
Hyperion+Son-in-LawやHyperion+Donatelloは、底力や頑張りを与える血。
母母がゴールデンサッシュなのでLe Fabuleux≒Worden6×5というニアリークロスができます(Wild RiskとSans Taresが共通)。(京成杯優勝、小倉記念2年連続2着とコーナー4つの競馬で結果を残していますが、あの斬れ重厚な持続的な斬れで、さすがに東京や京都のヨーイドンではディープ達に叶わないから持続戦になり易い内2000mで好走しているだけで、「小回り向き」とは少し違うはずです。)
テルメディカラカラ
母がジョリーダンスなので、Sweer Alliance≒Drone5×4ができ、母自身も柔らかさ、切れを伝えるPromised Landのクロス。
さらにFlower Bowl≒Aureole6・7×7・8と父のニアリークロスを継続しています。
ワーキングプライド
母父フジキセキなのでLe Fabuleux6×4
母がMillicent≒Mill Reef4×4で、同じニアリークロスを持つアルバタックスのような大飛びのストライド走法。
トーセンバジル
母父フジキセキなのでLe Fabuleux6×4
クラフティワイフ牝系なのでSweer Alliance≒Wife Mistress6×4(ナスキロ+Tom Fool)となるのが大きいでしょう。
His Majesty=Graustark5×5、Sea Bird5×5
3代母がフェアリドールの欧血中心で、もっともデインヒル系らしいハービンジャー産駒。ハービンジャー産駒がGIを獲るならこの馬の京成杯のような形だろうと思う。
アグネスフォルテ
4代母がアグネスレディーなのでハイトット≒Aureole≒Alycidon6・7×7(Hyperion+Donatello)、Flower Bowl≒Aureole≒Tudor Minstrel6・7×8・7(Hyperion+Son-in-Law)、この粘着力で走っているような馬。
ウインクルサルーテ
Shareef Dancer≒ダンシングブレーヴ4×3(Northern Dancer、Sir Ivor≒Drone)
ジェラシー
3代母がグレースアドマイヤなので、ハイトット≒Aureole≒Alycidon6・7×8
ロカ
母父ダンスインザダークでFlower Bowl≒Aureole6・7×7、母母ウインドインハーヘアでShareef Dancer≒Alzao4×3、Wild Risk7×6
ロードフェリーチェ
Northern Dancer+ナスキロ(Riverman)という点では、母母リンダストはShareef Dancerと似ているところがある。
ワークフォースのように、硬さは伝えないので、母からNorthern Dancer+ナスキロ血脈でShareef Dancerを増幅すれば、そこそこ走る馬は出せる種牡馬で、テルメディカラカラやワーキングプライドやトーセバジルやウインクルサルーテやロードフェリーチェやロカはこのタイプでしょう。牝馬の方が走っているのは切れ味を増幅させた配合だからと考えられます。
ただそれでは、ディープやキンカメっ仔相手だと切れ味で負けてしまうため、GIクラスになる馬はこういう配合系ではないはず。
となると考えられるのはデインヒル増幅で、デインヒルを増幅して生まれるような馬の代表例はナカヤマフェスタであるように、ちょっと日本の主流とはズレていますから、社台系以外からハービンジャーのGI馬は生まれるのではないかとも思うんですよね。
ただ、パワー型のダイワメジャーやハービンジャーのようなパワーがある馬は母からナスキロ血脈を取り込むことによって走る産駒を輩出している。しかし同じパワー型のナカヤマフェスタはけっこうデインヒルを増幅する配合で結果を残している。
それらしい産駒はまた探して追記でもすることにします。
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【参考】
『日本サラブレッド配合史―日本百名馬と世界の名血の探究』(笠雄二郎著)
望田潤さんのブログ http://blog.goo.ne.jp/nas-quillo
栗山求さんの連載「血統SQUARE」http://www.miesque.com/motomu/works.html
『覚えておきたい 日本の牝系100』(平出貴昭著)