宝塚記念ということで、今週はこの記事へのアクセスが多いようで。宝塚記念については、ウマニティさんの方で6000字wくらいの拙文を入稿したのでもう多くは語りません(^^;)
【宝塚記念】血統考察 byうまカレ|競馬コラム|競馬予想のウマニティ - サンスポ&ニッポン放送公認SNS
僕が血統を勉強し出した時に、「なるほどなぁ」と思ったことのひとつに、「柔らかさと硬さのバランス」、「柔らかすぎてもダメ」といったことがあります。
分かりやすくいえば、
「白鵬の柔らかさは本当に独特で言葉で表現しづらい。単に柔らかいだけではなく、その中に芯がある」(二子山親方=元大関雅山)これ白鵬をサンデーサイレンスに、二子山親方を岡田総帥に置き換えても違和感ゼロですが(^ ^;)どんな分野でもだいたい似たような褒め言葉で語られるものなのですな~
— 望田潤bot (@nas_quillo_bot) 2016年5月17日
こんな感じなことで、柔らかい血を取り込んだら、パワーのある血や、俊敏さのある血で引き締めを行わなければならないということです。
こちらのエントリーが特に分かりやすいです。
「Nasrullahの柔らかさ」と「Princequilloの長手の体型」でストライド走法で斬れる「ナスキロ」、俊敏さの源「Tom Fool的な血」(Pharamond→Menow、Bull Dog)、柔らかさを下支えする「La Troiennne」のパワー、これが現代競馬での重要血脈
これを綿密にクロスしてあるのが、サトノクラウン
まずは母父Rossiniの血統から。
Rissiniの父Miswakiの母Hopespringseternal
父Buckpasserは、Tom Fool×Busanda(War AmiralとLa Troiennne)
そして、母Rose Bowerはナスキロ
重要血脈を全て兼ね揃えた名血で、GalileoやSea the Stersやコンデュイットといった名馬が生まれるのもわかります。
Rossiniの母Touch of Greatness(Elusive Qualityの母でもある)も
父Hero's Honorは3代母がWar AmiralとLa TroiennneのSearching
母父Sir Ivorはナスキロ(父Sir Gaylord)+Tom Fool的な血(母Attica)という重要血脈
さらに母母Natashkaもナスキロ
Hopespringseternal同様に、重要血脈を全て含みます。
Rissiniは競走馬としても種牡馬としても一流の成績を残したとはいえないけれど、Hopespringseternal≒Touch of Greatness2×1といえるくらいに重要血脈同士を組み合わせているすごい配合馬
母母父のVettoriは
父Machiavellianの母父HaloはRoyal Cherger(≒Nasrullah)+Tom Fool的な血(Sir GallahadとPharamond)
母父Sir Ivorは先述、
母母EuryantheはNijinsky×Quill(マルゼンスキーの3/4同血)で、PrincequilloとTom Fool的な血(Nijinskyの母Flaming Pageの内包するMenowとBull Dog)を持っています
この馬もまた、La Troiennne以外のナスキロ+Tom Fool的な血を豊富に内包しています
Machiavellianの父はMr.Prospectorでもありますから、
母ジョコンダⅡは、Miswakiの血統構成(Mr.Prospector、ナスキロ、Tom Fool、War Amiral、La Troiennne)を強力に増幅したといえます。
Rossini≒Vettori1×2といっても良いくらいです。
父トライマイベストの母Sex AppealがBuckpasser産駒で自身がBsanda≒Mr.Busher2×3、Tom FoolとWar AmiralとLa Troiennneを持ち、
母父Mill ReelはNever Bend×PrincequilloですからナスキロとLa Troiennneを持ちます
ナスキロ、Tom Fool、La Troiennneという重要血脈を全てカバー
つまりサトノクラウン自身は、Northern Dancer、ナスキロ、Tom Fool、La Troiennne、War Amiralという点で、ラストタイクーン≒Touch of Greatness2×3、ラストタイクーン≒Rossini2×2といっても良いほど、重要血脈の組み合わせのクロスによる増幅に成功しているすごい配合です。
父Marjuは名牝Salsabilの一つ下の弟で、母Flame of TaraはHyperion4×6・4、その母Welsh FlameはDonatello5×3、その父Welsh PageantはCourt Martial≒Tudor Minstrel2×2で牝祖はAloeですから、ハイインローな配合でもあります。
これは、サトノクラウンが種牡馬となったときにディープインパクトでいう底力を注入するBurgcrele的な位置付けになるのではないでしょうか。
僕の友人は、ドゥラメンテについて「牝馬にみるくらい筋肉量は多くないが、運動神経で動いているところはブエナビスタに似ている」と言っていました。何だろうな、こう、最初の白鵬の例えですが「柔らかい中に芯のある」筋肉が素晴らしい、美しいなと思うんですよね。笠雄二郎さんは「キズのない配合」と褒めるくらい素晴らしい配合で、とんでもない爆発力、あの皐月賞はいつみてもすごいです。
アンビシャスも明らかに字面の血統から逸脱したものが発現していて、これはメジャーエンブレムやペルーサなど大物に共通していること。非常に奥深さがある配合。
この馬たちだけではないですが、やっぱりこの世代は血統的にみても素晴らしいものがあるなぁと思います。
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【参考】
『日本サラブレッド配合史―日本百名馬と世界の名血の探究』(笠雄二郎著)
望田潤さんのブログ http://blog.goo.ne.jp/nas-quillo
栗山求さんの連載「血統SQUARE」http://www.miesque.com/motomu/works.html
『覚えておきたい 日本の牝系100』(平出貴昭著)