第153回天皇賞(春) 回顧
東京ではハービンジャーが勝ちまくったとか。基本的には脚が遅いので、持続戦になりやすい1周の競馬向きの馬が多いですが、配合次第では「時計の掛かる外回り」ベストという馬もいる印象です。また別で書いてみたいです。
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【競馬予想】うまゼミ‼ ~第153回 天皇賞・春(GI)
第153回天皇賞(春)
◎⑩アルバート
〇⑥アドマイヤデウス
▲⑧シュヴァルグラン
△⑨トーホウジャッカル
★⑮サウンズオブアース
正攻法の予想でいくならば、この天皇賞や菊花賞と言ったレースは、展開を「決め打ち」しなければならない。昨年の天皇賞も、最内枠のゴールドシップが勝つのであれば、最後方まで下げて向こう正面から動く究極のスタミナ勝負に持ち込まなければならないということは推測できたが、それを実行できるとまでは思わなかった。やはり長距離GIは「上手く乗れた人馬」が制するのだ。
今開催の京都芝は初めてのエアレーション作業で例年のこの時期よりも時計の掛かる馬場状態を考えれば、フェノーメノが連覇した2年や、ジャガーメイル、の時のような圧倒的なイン前有利、高速馬場にはならないだろう。
これに加えて、今年の展開はというと、スタミナ満点のトゥインクル陣営が「ゴールドシップのような競馬を」、さらに騎乗する勝浦騎手が「この馬の良さを活かしたい」とコメントしているし、昨年下り坂からの早仕掛けが成功したカレンミロティックも同様の競馬をしたいところだろう。今年もスタミナ勝負と見る。
◎アルバートはラブリーデイでGI初制覇を果たしたペルースポートの牝系で、母系に眠るノーザンテースト×ガーサントは底力に優れる。中山内のステイヤーズSを圧勝したが、ウムブルフのような外回り向きの走りで(例えが分かりにくい(笑))、内回りのスローで脚を余した有馬記念、日経賞は良い負け方。メジャーエンブレムやリアファルなど先行馬のお手馬が多いルメール騎手だが、ウオッカを絶妙に先行させたJCなど差し馬を乗りこなすのが抜群に巧い騎手である。前走に続いて2戦目のコンタクトで勝利へのイメージは出来ているだろう。得意の外回りで末脚が爆発すると見た。
〇アドマイヤデウスは3代父ティンバーカントリーの母Fall Aspen、母父トニービン、自身の母母アドマイヤラピスがHyperionの濃い馬で、一定のペースで走ることができる持続力に関していえばこのメンバーでもトップクラス。今年は不振が続く岩田騎手だが、デルタブルースやアドマイヤジュピタなど京都の長丁場は巧いし、持ち味を活かすためにもここは岩田騎手らしい内枠からの先行ができれば勝機は見えてくるだろう。
印は回らなかったが、スタミナ色の濃い流れだからフェイムゲーム、人気薄ではファタモルガーナ、マイネルメダリストまで馬券圏内の可能性はあると思っている。
僕はまだ競馬を5,6年しか見ていませんが、近頃は「長距離は騎手」という言葉を身に染みて感じています。
昨年はゴールドシップの横山典弘騎手が、「向こう正面で押し上げ、一度ペースを落とし、直線へ向く」という、まるでインターバルトレーニングのようなスタミナ色の濃いレース質に変えました。最内枠からこの競馬をやってのけたこの騎乗は「伝説」となり何十年後も語り続けられることでしょう。2着フェイムゲームも「絶対に外に出さず馬群を割ってやるんだ」という北村宏騎手の執念の騎乗でしたし、3着カレンミロティックも京都の下り坂で自身の持久力を最大限に活かし切る、蛯名騎手の見事な騎乗。やっぱり「長距離は騎手」巧く乗れた人馬が好走するのです。
この1週間考えていたことは、カレンミロティックが昨年のような騎乗をしてくるだろう、となると昨年ほどではないものの、前に負担の掛かるレースになるのではないか、ということでした。
しかし、前日に友人たちと議論をすると、エアレーションで例年以上に時計の掛かる馬場、そしてトゥインクル陣営の「昨年のゴールドシップのような競馬を」、勝浦騎手の「この馬の良さを活かす騎乗を」というコメントが引っかかりました。
また、キタサンブラックは一定の能力はあるものの、体質や走法により距離を持たせている中長距離馬で、ステイヤーではないし、セントライト記念も有馬記念も大阪杯も流れに恵まれていたことは確かだし(そういう流れに持っていけるセンスが素晴らしいわけでもあるが)、菊花賞も北村宏騎手の超好騎乗による勝利だったから、他の騎手たちにも同じ轍を踏まないんだという意識が働いているのではないかと思っていました。
だからこそ、アドマイヤドン産駒で、母系にHyperionが濃いという共通点がある2頭でも、体質が柔らかめで広いコースでこそ末脚が活きるであろうアルバートを上にとって、アドマイヤデウスのジワジワ伸びにも期待をしました。
ところが蓋を開けてみると、向こう正面の中間まではトゥインクル≒ゴールドシップだったものの、レースを動かすと目ではいかず...。カレンもポケットに入ってしまっていて動けず。
こうなった時点で、キタサンが残ることと、シュヴァルグラン福永騎手が巧く裁いて来る姿が頭に浮かびました。内は渋滞、フェイムゲームは遅刻だ...と。
しかし問題はここからで、キタサンとのヨーイドンでカレンミロティックが反応して1度キタサンを交わしたんですよね。ここだけはビックリでした。
シュヴァルグランは福永騎手らしい捌きで、頑張りました。こういう質のレースに来年もなるのであればチャンスではないでしょうか。
ゴールドアクターはレースでも気負いが見られたし今日のところは仕方がないでしょう。距離ではないはずです。
キタサンブラックは貯め逃げをした武豊騎手はお見事でした。そして差し返す根性も一級品。3200<2200でしょうが、コース適性的には京都の方が合っているわけで、宝塚はそこをどう解釈するかになりそう。距離適性的には春天<宝塚なはずのフェノーメノが敗れるのが宝塚記念ということは覚えておきたいところ。
●絶好枠でも嫌いたい
キタサンブラックは、500キロを超える大型馬で、母父はサクラバクシンオーですが、体質は非常に柔らかく、「フワッと」先行するスピードがあります。これはサクラユタカオーやジャッジアンジェルーチの影響が大きいと考えられ、サクラユタカオーはPrincely Giftを通じるNasrullah3×4を持ち、その仔サクラバクシンオーも母系に入ればこの軟質な体質を伝えます。キタサンブラックは菊花賞を制していますが決してステイヤーではなく、体質の柔らかさや、大きなフットワークによる燃費の良さで距離を持たせ、器用さを武器にしたレース巧者の中距離馬というべきでしょう。好走する能力を持っていたこと、そしてスローペースになりやすい日本競馬において自分でレースを作れるレースセンスは評価すべきですが、セントライト記念と有馬記念、大阪杯は展開が絶好、そして菊花賞は北村宏司騎手の好騎乗でした。今回は持久力を活かすため、早めの仕掛けをしてくるであろうカレンミロティックやサトノノブレスという存在もいますし、絶好枠でも持久力勝負になる=「今回は巧くいかない」ことが予想されるので嫌いたいです。
●ハーツクライ産駒らしい成長曲線
阪神大賞典を圧勝してきたシュヴァルグランは、ジャスタウェイやマジックタイムのように、2・3歳時に「これは大物か⁉」というパフォーマンスをみせてから少々伸び悩み、古馬になって本格化というハーツクライ産駒らしい成長曲線を描いてきました。ヴィクトリアマイルを連覇した半姉ヴィルシーナの他にも、ダノンシャンティや種牡馬Devil’s Bagといったスピードが魅力の名門Ballade牝系。母のクロスを継続して自身はHalo≒Red God3×4・5・5、軟質なスピードを増幅させているので、体質は柔らかめで母父Machiavellianという字面以上に距離が持ちます。母系にメジロのスタミナ血脈が入るモーリス然り、母父サクラバクシンオーのキタサンブラック然り、母からスタミナ(≒持続力)を取り込んでいるからこそ一流マイラーが生まれ、母からスピード(によって前受けできる)を取り込んでいるからスタミナを活かすことができます。シュヴァルグランも、父のスタミナを母のスピードによって活かしているといえるでしょう。牝系の裏付けはありますし、ここはジャスタウェイのような新星誕生に期待しても良いのではないでしょうか。
カレンミロティックも昨年のような競馬が出来るかどうかでしょう。特にフェイムとカレンの2頭は、先述したように「昨年巧く乗れた」2頭ですから、今年は「巧く乗れない」方に賭けてみたいです。
カレンはもっと人気すると思てましたから、この人気なら「巧く乗れる」方に賭けてみても良かったかもしれません。
今日の好走はやはりエアレーション馬場と、A.P.Indy的にダラーンと走るための相当な京都適性によるものでしょうか。
いくら流れが向いたからといって3200を逃げ切るということはすごいこと。しかし、僕は馬券が大外れでも、昨年の天皇賞やジャパンカップのように、全ての馬が力を出し切るレースの方が、観終わった後気持ち良いと感じる人間ですから、後味の悪いレースでした。
望田先生の昨年の菊花賞回顧で、
「母父サクラバクシンオーが菊花賞を勝ってしまってエエんかい!」という向きには、ホワイトマズル×ジェニュイン全妹のアサクサキングスとか、バゴ×スプリンターのビッグウィークが菊を勝ったのとまあまあ同じようなもんで(金曜のエントリでも書きました)、父が重厚なスタミナ型であればあるほど母からスピードを注入する必要があるわけで、母のスピードで先行したり好位で立ち回れるからこそ父のスタミナが100%活きるのです
私がハービンジャー3騎の中でスティーグリッツをチョイスしたのも、母が最もスピード型だからというのが主な理由で、大きく出遅れてしまいましたが勝負どころで最後方から一気に押し上げてきたあの脚、ああいう脚を使えるのは母がマイラーだからこそでしょう
という一文があります。
フェイムゲームが道中自分でレースを動かせない違いも同じような事でしょう。だからこそ、「母父短距離馬でスタミナが発現されている後方にいた馬」(トゥインクル)に、自身も、他のステイヤーも(ステイヤーが多く出走しているレースなのだから)力を出し切れるようなレースにしてほしかったなと思うんです。
まぁでも、カレンミロティックが外目追走で早仕掛けしてい「れば」キタサンブラックも分からなかったわけで、予想する側としては長距離レースは他のレースよりも「運」の要素が強く、だからこそ考察するのも楽しいんでしょう。
勝った人馬は賞賛できるけれど、レースとしてはしっくりこないという昨年の有馬記念後のような気持ちです。
やっぱりスローペースでも、道中何も起こらなくても、必然的にスタミナが搾り取られるコース形態の欧州中距離GIは観終わった後「うぉ~」ってなるんですけどねぇ。その分騎手の技量が問われるというか、ファンの側にも考察する楽しさがあるのが日本競馬ということにしておきます。
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【参考】
『日本サラブレッド配合史―日本百名馬と世界の名血の探究』(笠雄二郎著)
望田潤さんのブログ http://blog.goo.ne.jp/nas-quillo
栗山求さんの連載「血統SQUARE」http://www.miesque.com/motomu/works.html
『覚えておきたい 日本の牝系100』(平出貴昭著)