種牡馬タートルボウルをめっちゃ考える
※追記(2017/1/13)
タートルボウル考察最新エントリーを書きました。
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僕たちよりもう一つ世代が上の方々は、ダビスタで血統にハマッたという方が多いように思います。僕はというと、中学2年の時に競馬に興味を持ち、なんか競馬は血統が大切っぽくて、理屈っぽい血統をベラベラ語れたら格好いいなと思って本屋を回った時に、田端到さんの『血統が当たるのはやはり常識です』を購入したのが始まりでした。
この本で、血統の「イメージ」を持つことができたんですよね。ディープインパクト産駒は直線の長いコースが良い、ステイゴールド産駒は中山や阪神内回りが強い、フジキセキ産駒は器用なタイプが多いから内枠が多い...といった具合に。
でも望田先生のブログに出会ってからは、ステイゴールド産駒はノーザンテーストの頑強さを補った産駒が内回りを捲ることができる、フジキセキ産駒もパワーを補強した配合であれば瞬間的な加速力がある(≒一瞬の脚)から内枠でスッと抜け出せる産駒が多い、など「なぜ?」の部分が解明できて、解明することの楽しさを知ったという感じでしょうか。
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タートルボウルについて考える前に前提条件として、
近代競馬に影響を与えている馬の中でも、非常に大きい影響を与えているLady Josephineの話を。
Nasrullahの軟質なスピードは、Nasrullahの母母Mumtaz Mahalの父The Tetrarchの柔らかさと、母Lady Josephineのスピードに起因するものと考えられます。
そして望田先生はナスキロを「Nasrullahの柔らかさ」+「Princequilloの長手の体型」=ストライド走法として大成しやすいというものと仰られています。
また、Nureyev≒Sadler's WellsやLyphardやDanzigなどの前に行って粘り込む力は、突き詰めるとFair Trialの母Lady Jurorの母Lady Josephineのスピードと父Son-in-Lawのスタミナに起因すると考えられます。
Fair Trial
世界の芝のトップホースの配合は全てこれらの脈絡によって説明することができるので、Lady Josephineの影響は極めて大きいといえます。(『配合史』には、Lady Josephineの配合についてや、Nasrullahの父Nearco、母Mumtaz Begumがどれほど素晴らしい配合か...といったことが詳細に書かれていてめっちゃ面白いです!)
Mumtaz Mahal関連の血について、
- 3代母ShahinaazがPherozshah≒Nasrullah3×3の3/4同血クロス(PharosとMumtaz Mahalが共通)
- 母母KamiyaがKalamoun(トニービンの祖父として有名)産駒で、Khairunissa≒Cherry2×2の3/4同血クロス(Prince Bio、Rivaz=Nasrullahが共通)(Nasrullahに限定すると、Nasrullah=Rivaz4・4×4でもあります)
- 父Dyhim Diamondの母母父は「ナスキロ」血脈の中でも極めて優秀なスピードを伝えるHabitat。(3代父Royal Chergerの3代母がMumtaz Mahal)
- 母父Top Villeの母父母NooraniもNearco、The Tetrarch、Sundridgeを持つのでNasrullahに近い血。
もっといえば、タートルボウルはRoyal Cherger≒Nasrullah=Rivaz≒Pherozshah6・6×6・7・6・6
Lady Juror関連の血について
- 母父Top Villeの父High Top(オペラハウスらの母父)が、Abernant≒Court Martial3×3(AbernantはLady Jurorを含まないが、Hyperion+Mumtaz Mahalで、Court MartialはGaingborough+Lady Juror)
- 父Dyhim Diamondの4代母Tout Sweet TwentyがAbernant≒Court Martial1×2!
- 母母父Kalamoun(トニービンの祖父として有名)の母母父PalestineはFair Trial(母Lady Juror)産駒
つまりタートルボウルはAbernant≒Court Martial6・7×6・6であり、Fair Trial8×8・7
この「ナスキロ」血脈(Habitat)と、Lady Juror血脈を同時に取り込める種牡馬は、や、キングカメハメハ(ナスキロ→Mill Reef、Lady Juror→Miesque)、アグネスタキオン(Nasrullah(Princequilloは無い)→ロイヤルスキー、Lady Juror→アグネスレディー)、ディープインパクト(ナスキロ→Sir Gaylord、Lyphard)などがいて、どんな繁殖牝馬とも合うので成功しやすいといえます。
実際の産駒をみていくと、GI馬2頭は
2012年仏2000ギニーを制したLucayanが、Habitat5×4
母がDanzig、Nureyevも持つのでLady Jurorを増幅している
2011年のクリテリヨムアンテルナショナスを制したFrench FifteenがHabitat5×5・4
母がNureyev、Petitionを持つのでLady Jurorを増幅している
エピファネイアもHabitatを増幅させた配合ですが、French Fifteenのこの軽い俊敏な動きは似ています。
これらを踏まえて具体例をみていくと
Habitatを攻めるのであれば、
メイカの2014は、母がダンスインザダーク×フラワーパークなのでHabitat5×5、ダンスインザダークの内包するNijinskyの母Flaming PageはBull Laa産駒で母父MenowなのでHabitatの母父Occupy(父Bull Dog)や、Red Godを遠目ながら増幅している形にもなります。また、フラワーパークからタートルボウルに不足しているHyperionを取り込めるのも良いです。
血統情報:5代血統表|_________|JBISサーチ(JBIS-Search)
クリッピングエリアの2014は母がシンボリクリスエス×エアウイングス(サデーサイレンス×Secretariat)で、シンボリクリスエスの父Kris.SはRoyal Cherger(≒Nasrullah)と、PrincequilloとOccupyを持っていますのでHabitatを増幅させていますし、SecretariatとHabitatの父Sir Gaylordは兄弟でニアリークロスの関係です。
血統情報:5代血統表|_________|JBISサーチ(JBIS-Search)
Lady Jurorを攻めるのであれば、
オメガブルーハワイの2014は母がエルコンドルパサー×オメガアイランド(母アイリッシュダンス!)ですから、エルコンとLyphardでLady Jurorを増幅、父に不足しているHyperionも取り込めていますし、母父フジキセキだとWild Risk6×5、Bold Ruler×Princequilloも取り込めるのでまずまず合いそうです。
血統情報:5代血統表|_________|JBISサーチ(JBIS-Search)
エレガントマナーの2014は母がシンボリクリスエス×ネオクラシック(母バレークイーン!)、母父シンボリクリススは先述の通り、バレークイーンはSadler's Wells×母父父PetingoなのでLady Jurorを思いっきり増幅しています。二兎を追った配合ですが、追う血としては最良ででしょう。
血統情報:5代血統表|_________|JBISサーチ(JBIS-Search)
Habitatを攻めるのがベースとなりそうなので、マイル前後を得意とする産駒が多そうですが、Lady Jurorが豊富でもあるので、母からHyperion+Lady Juror血脈(エルコンドルパサーやトニービン×Lyphardなど)を取り込み、無駄にHabitatを増幅させる「ナスキロ」血脈を取り込まなければ中距離の先行馬も出せる種牡馬だと思います。
ワークフォースやハービンジャーやコンデュイットと異なり、基本が「スピード」の種牡馬だと思うので、かなり期待値は高いです。
「全頭マル外」などの一貫性をもってやっている大学対抗POGは、全頭タートルボウル産駒、とかいうことやってみようかなww
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【参考】
『日本サラブレッド配合史―日本百名馬と世界の名血の探究』(笠雄二郎著)
望田潤さんのブログ http://blog.goo.ne.jp/nas-quillo
栗山求さんの連載「血統SQUARE」http://www.miesque.com/motomu/works.html
『覚えておきたい 日本の牝系100』(平出貴昭著)