4歳上500万下

血統好きが大学生のころ書いていたブログ(今でもたまに更新)

ダービー前夜に考える。

朝方過去のダービーをみていて、私が競馬を見始めてから初めて訪れた2010年のダービーで明暗を分けた2頭に想いを馳せました。勝ったエイシンフラッシュと2番人気だったペルーサは血統配合の奥深さにさらに惹き込んでくれた2頭です。以下の望田先生の論考は本質に辿り着いたような気がして衝撃的なものでした。

 

たとえばディープインパクトはサンデーにないFair Trial的な要素をウインドインハーヘアから取り込み、サンデー的な柔らかさとFair Trial的な俊敏さという、走法や体型的に本来相容れない要素を同時に受け継ぐことができた希有な例です

その証拠に他の全きょうだいは、母から「HyperionとFair Trial」的な粘りを受け継いだ代償として、サンデー的な柔らかさしなやかさには欠けるところがありました

「新種」を生み出すには、そういうギャンブルが必要です

サンデー×ミスプロ×War Admiral×La TroienneのA級配合形ではありますが、ちょっと米スピードに偏りすぎて、スタミナと底力を振り絞るようなレースではアルカセットにねじ伏せられてしまったゼンノロブロイ

リーディングサイアーの娘で亜古牝馬チャンピオンの全妹で、質の高い南米血脈を受けているのは間違いないが、高速芝向きのスピードという点では疑問符がつく血統でもあり、現実に自身もきょうだいもダート中距離で活躍したアルゼンチンスター

このように一つ良いものを伝えるのは間違いないけれど、万能のチャンピオンというには何かが足りない、そういう両親の長所を伸ばすと同時に短所を補うような配合ができれば(それは失敗すると長所を消し短所を表出することにもなりかねないのですが…)、そしてギャンブルに勝てば、「新種」を作ることができるのです

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エイシンフラッシュは超スローのダービーを瞬発力でスルスルッと抜け出してローズキングダムに競り勝ったのであって、ブエナビスタのような斬れ味でズバッと差して勝ったのとは少し違うと思うのですよ
私はよく「東京や外回りでもあまりにスローになると、むしろ小回り向きの機動力加速力がモノを言うことがある」と書きますが、あのダービーもその類のレースやったと思うんです

昨年の有馬2着や宝塚3着を見てのとおり、内回りを巧みに立ち回って好走しているケースのほうが多いのではないかと

ドイツ牝系にドイツ血脈とハイインロー血脈を代々重ねてきた配合ですが、父父Kingmamboは欧マイルG1を3勝、母母父Sure Bladeは欧マイルG1を2勝した馬で、この2頭のマイラーを通じるMr.Prospector≒Stay at Homeのニアリークロス3×6(Nasrullah,Polynesian,Sir Gallahad=Bull Dog,Blue Larkspur,Discovery)と、それに似た組成のRed Godが絡むことで、この重厚な血統表に潜む数少ないスピードの血を拾い上げることに成功しています

エイシンフラッシュの上がりの競馬に機敏に反応する脚、内回りを器用に立ち回る脚は、Mr.Prospector≒Stay at Home(+Red God)が表現する「Halo的なスピード」がONになっているからである

Halo的機動力と、ドイツ+ハイインロー的スタミナで走るのがエイシンフラッシュという馬で、だから(折り合うことを前提に)小回りの長丁場がベストパフォーマンスを出せる舞台ではないか

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どちらも、 “血統表にある要素” と、 “それがどのように現実に発現しているのか” というのを同時に考察してはじめてその馬の本質、競走の本質にたどり着けるということを教えてくれました。

 

だから、実馬の走りを見ずに早期の活躍馬を予測するPOGや、展開や騎乗という外的要因を予測し競走結果を断定すてしまう馬券は、本質を突く行為とは言い切れないから熱心になれない。

 

2010年のダービーはどういう運命か、ペルーサは出遅れ、そういうときに限って歴史的なスローになり、エイシンフラッシュのHalo的機動力≒瞬発力が活きました。もし、ペルーサがスタートを決めて、ハイペースで流れていたらどうなっていたのでしょう。

 

果たしてアドミラブルの、 “ペルーサ的敗戦” の懸念は杞憂に終わるでしょうか。 “最も運のある馬が勝つ” とは良くいえたものです。

 

derby6-1.hatenablog.com

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スワーヴリチャードワンアンドオンリー的に上手くいくというのは出来過ぎな気がするから、今年のメンバーならダイワキャグニーまで振り切っても良いのかもなぁ。

 

それと、東京3歳GIでみると、アエロリットとモズカッチャンはNasrullahHyperionに因る斬れ、ならばハービンジャー×Nureyevのペルシアンナイト?一応書いておきます(笑)

 

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【参考】

『日本サラブレッド配合史―日本百名馬と世界の名血の探究』(笠雄二郎著)

望田潤氏のブログ 血は水よりも濃し 望田潤の競馬blog

栗山求氏の連載『血統SQUARE』http://www.miesque.com/motomu/works.html

『覚えておきたい 日本の牝系100』(平出貴昭著)