4歳上500万下

血統好きが大学生のころ書いていたブログ(今でもたまに更新)

第57回宝塚記念 回顧 ~ 想像を超えた2頭と、「強さ」をみせた実力馬たち

新馬戦や他のレースについても色々と書きたいことはありますが、まずは冷めないうちに好メンバーだった宝塚記念を振り返っておきたいと思います。しかし無事であればこのメンバーにショウナンパンドラ+ミッキークイーンだったんですからね、本当に層の厚い日本競馬界です。

 

ふつう、強い馬って、一度誰がみても強いといえるパフォーマンスを見せているもので、だからこそ展開予想をして、「よし、この流れならこの馬が突き抜ける、3着内に来れる」などという考察に行き付くものです。ドゥラメンテなら差し切れる、マリアライトの捲りなら通用する、ショウナンパンドラならマイルでも届いてくれるetc...

けれど、キタサンブラックにはそう思わせるレースが今まで無かった。ただ天皇賞をみて、こちらの想像以上に心肺機能的にBurgcreleのスタミナが発現しているのではないかと思い始めたし、攻めに攻めた調教をしてもプラス体重で出てきた今日のパドックで、中距離なら無謀なペースでない限り残すかもしれない、と思った自分がいたことも確か。

しかし同時に、この馬は京都適性に類稀なものがあるのだろうし、走法的に馬場も不安でもありました。さぁ、どちらに転ぶのか、キタサンブラックは僕の想像を超えてくるか否か、とても楽しみでした。

結果は見ての通りで、さぁこれで秋、東京のGIでどんな走りを見せるのか楽しみでなりません。

 

(通常であれば優勝したマリアライトのことを先に書かなければと思うのですが、キタサンブラックについては、書き出しにこだわりがあったもので...)

マリアライトは、ウマニティさんのコラムに

(同じ母父エルコンドルパサーの)アンビシャスとは異なり母父エルコンドルパサー産駒らしい機動力と、この母らしいパワーが武器。昨年のマーメイドSや、潮来特別での捲りこそが本来の姿

と書いた通りの蛯名騎手の騎乗。

そして何よりすごいのは、マリアライトディーマジェスティといった、パワー&スタミナに優れた良駒まで輩出できる種牡馬ディープインパクト。ふつう、同程度の能力、同程度の道悪巧拙である「キングカメハメハ産駒A」と「ディープインパクト産駒B」がいたら、予想する際にAをとってしまうのですが、マリアライトディーマジェスティが出た以上こんなこともできません。

内回り、道悪が得意なことは勿論わかっていたけれど、僕の想像を超えてこの強力牡馬をねじ伏せるところまで走ったマリアライト。母クリソープレーズは優秀で、アロンダイトを出した母母キャサリーンパーももちろん優秀なのですが、ディープインパクトエルコンドルパサー、この2頭を最も称賛したい。

 

ドゥラメンテは、デムーロ騎手が巧く乗ったとはいえず脚を余してしまったけれど、完調手前であの末脚、やっぱり現役最強で、シャンティイで剛脚が炸裂する姿がイメージできた、この馬の強さを確認できただけで僕的には満足です。

僕は生産者でもなんでもありませんし、馬券もそれほど買いませんから、GIの個数とかじゃなくって、もっと中身の部分、たとえば、メジャーエンブレム桜花賞で苦手の形になりながらも一瞬「オッ」と思わせる脚を使ってくれた...これだけで満足してしまう(^^;

少し脱線しましたが、「強さ」は十分すぎるほどにみせてくれたので、もし数日で治る軽いけがなのであれば是非とも凱旋門賞に参戦してほしいと思っています。何とか1度「直線の長い右回り」での走りを見てみたいのです。(白紙が決まったようですね、仕方ありません。)

 

今日のような内回りの多頭数で、ある程度流れると、内回りでも外枠(3角~4角で外目にいる馬)が有利になることが多く、ラブリーデイステファノスサトノクラウンの上位入線がそのことを証明しています。

ラブリーデイはピッチ走法が活きる流れではない中、抜群のコーナリングで進出、一瞬キタサンブラックを交わすかと思うところまで走ったのはさすがの一言で、衰えはないし、勝負仕上げだとも感じました。秋の天皇賞連覇もみえてきました。

サトノクラウンについては、望田先生が週中書かれていたように、ステイヤー×マイラー配合の馬が、GIを取る(≒ベストパフォーマンスを発揮する)ときは、やはり先行したときなのかな、とも思った走りでした。先生は今日の予想でも、外回りベターと書かれていましたし、今年こそは秋の天皇賞に万全な状態で出走してもらいたいものです。それが実現したら、ようやく自信の◎が打てそうです。

 

直前記事にも書きましたが、ラストインパクトは良い意味(スタミナが発現)でも悪い意味(少しパワーに寄っていてストライドが伸びない)でもティンバーカントリーが出ているので、本来は宝塚、有馬タイプとみています(でも体質は外回り向きなのかな?)。過去2年の有馬記念はスローで位置取りの良し悪しが如実に結果に結びつくレースでしたので参考外、今年も出てきたら要注目です。

サトノノブレスもこの血統らしく一皮むけて、これなら有馬記念でも楽しめそう。

シュヴァルグランアンビシャスは内枠がアダになったという感じで、ラブリーデイのような競馬が出来ていたらどうなっていたかなと考えてしまいますね。シュヴァルに関しては、2400m以上ばかりを使われていて、久しぶりの厳しい流れというのもあったかもしれません。

ヤマカツエースは、逆に2戦連続で外枠がアダに。

トーホウジャッカルは道悪の内回りでは自身のストライドを全く活かせませんから仕方なし。今日のような状態でJCに出てもらいたいところ。

 

マリアライト

●得意の馬場と捲りで
マリアライトリアファルの3/4姉で、アンビシャスとは異なり母父エルコンドルパサー産駒らしい機動力と、この母らしいパワーが武器。昨年のマーメイドSや、潮来特別での捲りこそが本来の姿で、馬場が渋れば外回りでも牝馬のトップということはエリザベス女王杯で証明しています。良馬場の目黒記念での2着は地力の成せる業。舞台替わりと週中の雨は大歓迎で、善戦する可能性は高いとみますが、やはりこの4歳牡馬たちをまとめて差し切れるかというと疑問符が付く。

 

ドゥラメンテ

●右回りの爆発力、トニービン再現性
ドゥラメンテは、左手前が得意、左回り<右回りである可能性が高いです。通常、左回りでは道中左手前、直線を右手前で走るはずです。右回りではその逆。過去の東京でのレースでは、残り1Fくらいまで右手前で走り、そこから左手前に手前を替えてさらに脚を伸ばしました。
一方、右回りの皐月賞では、道中右手前で走るので、得意の左手前を温存することができます。だからこそ皐月賞では温存していた左手前で走る直線であの爆発力ある末脚を使うことができたのでしょう。
中でも日本ダービーでは、サトノラーゼンに接触した2分4秒地点、残り375mあたりで左手前に替えたように見えます。そこから一気に突き放しましたし、デムーロ騎手も談話で「手前を替えてからの脚が凄かった」と話しています。
また、この馬はHornbeam(トニービンの母父)と牝祖パロクサイドの、NasrullahHyperionによるニアリークロスを持っているので、東京の大一番で強かった種牡馬トニービン再現性が高い配合で、非常に持続力があります。となると、ベストは左手前で持続力を活かせる「直線の長い右回り」である可能性が高く、「直線の長い右回り」のGIは存在しませんので、気が早いですが凱旋門賞の舞台(今年はシャンティイ)はベストパフォーマンスを出せる条件だと思っています。
アンビシャスリアルスティールといったライバルたちと、同じ休み明けでも骨折明けながら爆発力の違いを見せつけた中山記念、右前脚を落鉄しながら左手前一本で走り切り(恐らく)、欧州最強馬Postponedの2着となったドバイシーマクラシックはまさに地力の成せる業。道悪についても、トニービンが入る馬は後駆で走ることが多いので、さほど気にする必要はないでしょう。広いコース向きの走りだけれども、右回りならば、国内で負ける可能性は少ないとみます。

 

キタサンブラック

阪神<京都、急坂<平坦
キタサンブラックは、500キロを超える大型馬で、母父はサクラバクシンオーですが、体質は非常に柔らかく、「フワッと」先行するスピードがあります。これは母系に入るサクラユタカオージャッジアンジェルーチの影響が大きいと考えられ、サクラユタカオーPrincely Giftを通じるNasrullah3×4を持ち、ユタカオーの仔で本馬の母父であるサクラバクシンオーも母系に入ればこの軟質な体質を伝えます。菊花賞天皇賞(春)を制していますが生粋のステイヤーではなく、体質の柔らかさや、大きなフットワークによる燃費の良さで距離を持たせ、器用さを武器にしたレース巧者の中距離馬というべきでしょう。
好走する能力を持っていたこと、こちらが思っていた以上にブラックタイドのBurgcreleのスタミナが発現していること、スローペースになりやすい日本競馬において自分でレースを作れるレースセンスは評価すべきですが、セントライト記念有馬記念大阪杯は展開が絶好、そして菊花賞北村宏司騎手の好騎乗、天皇賞(春)武豊騎手の絶妙なペース配分があったとはいえ、後続のプレッシャーが想像以上に少なったのも事実。
Princely Giftの血を引く馬に多く見られる、前脚の伸びが綺麗で、トニービンを引く馬とは反対でどちらかというと前駆で走るから、京都の下り坂適性は抜群です。でもそれは阪神替わりや、タフな馬場はマイナスだし、今年の3歳牡馬クラシックを見ても分かる通り、2000mと2400m、距離が長いほどスタミナが問われるかといえばそうではありません。人気必至ならば、やはりもう1度嫌ってみたいところです。

 

【宝塚記念】血統考察 byうまカレ|競馬コラム|競馬予想のウマニティ - サンスポ&ニッポン放送公認SNS

 

この強力牡馬たちをもねじ伏せるマリアライトでさえ東京では負けるわけで、「強さにも色々ある」ということ、キタサンブラックの素晴らしい走りに「母のスピードを取り込んでこそ父のスタミナが活きる」という望田先生の言葉を噛みしめています。

半年間、わくわくさせてくれてありがとう。

 

derby6-1.hatenablog.com

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【参考】

『日本サラブレッド配合史―日本百名馬と世界の名血の探究』(笠雄二郎著)

望田潤さんのブログ http://blog.goo.ne.jp/nas-quillo

栗山求さんの連載「血統SQUARE」http://www.miesque.com/motomu/works.html

『覚えておきたい 日本の牝系100』(平出貴昭著)