4歳上500万下

血統好きが大学生のころ書いていたブログ(今でもたまに更新)

毎日王冠考察 ~ 「長めマイラー」か「(やや)ピッチ中距離馬」か

澤田健一さんは競馬の歴史など良い意味でミーハー的な知識が豊富で、競馬を心から楽しんでらっしゃる。加藤裕樹さんは、私が長い時間をかけて理解したことをサラッと理解していて実に「感覚的」な人間だ。理屈的な私とは大違いで、女にモテる所以でもあるだろう。ちゃんぴんさんは多くは語らないが競馬に詳しく、時々語られる言葉には「おぉ」と思わされ新発見を与えてくれることもある。皆サラブレッドに魅せられた人たちで良い出会いだと思う。

 

毎日王冠は素晴らしいメンバー。モーリス、そして何といってもサトノクラウンが出走を回避したことは残念で残念で残念でならないが好メンバーが揃った、と締めようと思ったけれどサトノクラウンの回避がやっぱり残念過ぎて「最高の」メンバーとは言わない(笑)

 

議論したことと自分の見解をまとめます。

根本的に、「柔らかい≒怠慢」な馬ほど持続力があり、距離が持つ。筋肉質で「パン」としている馬ほど加速力があり、距離は持たない。全てがそうではないが、この当たり前の前提で話を進めていきたい。

 

 

ディープインパクト×Storm CatというのはSir Gayload≒Secretariat6×4となったり、Storm BirdNijinskyとニアリーの関係)から柔らかく胴長の体型と受け継ぐものだと考えている。ラキシスキズナストライドの大きさを見て。パワーなどは残りの血統表の1番下の1/4の部分に影響されるのだろうけれども、基本的にはストライドを伸ばして走る外回り向きの差し馬になることが多いように思う。エイシンヒカリはディープ×Storm Catで母母父がCaro。少しストライドが伸びない部分もあるが当然体質は柔らかく、だからこそユタカさんが「逃げ馬ではない、差す競馬も試してみたい」とコメントするのも頷ける。しかし調教を見ても行きたがっており、ここも逃げの手に出るだろう。体質が柔らかい馬だから加速力はそれほどでもなく、エプソムカップのように8F47.5程度から徐々にペースアップする形だろう。

 

しかし決してハイペースではないだろうから、THE中距離馬が勝つとも思えないし、スローペースでもないからTHEマイラーが勝つとも思えない。両者の中間点にいる馬が有利になるのではないかという考えに至った。

 

ここから各馬を見ていく。

 

アンビシャスは体型体質は柔らかく外回り向きの差し馬、だからこそ福島のラジオNIKKEI賞では「長い脚を使う」という特性を活かすためブレーキを掛けずに4角を回って来れたのが良かった。体質体型はWild Risk7×6的なものなのか、Nasrullah的なものなのかは良く分からないが、この持続力は母系の、特に母母カルニオラのHyperionの影響だろう。極めて中長距離質な馬で、かつエイシンヒカリのハイペースとは言えない流れを折り合い不安で後方から。どちらかというと秋天本番で、いや母のスタミナを考えると気性の課題はあるにせよジャパンカップでこその馬なのかもしれない。

 

イスラボニータは母系がCozzene(Caro×Prince John×Sir Gayload)×Crafty Prospector(父Mr.Prospector)で見て分かる通り怠慢。だからこそ距離が持ったともいえるが、この距離であればある程度流れてほしいところ。この体質でもっと「ギュッ」と縮まることができたならばスーパーホースになれたのかもしれないけれど。今回は陣営も弱気だしペースも1800ならもっと流れた方が良いだろう。

 

ヴァンセンヌはSir Gayload6×5的なものなのか緩さもあって、下り坂が合いそう=惰性を付ける形が合いそうなマイラーだから1800寄りのマイラーといえる。今回の微妙な流れも合いそうだ。母系がHyperionの塊で成長力も好材料

 

エイシンヒカリは先述の通りだが、逃げ馬として大成するような血統ではないと思うのでここまでメンバーが揃うとどうなのか。1頭行かせて2番手という競馬も見てみたいが。

 

クラレントはエリモピクシーはスピードを伝える繁殖牝馬だが、母母エリモシユーテングはHyperionの塊でもあり、母父ダンシングブレーヴの父Lyphardがリファールでもあり、そこにタキオンアグネスレディーが脈絡したレッドアリオンなどは結構粘っこい脚質に出ることがある。そこにクラレントは父がダンスインザダークでSir Gayloadのクロスもないし、ご覧のように切れ味はやはり並みで、直線が長すぎて持続力が求められる新潟外回りや、例年よりもペースは遅くやや中距離質だった今年の安田記念で3着に好走しているように、1800寄りのマイラーではないか。

 

グランデッツァも母系がMarjuにHabitatと誰が見ても分かる通り怠慢。だからこそ下り坂で惰性が付けられてハイペースだった昨年のマイルCSで3着に好走。振り返ればスプリングSも大外からストライドを伸ばしての差し切り、日本レコードの都大路も外目を追走して下り坂で惰性を付けて圧勝、七夕賞も4角で惰性を付けれたからの勝利。ここでも平均的な流れで自分の形に持ち込まればとうところだが、この相手だと京都1800でやりたいところだろう。

 

ステファノスは母母ゴールドティアラはダートで勝ちまくったし、母父クロフネも当然のようにパワーを伝える。その通り道悪をこなすパワーもあるのだが、Sir Gayload≒Secretariat6×6が作用しているのか柔らかさもあり、どちらかというと外回り向きの斬れ方をしているように思う。ドスローで中距離質だった富士Sを勝っているのも1800のレースにおいては好感が持てるし。かといって2000の本格化でもないので平均的な流れの1800は合うはずで、あとは力関係だが結構なめられるタイプだと思うので今回もまたちゃっかり3着を拾うのではないか。

 

 

スピルバーグはLyphard4×4、またこの馬の5代母がLyphardの母GoofedだからGoofed5×5・5でもある。更に母母父がSadller's WellsからもLyphardの血統構成、Nothen Dancer、Fair Trialを受け継いでいるので重厚な切れを見せる。ただ全兄トーセンラーよりも体質は硬くストライドが伸びずにピッチで走るので血統以上の加速力もある。そのためスローでも「よく3着来たな」的な事が起こるのではないか。当然血統的には中長距離馬であるので1800であれば少しでも流れてほしいところ。前半8F47.1の昨年はギリギリの3着。成長力のある血統で昨年以上の地力強化もある。それなりの流れなら追い込んで来るだろう。

 

ダノンシャークは母カーラパワーがCaerleon×Shirley HeightsMill Reefにゼダーンで晩成マイラーといったところか。最初は緩いが筋肉量はそこそこあり、徐々に徐々にパンとしてくる。もう7歳で十分にパンとしたし、マイルらしい流れの12年安田記念で3着、昨年のマイルチャンピオンシップはハイペースだったが内に潜り込みそれほどの脚は使っていないのでTHEマイラーという捉え方で良いのではないか。つまり平均的な流れが予想される今回は厳しいか。

 

ディサイファヴィルシーナやフレールジャック=マーティンボロやダノンシャンティグラスワンダーレッドレイヴンや種牡馬RahySingspielやDevil's BagのSoaring牝系で母父が1世代しか産駒を残せなかった中Dobawiを輩出した最強馬Dubawi Millenniumという良血馬。Dubawi Millenniumというのは父Seeking the Gold(母父Buckpasser)のパワーと、母母Fall Aspen(ティンバーカントリーの母)のHyperion3×4、Son-in-Low5×5の粘りで走った馬のように思う。ディサイファは3代母父His Majestyの母Flower BowlがAlibahi(父Hyperion)×母父父Son-in-Lowという組み合わせ、5代母父(Soaringの父)Swapsも父父Hyperion、母父父Son-in-Lowという組み合わせで、母母父DanzigHyperionを1本持つしSon-in-Lowを母父に持つFair Trialも持つ。Sir Gayload6×7の緩さも少し感じさせているかもだが、基本的には同馬もDubawi Millenniumと同じようにパワーと粘りで走っている馬だろう。力の要る馬場を前受けして粘り込む形が合っていると思われ、これは1800-2000の中距離馬。札幌記念で前に行ってあれだけ強いレースをしたのだから本来の形が見えたのではないか。エイシンヒカリの刻む流れも合いそうだ。

 

トーセンスターダムは恐らくフォーティナイナー(母父Tom RolfeRibot×Roman)と5代母父Buckpasserのパワーで少し肩が立っていて少しピッチ寄りの走りをする。ただ体質はSir Gayload≒Secretariat6×5もあり、母のMr.Prospector4×5もあり柔らかい。ただどちらかというとピッチの走りをするから、トレヴのように使える脚が一瞬しかない(陣営も言っている)。だからこそユタカさんは、スローペースが濃厚だった14年のダービーではユタカさんは先行させ、エイシンヒカリがいてハイペースが濃厚だった外回りのチャレンジカップでは後方からの競馬をさせたのではないか。パワーがあってのピッチ寄りの走りだから少々タフな馬場はこなせるしだからこそチャレンジカップやオーストラリアでも好走できたのだろう。今回は平均ペースが濃厚な1800の良馬場、スローペースが望ましいが、マイラーではないので1800の平均的な流れで内枠で脚を貯めて一瞬の脚を活かせればやれないことは無いと思うのだ。しかし内田騎手がそういう騎乗をするかどうか。ショウナンパンドラのようにノーザンテーストの成長力もなめてはいけないが。

 

リアルインパクトはディープに対してアウトブリードで、父中距離馬×母短距離馬の組み合わせでピッチで走り、ピッチなので内回り向きで(阪神内の阪神カップ連覇、中山記念3着)、毎日王冠で3着になった時は前半8F48.7というドスローだった。同じようにここで好走するならスローペースが望ましく、今回はそれは見込めそうにない。

 

まとめると、

アンビシャス・・・ストライド中長距離

イスラボニータ・・・ストライド中距離

ヴァンセンヌ・・・長めマイラー

エイシンヒカリ・・・ややピッチ中距離

クラレント・・・長めマイラー

グランデッツァ・・・ストライド中距離

ステファノス・・・長めマイラーストライド中距離

スピルバーグ・・・ややピッチ中長距離

ダノンシャーク・・・マイラー

ディサイファ・・・ややピッチ中距離

トーセンスターダム・・・ピッチ中距離

リアルインパクト・・・マイラー

 

今回の毎日王冠にマッチしそうなのは「長めマイラー」か「ややピッチ中距離馬」なはずで、後は能力比較やデキなどで判断するしかないですかね。それと枠ですか。クラレントは外枠、トーセンスターダムは内枠が良いような気がしますが。

 

ただここをストライドを伸ばすし、かつHyperionを土台とした重厚斬れのアンビシャスが追い込みを決めたり、逃げ馬ではないエイシンヒカリが逃げ切ったりするとミニ「なのに」の勝ち方で、かなり盛り上がるんですけどね。