《回顧》第84回東京優駿 ~ あの好騎乗を実現させた要因
回顧されるときに、通常よりも人に割かれる時間が多くなる、競走として面白いレースでした。
— 金沢 ユウダイ (@derby6_1) 2017年5月28日
レイデオロはSeattle Slew~シンボリクリスエスの影響で胴長ですがBuckpasserのクロスなのでピッチ走法で走るので大箱の瞬発力勝負は歓迎でしょう。ダービーで好走するイメージは湧きます。ただ“前受け”という工夫は必要で、それができる馬なのかどうか。藤沢クラシックになってほしい気持ちも強いんですが。
③ピッチ走法レイデオロの瞬発力も活きる(が、前受けできないとトゥザワールド的脚の余し方の懸念アリ)
・レイデオロに関しては、このように、大箱で緩い流れになっての瞬発力勝負は歓迎だが、これまでのような後方からの競馬では脚を余す懸念がある、だから前受けなどの工夫を...ということを書いてきました。結果、“前受け”ではありませんでしたが、それと同じような騎乗で栄冠を掴みました。
最も称賛されるべきは人馬ですが、そういう器用な競馬ができるのも、外目の枠を引いたという運も兼ね揃え、そしてラドラーダのAlanesian≒Tom Fool≒Attica6×5・6をキングカメハメハで継続させた配合で、望田先生のいう“無駄のない脚捌き”が発現していたからでもあります。
20年後くらいには、ディープインパクトやキタサンブラックとレイデオロが血統表の中で共存することになるんですよね。私は競馬に興味を持った中学生のころ、“ディープインパクトのお母さんはウインドインハーヘアだ”と得意げに家族や友人に語っていましたが、まだまだウインドインハーヘアについては語り続けることになりそうです。
・例えば、イメージとして、スペシャルウィークの瞬発力がサンデーサイレンス由来、ディープインパクト産駒は2つに大別して、ジェンティルドンナの瞬発力がディープの柔軟性と母のパワーが中和したもの、サトノダイヤモンドやマカヒキやヴィブロスやシンハライトがHalo的なものとすると、レイデオロの瞬発力はTom Fool≒Alanesian≒AtticaですからHalo的なものに近いといえるのではないでしょうか。瞬発力の源にも色々あります。
このときに思い出すのが、望田先生の以下の論考。
Tom Foolが伝える無駄のない走法というのはHaloやSir IvorやRed Godとも相通ずるものがあって、Tom Foolの父でありRed Godの母父であるMenowと、Menowと3/4同血でSir Ivorの母母であるAtheniaと、Haloの母父であるCosmic Bombは、下記のようにPharamondとRoi HerodeとCommandoが共通するので、ここに「柔らかで無駄のないフォーム」を伝える因子があると考えられます
┌Pharamond
Menow
│ ┌Commando
│ ┌○
│┌○
└△┌Roi Herode
└△
┌Pharamond
Athenia
└△ ┌Commando
│ ┌○
│┌○
└△┌Roi Herode
└△
┌Pharamond
Cosmic Bomb
│ ┌Commando
│ ┌○
│ ┌○
│ ┌○
│┌○
└△ ┌Roi Herode
└△┌○
└△
スワーヴリチャードはハーツだけにもう1つスタミナが要求されるレースが良かったですが100点、アドミラブルもいっぱいいっぱい、そして勝ちに行ってレースを作ったマイスタイル人馬はさすがの一言です。
競馬の神様が藤沢和雄師に微笑んだような、良いクラシックですね。
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【参考】
『日本サラブレッド配合史―日本百名馬と世界の名血の探究』(笠雄二郎著)
望田潤氏のブログ 血は水よりも濃し 望田潤の競馬blog
栗山求氏の連載『血統SQUARE』http://www.miesque.com/motomu/works.html
『覚えておきたい 日本の牝系100』(平出貴昭著)
ダービー前夜に考える。
朝方過去のダービーをみていて、私が競馬を見始めてから初めて訪れた2010年のダービーで明暗を分けた2頭に想いを馳せました。勝ったエイシンフラッシュと2番人気だったペルーサは血統配合の奥深さにさらに惹き込んでくれた2頭です。以下の望田先生の論考は本質に辿り着いたような気がして衝撃的なものでした。
たとえばディープインパクトはサンデーにないFair Trial的な要素をウインドインハーヘアから取り込み、サンデー的な柔らかさとFair Trial的な俊敏さという、走法や体型的に本来相容れない要素を同時に受け継ぐことができた希有な例です
その証拠に他の全きょうだいは、母から「HyperionとFair Trial」的な粘りを受け継いだ代償として、サンデー的な柔らかさしなやかさには欠けるところがありました
「新種」を生み出すには、そういうギャンブルが必要です
サンデー×ミスプロ×War Admiral×La TroienneのA級配合形ではありますが、ちょっと米スピードに偏りすぎて、スタミナと底力を振り絞るようなレースではアルカセットにねじ伏せられてしまったゼンノロブロイ
亜リーディングサイアーの娘で亜古牝馬チャンピオンの全妹で、質の高い南米血脈を受けているのは間違いないが、高速芝向きのスピードという点では疑問符がつく血統でもあり、現実に自身もきょうだいもダート中距離で活躍したアルゼンチンスター
このように一つ良いものを伝えるのは間違いないけれど、万能のチャンピオンというには何かが足りない、そういう両親の長所を伸ばすと同時に短所を補うような配合ができれば(それは失敗すると長所を消し短所を表出することにもなりかねないのですが…)、そしてギャンブルに勝てば、「新種」を作ることができるのです
エイシンフラッシュは超スローのダービーを瞬発力でスルスルッと抜け出してローズキングダムに競り勝ったのであって、ブエナビスタのような斬れ味でズバッと差して勝ったのとは少し違うと思うのですよ
私はよく「東京や外回りでもあまりにスローになると、むしろ小回り向きの機動力加速力がモノを言うことがある」と書きますが、あのダービーもその類のレースやったと思うんです昨年の有馬2着や宝塚3着を見てのとおり、内回りを巧みに立ち回って好走しているケースのほうが多いのではないかと
ドイツ牝系にドイツ血脈とハイインロー血脈を代々重ねてきた配合ですが、父父Kingmamboは欧マイルG1を3勝、母母父Sure Bladeは欧マイルG1を2勝した馬で、この2頭のマイラーを通じるMr.Prospector≒Stay at Homeのニアリークロス3×6(Nasrullah,Polynesian,Sir Gallahad=Bull Dog,Blue Larkspur,Discovery)と、それに似た組成のRed Godが絡むことで、この重厚な血統表に潜む数少ないスピードの血を拾い上げることに成功しています
エイシンフラッシュの上がりの競馬に機敏に反応する脚、内回りを器用に立ち回る脚は、Mr.Prospector≒Stay at Home(+Red God)が表現する「Halo的なスピード」がONになっているからである
Halo的機動力と、ドイツ+ハイインロー的スタミナで走るのがエイシンフラッシュという馬で、だから(折り合うことを前提に)小回りの長丁場がベストパフォーマンスを出せる舞台ではないか
どちらも、 “血統表にある要素” と、 “それがどのように現実に発現しているのか” というのを同時に考察してはじめてその馬の本質、競走の本質にたどり着けるということを教えてくれました。
だから、実馬の走りを見ずに早期の活躍馬を予測するPOGや、展開や騎乗という外的要因を予測し競走結果を断定すてしまう馬券は、本質を突く行為とは言い切れないから熱心になれない。
2010年のダービーはどういう運命か、ペルーサは出遅れ、そういうときに限って歴史的なスローになり、エイシンフラッシュのHalo的機動力≒瞬発力が活きました。もし、ペルーサがスタートを決めて、ハイペースで流れていたらどうなっていたのでしょう。
果たしてアドミラブルの、 “ペルーサ的敗戦” の懸念は杞憂に終わるでしょうか。 “最も運のある馬が勝つ” とは良くいえたものです。
スワーヴリチャードがワンアンドオンリー的に上手くいくというのは出来過ぎな気がするから、今年のメンバーならダイワキャグニーまで振り切っても良いのかもなぁ。
それと、東京3歳GIでみると、アエロリットとモズカッチャンはNasrullahとHyperionに因る斬れ、ならばハービンジャー×Nureyevのペルシアンナイト?一応書いておきます(笑)
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【参考】
『日本サラブレッド配合史―日本百名馬と世界の名血の探究』(笠雄二郎著)
望田潤氏のブログ 血は水よりも濃し 望田潤の競馬blog
栗山求氏の連載『血統SQUARE』http://www.miesque.com/motomu/works.html
『覚えておきたい 日本の牝系100』(平出貴昭著)
ダービー前々夜思索 ~ ダイワキャグニーはレイデオロにも劣らない好配合ではある
●うーん、ダンビュライトは内枠がプラスに出るイメージがあまりないですよね。隊列はクリンチャー、その後ろにマイスタイルとトラストという形で簡単に決まりそうな気がしますが、こういうすんなり想像がつく展開予想というのは外れることが多い(^^;)
●それでも、その予想通りに昨年のような緩い流れになれば、有力どころでは①スワーヴリチャードの“詰まり“事案が発生する可能性が高まる(内枠が巧い騎手ではあるが)、②アルアインやペルシアンナイトの2000寄りの瞬発力が活きる(後者は折り合いが難題となるが、それについて鞍上は巧い)、③ピッチ走法レイデオロの瞬発力も活きる(が、前受けできないとトゥザワールド的脚の余し方の懸念アリ)、④アドミラブルには厳しい、ということは考えられる...
●サトノアーサーの右手前得意説とは反対に、ダンビュライトは中京の新馬でもサウジアラビアRCでも直線半ばで左手前に戻してからの伸びが素晴らしく、ドゥラメンテと同じ右手前<左手前ならば左回り<右回りではありますが、過去の左回りのレースでは早めに左手前に戻している...ということはドゥラメンテ的再加速で好走するかも?(ルーラーシップ×Rivermanなら東京がマイナスとなることはないだろうし)
●クリンチャーはディープスカイ×ブライアンズタイムのGraustark5×4、Danzig4×3で、母系の奥にも複数のHyperionとFair Trialがあり、ディープスカイのナスキロ的な斬れというよりもアグネスレディー的な、ダイワスカーレット的な粘着力を増幅した配合で、こういうタイプがダービーに出ること自体が感慨深い。
それでも懸念している事案が最も起こりにくそうなのはスワーヴリチャード→サトノアーサーとみてますけどね。
●それと今になって無性に気になるのがダイワキャグニーで、この馬はセレクトで1億超え、POGでも話題になっていましたがデビューは11月まで遅れました。
配合的には、成功例多数のキングカメハメハ×サンデーサイレンスで、残りの1/4部分である母母トリプルワウがナスキロ(Royal ChergerとPrincequilloなのだが)のクロス。また、トリプルワウはTom Fool≒Attica4×3であり、ここがキングカメハメハのTom Fool→Tom Foolとも脈絡。(レイデオロも、母ラドラーダはAlanesian≒Tom Fool≒Attica6×5・6(Boldnesian≒Sir Ivor6×5ともいえる)です)
だからトリプルワウ緊張→サンデーサイレンス緩和→キングカメハメハ緊張という配合系になっていて、自身はナスキロと父のMill Reefが呼応して体質は柔らかく、Buckpasserもクロスしている...という「ある程度は間違いなく走ってくる」という好配合で当然POGでも注目しましたが、逆にいえば爆発力がないのではないかという懸念もありました。しかしダービーまでに3勝すれば懸念は杞憂に終わったといって良いでしょう。
東京3戦は、相手云々もありますがどれも完勝でしたし、アエロリットでNHKマイルを制した菊沢厩舎、ソウルスターリングでオークスを制した社台ファーム生産馬、個人的に北村宏司騎手の泥臭い騎乗は好みですし、どうしても気になるので書いておきました。鹿毛の実力馬な気がしてならない...
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土曜は大して注目馬いません~
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【参考】
『日本サラブレッド配合史―日本百名馬と世界の名血の探究』(笠雄二郎著)
望田潤氏のブログ 血は水よりも濃し 望田潤の競馬blog
栗山求氏の連載『血統SQUARE』http://www.miesque.com/motomu/works.html
『覚えておきたい 日本の牝系100』(平出貴昭著)
《論点》第78回東京優駿 ~ スワーヴリチャードとワンアンドオンリーの類似点 / カデナとマカヒキの相違点 / サトノアーサー唯一の懸念とその払拭可能性etc...
大前研一氏風タイトル(笑)
この混戦模様をみていると、どうしても2012年の安田記念を思い出します(1番人気サダムパテック)...
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ダービーの論点が書いてあるのは以下のエントリーかな。
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最有力とみているのがスワーヴリチャードで、手前の関係で明らかに右回り<左回りであることに加え、ハーツクライのダービー馬ワンアンドオンリーとの共通点が非常に多い。胴長体型で明らかに大箱向きであること、3歳のこの時期に先行できるほどパワーが発現していること(ワンアンドオンリーはアイリッシュダンスのスタミナを活かすために天才を鞍上にダービーで初めて先行して栄冠をもぎ取ったが、既に共同通信杯でそれが出来ることを証明している)、皐月賞で無理をせず脚を余して敗れたこと、そしてワンアンドオンリー世代が、「 “晩成ハーツクライの牡馬が春2冠で好勝負可能” ということは “その世代の牡馬レベルが低い” ということ」でもあるのではないか、と訴えかけており、思えばあの年もハープスターがいて、今年も“牝馬のレベルが高い”ということは良く言われていたといました...
ここまで簡単に推理できてしまって良いのかと不安になります。スローの団子一団競馬だと内で“詰まる”という事象が発生しやすいですが、鞍上はオークスのレッドディザイアなど、良くも悪くも枠なりの騎乗が巧い鞍上でもあります。
ただ、これは牝馬よりも牡馬にいえるのですが、晩成なハーツクライ産駒がクラシックを制するということは、逆にいえば世代レベルがそんなに高くないということではないかとも思うんですね。これはきっとワンアンドオンリー世代が訴えてきているんでしょうけど、さすがに昨年(マカヒキ / サトノダイヤモンド / エアスピネル /リオンディーズ /ディーマジェスティ)や一昨年(ドゥラメンテ / キタサンブラック / サトノクラウン / リアルスティール / アンビシャス)に比べると、今年は牡<牝な感がありますし。
スワーヴリチャードは、右回りだと手前の替え方が下手だし、胴長だし、やはりダービーでこそだろうと思っていましたが、パドックを見ても誰がみてもわかる胴長体型。
“皐月賞で脚を余して負けたハーツクライ産駒”といえば、ワンアンドオンリーが思い出されますが、ダービーで初めて先行したワンアンドオンリーとは違いこの馬の場合は共同通信杯でも皐月賞でもスタート後先行しています。皐月を終えた段階で最もダービー馬に近い位置にいるのはこの馬になったでしょう(こんなに簡単にいく気はしないけど)。
カデナはディープインパクト×フレンチデピュティでAureole持ちというところまでマカヒキと同じ。Haloクロスがあったマカヒキはダービーでそれまでの追込一辺倒の競馬から脱却し中団からレースを進めることができましたが、果たしてカデナはそれができるかどうか。不器用さが“6月の良馬場の東京”、ダービーというレースではマイナスに出る可能性が高いのではないかと思います。個人的に福永騎手にダービージョッキーになってもらいたいという気持ちは強いのですが。
1番人気もありえるアドミラブルは、バレークイーンにトニービン→シンボリクリスエス×ディープインパクトを配された馬で、ディーマジェスティと同じディープ×Roberto+Sadler's Wellsで、Burghclere≒Petingo3×6も持つというのがなかなか。カデナやアルアインとはタイプの違う中長距離型パワーディープで、良の東京の2400m、ダービーというレースがベストかといわれれば違うでしょう。ですからペルーサ的敗戦(彼もスタートを決めていればどうなっていたか分からないのだが)が頭をよぎります。しかし青葉賞の内容がちょっとこれまでにないもので、世代レベルが高くないのであればこういうタイプが勝ち切るという結末もなくはないのかなと。それでも懐疑的ですが。
アルアインは、私には“母のスプリント的パワーをディープが問答無用で伝えてくる柔軟性で中和してBurghclere≒Flower Bowlもあるよ”くらいしか分からない配合で、皐月の時計勝負からのパフォーマンスアップはないだろう、そして抜けた存在でもないのであれば2冠はないだろう...と考えていますがよく分からないです。
もしかしたらアドミラブルとともに“非皐月賞組”の1・2番人気を形成する可能性すらあるサトノアーサーは、ディープの好配合ですがSir Gaylordだけが気になっていました。しかしほかの部分が完璧なので2勝はするだろうなといった見立てでした。新馬戦では、“すごい馬だな”と思ったのと同時に、4角での加速の悪さがどうしても気になり、その一瞬の反応の良し悪しがSir Gaylordの影響であり、それが瞬発力勝負になり易いダービー敗戦の僅かな差に繋がるのではないかという懸念があります。
しかし、デビューから4戦全てで右回りを使われ、直線半ば以降で右手前に戻してからのエンジン再点火に目がいきます。左回りでは直線に入って最初から右手前ですから、もし仮に右手前が大得意なのであれば、先述の一瞬の反応の良し悪しを抹殺するほどの爆発力がある可能性も考えられます。いずれにせよディープ産駒の中では好走する可能性がかなり高い1頭と思います。
ペルシアンナイトはモズカッチャンと同じハービンジャー×NureyevというNasrullahとHyperion(=ナスペリオン)斬れで、1800くらいがベストのクチでしょうから2400ならばスロー歓迎(折り合いは難しくなるが)。かなり能力を買っているので、勝ち切りもあるんじゃないかと思う反面、ローテ等の雰囲気的には掲示板どまりだよなぁという思いもあります。
レイデオロはSeattle Slew~シンボリクリスエスの影響で胴長ですがBuckpasserのクロスなのでピッチ走法で走るので大箱の瞬発力勝負は歓迎でしょう。ダービーで好走するイメージは湧きます。ただ“前受け”という工夫は必要で、それができる馬なのかどうか。藤沢クラシックになってほしい気持ちも強いんですが。
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ちなみにカデナとレイデオロは誰でも分かるような好配合でPOGでも指名しており、福永騎手と藤沢先生というダービーを獲ってほしいホースマンが手掛ける馬で“勝ってほしい”欲が強いです。
あんまり印を打つのは好きじゃありませんがダービーだからということで打つならば◎スワーヴリチャード○サトノアーサー▲レイデオロ、こんなところですか。
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【参考】
『日本サラブレッド配合史―日本百名馬と世界の名血の探究』(笠雄二郎著)
望田潤氏のブログ 血は水よりも濃し 望田潤の競馬blog
栗山求氏の連載『血統SQUARE』http://www.miesque.com/motomu/works.html
『覚えておきたい 日本の牝系100』(平出貴昭著)
《回顧》第78回優駿牝馬 ~ 日本的なレースを制したのは
オークスは特段緊張することも興奮することもなくスマホ観戦、結果も何ら驚くこともありませんでした。
オークスは桜花賞に出ていたマイラーも出走することから激流となり差しが決まりやすいレースですが、昨年と今年は流れ自体は緩め(ヴゼットジョリーも厳しかったでしょう...)。
そうなれば視界さえ開ければソウルスターリングであり、モズカッチャンはフローラSの再現でしたが、こちらが思っていたよりも少し力があったよう。
アドマイヤミヤビやリスグラシューのハーツ勢はもっとスタミナが要求される流れが良かったですが、前者はジャスタウェイやワンアンドオンリーのように「“中距離で先行できる” = “アイリッシュダンスのスタミナを活かし切れる”」域まで完成していなかったということだし、後者はハーツながらアイリッシュダンスのスタミナというよりもMill Reefの斬れが武器になっている以上善戦ウーマンではないかという見立てのまま。
アドマイヤミヤビは(いや、ミヤビに限らず多くの上級ハーツ産駒に共通することなのだが)、ハーツクライのコピーのようなイメージで、ハーツクライがサンデーサイレンス産駒ながら父の斬れではなく、好配合の母アイリッシュダンスのスタミナを活かす競馬でGIを勝ち切ったように、やや前受け or 激流でこそ持ち味が活きるでしょう。そして今回はそれができる鞍上、そういう流れになり易いレースではあります。当然、阪神マイル<東京2400
そして晩成の父ながら、この時期に一線級でやれるというのは、レディスキッパーのクロフネ×デインヒルのパワーが、“ダート向き”だとか“スピード不足”という方向ではなく、“芝向きの筋肉の補完”、“体質強化”という良い方向に発現したということで。また、クロフネ×デインヒルでも、ライクザウインド(Alzao(Sir Ivor))でなければ、ズブいステイヤーかダート馬で終わっていたと思うんですよね。やはり最も日本向きなHaloと血統構成が似た血(Sir Ivor)を1つでも合わせることは重要だと感じます。
ソウルスターリングは中距離馬ではありますが、マイル向きのスピードも発現しているといった感じで、東京2400は問題ないでしょう。良馬場でこの好枠からレッドディザイア的な抜け出しが出来れば馬券圏内は外さない気がします。
リスグラシューは望田先生の“女ローズキングダム”という表現が秀逸で、アイリッシュダンスのスタミナを活かすというよりはMill Reefらしい斬れが武器ですよね。ハーツクライの特長が特長になっていないタイプなので善戦ウーマンというのも納得がいきます。だからこそこの鞍上によるもうひと押しがほしいんですよね。
紫部分は少し見誤っていたかな(-_-;)
逆にアドマイヤミヤビも前受けできているわけではありませんが、ハーツ産駒が“3歳早春のマイル重賞を勝ち切った”という事実が、本格化というか、既にGIで勝負できるということと等しいでしょう。
ディアドラは岩田騎手も期待通りの好騎乗で、まさにペプチドサプル2017になりました。こういう馬がアネモネを走っているんですから馬の個性を見抜くのは難しいです。
現実的に最も伏兵として可能性がありそうなのはディアドラではないでしょうか。ハーツにNureyevを合わせたNasrullahとHyperion配合で、1400やマイルで勝ち切れず位置取りも後方からになっていた...ということはつまるところ中距離馬なのでしょう。(昨年の矢車賞勝ち馬でオークス4着のペプチドサプルと被ります。彼女も窮屈そうにアネモネSを走っていたなぁ...)。もちろんローテは気になりますがこの鞍上で好枠を活かすことができれば楽しみです。
フローレスマジックはそういう流れを自ら作って、この走りは好走の部類に入ると思います。パワーが付き切るのを待ちましょう。
フローレスマジックは、ただでさえ晩成の配合(とはいえ完成の早さは牡<牝なのでアラジンよりは完成が早いと思う)で、さすがに2400よりは1800-2000がベターなタイプなので、オークスにしては緩い流れだった昨年(シンハライト)や2004年(シーザリオ)のような流れになってどうか。
アドマイヤミヤビやホウオウパフュームがビッシュ的に乗れないのはまだ本格化ではないということでしょう。先述したようにディアドラは完璧でした。
展望記事を総合すると、アドマイヤミヤビ×ミルコ騎手(先行?) /ディアドラ×岩田康成騎手(ヌーヴォレコルト的に内をしつこく) / ヤマカツグレース×横山典弘騎手(どこかで内に入れてスタミナ温存) / ホウオウパフューム×松岡正海騎手(ビッシュ的に) の走り、騎乗に注目ですね。
こちらも先述しましたが「タフな流れにならずハーツ勢の真骨頂がみられなかったなぁ」というのは事実なのですが、これも何度も書いていますが、“好位置を取り、残り600m400mをいかに早く走るか”という日本競馬の特徴は、日本の“血統が淘汰される基準”なのであり、そのことにより血統レベルは向上していくのです。だから単に「スローだスローだ」というところで思考が止まっていてはいけない。
(しかしその日本らしいレースを制したのはFrankel×スタセリタでした...)
緩い流れになればソウルスターリングだと思うんですがね~
逆にタフな流れでのアドマイヤミヤビやホウオウパフュームの真骨頂もみたいですよ。
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【参考】
『日本サラブレッド配合史―日本百名馬と世界の名血の探究』(笠雄二郎著)
望田潤氏のブログ 血は水よりも濃し 望田潤の競馬blog
栗山求氏の連載『血統SQUARE』http://www.miesque.com/motomu/works.html
『覚えておきたい 日本の牝系100』(平出貴昭著)